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個人発明が進化して、一般的に普及する製品になったのか?
買ってよかったもの紹介&特許調査。今回は洗眼薬です。
春ですね。花粉症の方は、眼を取り出して洗いたい!という気持ちになる方もいるそうで、洗眼という習慣も定着しつつあるのかもしれません。
私は花粉症という訳ではないですが、花粉なのかPM2.5なのか黄砂なのか分かりませんが、春先はコンタクトのごろごろ感が強くなり、洗眼薬を使うことがあります。
市販の洗眼薬
さて、そんな洗眼薬。ユニークなネーミングで知られる小林製薬のアイボンという製品のCMで一気に有名になった記憶があります。
小林製薬のHPによれば、アイボンは1995年10月に関東限定で販売されたのが最初だそうです。
小林製薬のCMの影響なのか、正直他のメーカから発売されているとは思ってみませんでした。
たまたま、ロート製薬の洗眼薬を購入したら、眼の洗い方が違って軽い驚きがありました。パッケージを見れば一目瞭然。上を向くか、下を向くかが大きく違います。
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点眼薬(目薬)で有名なロート製薬も同様にロートフラッシュという製品名で洗眼液を販売しており、こちらもロート製薬のHPによれば、1997年の発売だそうです。
ロート製薬といえば、点眼薬のリーディングカンパニーですから、洗眼薬を販売してない訳ないですよね。
両社のHPからすると、小林製薬の方が2年ほど発売が早いようです。
洗眼薬のパイオニアは小林製薬なのでしょうか?
洗眼器の特許を調査
眼を洗う薬品の特許を調べても私の理解できる範囲ではないので、眼を洗うためのお猪口ようなカップ(洗眼器)が各社で異なるので、カップの特許を調べてみました。
ロート製薬の特許は簡単に見つかりました。
メーカのHPに公開されており、眼を洗うためのカップは特許6095987号も意匠1476867号も明記されていました。
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特許6095987号は2013/1/11の出願でした。ちょっと古いですね。
ここで、ちょっと不思議だったのが、ロート製薬の洗眼薬が発売されたのが1997年なので、発売当時はこの特許を使ったカップではなかったということになります。
小林製薬も調べてみたのですが、小林製薬もロート製薬も発売時期の1995~1997年にカップを特許出願した形跡はなく、どちらかというと最近の方がよく出願している感じです。
カップの最新の出願は、小林製薬は特開2023-083058号(2021/12/3出願)、ロート製薬は前出の特開2014-133025号(2013/1/11出願)のようです。
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需要の高まりを受けて改良したんだと思いますが、発売開始時に出願してないのはちょっと不思議でした。
そこで、古い実用新案を調べると。個人が洗眼用器具などの名称で多数出願していました。
1970(昭和45)〜1985(昭和60)の期間に限定し、請求の範囲を「洗眼」、IPC分類を「A61」で検索したところ、71件ヒット。そのうち、46件が個人の出願でした。
現在のカップに着想が近く日本で一番古そうな個人の出願は実全昭48-041097号でした。企業の出願で一番古そうな出願は実全昭47-010399で、タッチの差で企業が先でした。
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個人の出願(実全昭48-041097号)の方の説明に金属製の洗眼器の記述があることから、相当前から洗眼器というものはあるみたいですね。もしかすると、現在でも眼科には金属製のものが置いてあるのかもしれません。
本考案は眼疾病治療の一環である物理療法として行う洗眼の際に使用する洗眼器に関するもので従来かかる洗眼器として高価なりロームメッキを施した金属材製の洗眼器が使用されているが、握持筒部の底面が平板状に形成されているので治療の際潅水器から注がれる薬液が洗眼器の底面に当り反発した飛沫が患者の顔面或いは衣服に附着する為不快であり、又伝染力が非常に強い細菌又はビールスによる眼疾病例えば流行性向結膜炎等の治療を行うので特に器具の殺菌処理を厳重にすることを必要とするが、加熱殺菌乃至消毒殺菌するのに手間と時間を要した。
時代が違うとはいえ、現在の製品と同様の着想であって、個人の出願の多い発明品も珍しいのではないでしょうか?
2008年8月に日本眼科医会が「プール後の水道水による簡単な洗眼は行ってよいが、積極的に推奨するものではない。」と発表したそうで、子供のころ使った両眼を洗うシャワー蛇口がなくなっています。
これらの出願があった昭和の時代は水道水で眼を洗うことが普通だった訳で、プール後を問わず眼を容易に洗うための手法を考えた個人の方が多かったということなのでしょうか。
形状がシンプルなだけに、現在のものとそれほど大きな変化はない感じもしますが、洗うための方法、具体的には眼を洗う液体の対流方法などの工夫が見てとれます。
最後に
個人の発明が、メーカの開発を後押ししたのでしょうか?
まず個人の発明が多く出願されていて、その後を追うようにメーカが製品を出したことになります。
本当のパイオニアは小林製薬でもなく、ロート製薬でもなく、個人発明家だったのかもしれません。
私は300件以上の特許出願がありますが、個人で出願したことはありません。個人で欲しいと思えるものを出願してみようかと思いました(笑)。
最後までお読みいただきありがとうございます!
私は特許出願は多いもののエンジニアであり、サーチャーでも弁理士でもありません。特許調査に間違いなどがあれば、ご指摘をいただければ幸いです。
また、趣味と実益を兼ねようと、家電修理を始めようとしています。今はまだ修行ということで、無償で対応します。修理して欲しいもの大募集中です。第1回の修理の状況はこちらに。
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