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実は古くて新しいクルトガ
買ってよかったもの紹介というにはネタが古いので今日はクルトガの特許について調べてみたいと思います。
社会人になってからは学生時代の時のように頻繫に使うことが少なくなりましたがいつも同じ幅の綺麗な線が描けるクルトガ。
発売開始が2008年とのことなので、お使いの方も多いかと思います。
自己紹介にも書いてありますが、私は電気系のエンジニアで、弁理士でもないですし、なんなら法律は苦手な分野ですw
ただ、エンジニアとして特許出願は多い方なので、他社の特許を調べる機会は少なくないです。
開発の過程
特許庁の広報誌によると、三菱鉛筆が開発を始めたのは2005年で、発売が2008年だそうです。
三菱鉛筆が自社開発したのであれば、開発開始から数年の間に三菱鉛筆から特許出願されてそうです。
https://www.jpo.go.jp/news/koho/kohoshi/vol44/03_page1.html
探した結果、該当しそうな一番古く基本特許となりそうな特許は特許第4240417号っぽいです。
特許庁の広報誌には意匠や商標の登録番号があるのですが、特許番号がないので多分この発明考案が使われているであろうという私の予想なので「ぽい」という訳です。
優先権主張がされていて、基礎となる出願が2006年6月5日(特願2006-156252)。
本願が2007年6月1日(特願2008-520535)です。優先権主張期間は1年ですので、ギリギリまで新しい案を盛り込んで、満を持して出願をした感じです。
特許第4240417号が登録されたのが2009年1月9日ですから、開発開始後の製造準備と並行した同じ時期の3年弱のうちに特許登録がされたことになります。
すごいスピードですね。この時系列からも、会社の期待感が伝わってきます。
特許技術の内容
今回調べるまでずっと勘違いしていたのですが、シャーペンをノックして芯を出す際に芯が回転するわけではなく文字を書く時の筆圧がかかると、回転するようにできていたのですね。
確かに、書き出しの際にわずかに芯が押し込まれると言われれば、そのような感覚がありますし、指先で芯を押すと中の構造物が回転するのも見えます。
特許第4240417号の請求項1には
「筆記芯の筆記圧による前記チャックユニットの後退動作に伴い、回転子を回転駆動させる回転駆動機構が具備され(一部抜粋)」
とあるので、製品の動作とも一致した権利範囲が記載されています。
【請求項1】
軸筒内に配設されたチャックユニットの前後動により筆記芯の解除と把持を行い、前記筆記芯を前方に繰り出すことができるように構成されたシャープペンシルであって、
前記チャックユニットが、筆記芯を把持した状態で軸芯を中心にして回転可能となるように前記軸筒内に保持されると共に、前記筆記芯の筆記圧による前記チャックユニットの後退動作に伴い、回転子を回転駆動させる回転駆動機構が具備され、前記回転子の回転運動を前記チャックユニットを介して前記筆記芯に伝達するように構成したことを特徴とするシャープペンシル。
アイディアの源泉
びっくりしたのはこの発想自体は昭和の時代からあったようです。
特許審査の過程で特許庁が引用した実用新案があり、その実用新案の出願は昭和58年1月。しかも、クルトガを開発した三菱鉛筆ではなく、NECから出願されていました。
NECが昭和58年に出願した実用新案登録に記載されている、請求の範囲には
「筆圧が加わる毎に芯を予め定めた角度だけ回転させる手段を備えることを特徴とする自動芯回転機構付シャープペンシルである」とあり、
まさにクルトガの技術思想そのものです。
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開発のその後
三菱鉛筆はその後も開発の手を緩めることなく、クルトガに関係しそうな発明は2013年頃まで続いたようで怒涛の勢いで特許を取得しています。
発明者の方も同じ3名の方の共願が多く、同じ方がこの製品というか、この技術に愛着を持ってたように思います。
関連の取得特許を全てをチェックした訳ではないのですが、筆圧を使って芯を回転させずに芯を回すと新しいクルトガが生まれるかも?
例えば、ひと単語書き終わるくらいの時間を経てからの最初の一画目で芯を回転とかってどうでしょう。
電気の技術者である私には、どんな機構を使えば実現できるのかは分かりませんがwww
漢字などの筆圧が一画ごとに頻繁にかかったり、かからなかったりする日本語と筆記体で一気に一単語が書けるアルファベット語圏では全然使い勝手も違いますからね。
現在の製品に不可欠な要素が最初の特許第4240417号だけだとすると、2024年には最初の出願から17年経過しますので、あと数年でコピー品が合法的に出回る可能性はありますね。
ただ、滅茶苦茶複雑そうな構造してますし、完コピしてもコストが合わないかもしれません。
最後に
アイディア自体は昭和の時代からあったようですので、平成の終り頃になってクルトガを商品化することに成功し、令和の今でも広く愛用される製品を世に出した三菱鉛筆の技術者の方々を尊敬してしまいます。
まさに、古くて新しい!!
技術者としては、そんな開発をしたいものです。
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