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レトロスペクティブにPOが出なくていいっていつ誰が言ったんだ?(怒)

この記事は、TDCソフト株式会社 Advent Calendar 2023 3日目の記事です。

私は怒っている

とあるセミナーに参加していたときに、レトロスペクティブに関して講師の方がこう言及していました。

プロダクトオーナーはレトロスペクティブに任意参加です

耳を疑ってしまいました。もちろん指摘してもよかったのですが、アジャイル固有のセミナーではなく、しかもその内容自体が試験に出る可能性があり、他の受講者に混乱を与えるのは良くないと思ったので、言いたい気持ちを抑えこみました….。
とはいえ、アジャイルを扱うのであれば正しい情報を提供してほしいですし、これまでアジャイルも学んだこと無い人たちにその理解が浸透してしまうと思うと、後からなんだか腹が立ってきました。
でも私自身も経験がありますが、プロダクトオーナーがレトロスペクティブに参加してくれないことはそんな珍しいことでは無いことかと思います。

一旦スクラムガイドを確認してみる

もしかして自分が見逃しているだけで、プロダクトオーナーは本当に任意参加なのだろうか…。と思い、スクラムガイドを確認してみることにしました。
まず、2020年版です。

スプリントレトロスペクティブの目的は、品質と効果を高める方法を計画することである。
スクラムチームは、個人、相互作用、プロセス、ツール、完成の定義に関して、今回のスプリントがどのように進んだかを検査する。多くの場合、検査する要素は作業領域によって異なる。スクラムチームを迷わせた仮説があれば特定し、その真因を探求する。スクラムチームは、スプリント中に何がうまくいったか、どのような問題が発生したか、そしてそれらの問題がどのように解決されたか(または解決されなかったか)について話し合う。
スクラムチームは、自分たちの効果を改善するために最も役立つ変更を特定する。最も影響の大きな改善は、できるだけ早く対処する。次のスプリントのスプリントバックログに追加することもできる。
スプリントレトロスペクティブをもってスプリントは終了する。スプリントが1か月の場合、スプリントレトロスペクティブは最大3時間である。スプリントの期間が短ければ、スプリントレトロスペクティブの時間も短くすることが多い。

スクラムガイド2020

プロダクトオーナーに対する記述がそもそもありません。
前回版はどうだったのか念のため確認してみます。

スプリントレトロスペクティブは、スクラムチームの検査と次のスプリントの改善計画を作成する機会である。
(中略)
スクラムマスターは、このイベントが確実に開催されるようにする。また、参加者に目的を理解してもらうようにする。
スクラムマスターは、このミーティングがポジティブで生産的になるようにする。スクラムマスターは、全員にタイムボックスを守るように伝える。スクラムマスターは、スクラムのプロセスを説明するために、チームメンバーとして参加する。
(中略)
スプリントレトロスペクティブが終わるまでに、スクラムチームは次のスプリントで実施する改善策を特定しなければいけない。これらの改善策の実施は、スクラムチーム自体の検査に対する適応になる。改善はいつでも実施可能だが、スプリントレトロスペクティブは検査と適応に集中するための公式な機会である。

スクラムガイド2017

こちらにもプロダクトオーナーが任意参加の記述はありません。当然ですが、中略の部分にも記載はありません。

プロダクトオーナーのいないレトロスペクティブってなんでダメなの?

なぜプロダクトオーナーもレトロスペクティブに出るべきなのかいくつかあげてみます。

ビジネス価値についてのふりかえりがされない(されにくい)

プロダクトオーナー抜きだとふりかえりの内容が開発寄りにどうしてもなってしまいます。もちろん開発者とスクラムマスターのみであってもビジネス価値についてふりかえりをすることができますが、プロダクトの価値を最大化することに責任を持つプロダクトオーナー不在で話を進めても、カイゼンのアクションを決めづらかったり、結局別でプロダクトオーナーと話をすることになり、時間のムダが発生してしまいます。
チーム全員でプロダクトとその先の価値についてのふりかえりをしなければ、開発だけが上手くいっても価値を提供できないチームとなってしまいます。

プロダクトオーナーへのリクエストを伝えづらい

レトロスペクティブで何かしらプロダクトオーナーにお願いをしたい内容がカイゼンのアイデアとしてあがったときに、別の機会にプロダクトオーナーに伝えなければならないのはこれもまた時間のムダです。
その内容を伝えるだけでなく、そもそもなぜそのアイデアがあがったのかといった経緯まで説明する時間が発生します。その分開発の時間が奪われます。
でもプロダクトオーナーがレトロスペクティブの場にいてくれれば、開発の時間が余計に奪われることはありません。

チームとして構造が変わってしまいかねない

プロダクトオーナーがレトロスペクティブに任意参加となってしまうと、毎スプリントふりかえりをする開発者&スクラムマスターとふりかえりに参加しないプロダクトオーナーの間に壁が生まれます。
スクラムチームがプロダクトオーナーと開発チーム(開発者&スクラムマスター)という構成が自然と生まれてしまい、そうなってしまうとプロダクトオーナーの要望を開発チームがただこなすだけという関係にもなってしまいかねません。
そのような関係のチームがアジャイル・スクラムで成果を出し続けられるでしょうか?大切なのはビジネス側と開発側が一緒になって価値提供に向けて考え行動することであるため、フラットなチームを作るという意味でもプロダクトオーナーはレトロスペクティブに参加が必要です。

プロダクトオーナーがどうしても忙しいなら…

とはいえ、現実問題としてプロダクトオーナーは大いにして忙しいことが多く、そうした場合スプリントプランニングやスプリントレビューと比較して参加の優先度を下げられているように感じます。(デイリースクラムも同様に参加しないことがほとんどな気がします。)
そういう状況を知った上でスクラムなんだからイベントには参加してくれとお願いするのは心苦しい気持ちにもなります。もちろんプロダクトオーナー自身に出ないといけないんだと思ってもらえるようにするアプローチは必要です。
そういう状況でもチームとしてふりかえりの機会を作るために、数スプリントに1回のペースで構わないので、プロダクトオーナーが参加できる時間にレトロスペクティブとは別にふりかえりの機会を設けるようにします。スプリントごとのふりかえりは叶わなくとも、チーム全体でのふりかえりの機会を作ることができます。
スクラムではふりかえりの機会をレトロスペクティブで用意されていますが、何もレトロスペクティブ以外でふりかえりをしていけない訳ではありません。
忙しいプロダクトオーナーがいるチームにはぜひ取り入れてほしいです。


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