代代代ワンマン(2022年7月30日、品川クラブex)

 特別なワンマンでは驚きがほしい。毎週のように通って、何十回、何百回とライブを観てきたグループのワンマンならなおさら。

 7月最後の土曜日、品川クラブex.で行われた代代代のワンマンは最初から最後まで驚きに充ちていた。

 会場内に入るとまず、フロア真ん中の円形ステージが目につく。それほど高くない。ステージを囲むように椅子が置いてある。少し迷って、花道の真横、舞台正面のほぼ真後ろの席に座って開演を待つ。

 ほぼ定刻通りに照明が落とされ、「そういえばFOREVER」のイントロが始まる。観客も一斉に席から立ち上がる。ステージ上方のディスプレイにVJが映し出される。

「この映像もワンマン用に作ったのか。誰が作ったんだろ…」と思いながら、宇宙船や万華鏡の様な図柄が次々と繰り広げられる画面を見上げながら、踊っていた……のだが、5分、10分と過ぎても音楽は続き、メンバーは出てこない!まさかの「そういえば永遠にFOREVER」だ。30分近くあるロングヴァージョン。よくヲタクが冗談でライブで観たいと言っている曲だ。まさか、本当にやるとは。これからは冗談でも「『永遠にFOREVER』、ライブで見たいわ〜www」などと口にするまい。

 20分を過ぎた頃、とうとう梨央がランウェイに登場。いったん立ち止まってステージへ。一人ずつ入ってきて、ついに代代代が勢ぞろいして、歌い始める。振り付けが通常の「そういえばFOREVER」とは全く違っていて驚いた。この日のために新しく作られたのだろう。1人のダンスをメンバー3人が客になりきってはやし立てるような振り付けもあって楽しい。

 そして、次の「THRO美美NG」から本編最後まで、アルバム『MAYBE PERFECT』(甲)の再現が始まる。どの曲も円形ステージに対応して、歌い手の向きが正面・斜め右後ろ・斜め左後ろ・真後ろと複雑に入れ替わる。すでに見慣れている曲も細かく作り変えられている。本番前夜のツイキャスでメンバーがレッスンで「めちゃくちゃ頭使った!」と言っていたが、見ている方の脳も混乱させられていく。

 それにしても、このステージ、くまなく照明が当たって、客席からでも全体を見渡すことができる。そこにメンバー4人だけがいる。機材も水分補給のペットボトルも何も置かれていない。メンバーにとっては、正に360°逃げ場がない。どこにいても、どこを向いても観客の視線がある。「まぬけ」のような一見動きの少なそうな曲でもステージを縦横無尽に使っているのが分かる。「LASE」の4人が横になった姿勢から立ち上がる独特の動き。「一秒」は、4人が連なるトレインが円周に沿って動いて楽しい。

 ステージだけでなく、音響も照明もレーザーもいつものライブハウスと様子が異なり、それらの異化作用が重なって、見慣れた曲にも初披露の「黒の砂漠」にも夢幻的な効果が加えられる。「破壊されてしまったオブジェ」の梨央の歌う落ちサビ「赤く染まって」では、空気そのものが真っ赤に染まったかのようだった。どこから出てくるのか分からないレーザーは、時に中央のステージから四方に発射されるように見え、ステージを囲むように垂直に峻立する白いレーザーは、ステージを異世界へのポータルのようにも見せた。

『MAYBE PERFECT』の再現をやりきった4人が退場するが、場内は暗いまま、アンコールのクラップが響く。ここで頭上のディスプレイに「お知らせ」の文字が。何かしら発表があるだろう、とは事前に期待していたが、「新アルバム」には驚いた。2020、2021、今年と3年連続で出してきて、冬にまた新譜ですよ(「延期」も予め予告されていたけれど…)。「代代代楽曲大賞」、これは楽しそうだ。爆発的に増えた楽曲のうち、今なら何が上位に選ばれるのか。

 そして、おなじみのSEとともに、4人がランウェイに再登場。新衣装だ!この日の驚きの頂点はもしかするとここだったかもしれない。いや、新衣装も予想はしてたんですよ、でもでも、あんなにキラキラした、「アイドル」みたいな衣装になるとは…!おれの知ってる代代代じゃない!などという客席の戸惑いを振り払いようにアンコールの「ワールドワイドハピネス」が始まる。イントロがなっただけで客席全員が笑顔になるのが分かる代代代のアンセム。

「ワールド」で会場が一体になった後のMC。喋りだすと止まらない、いつもの代ちゃんたちだ。ひとしきり喋った後、とうとう梨央から「最後の曲です」の一言が。どの曲だろう、とあれこれ期待する間もなく、「ドーン!ドーン!」という重いタイコの音が響いてくる。最後のサプライズ、アンコールでの「ボロノイズ」だ。真上から降り注いでくる「ボロノイズ」の音が、音楽というより嵐のような気象現象のように感じられた。13分の異形の大曲を4人が歌い、演じきる。

「ボロノイズ」が終わった後に流れてきたアース、ウィンド&ファイアーの「セプテンバー」、実は代代代のワンマンでは、アンコールが終わってメンバーもはけた後、会場に「セプテンバー」が流れてきて、なぜかオタクがファルセットで合唱して、やっとライブが終わる、というのが「お約束」なのだが、今回はメンバーがまだステージにいる間に曲が流れ出して、メンバーもオタクもそれに合わせて踊りだす。これもまた今回のサプライズの1つだった。

 最初の一曲からアンコール最後の一曲にいたるまで、驚きに充ちていた代代代のワンマン。その一つ一つを実現するために、小倉Pを初めとするスタッフ、アーティストの振り絞った多くのアイデアと膨大な努力があったのだろう。そして、それをあの小さな丸いステージの上、たった4人で表現しきったのが、メンバーがこの日までに培ってきたスキル、表現力、積み重ねてきた努力だった。この1年間、どれだけ少ない観客だろうとアウェイだろうと、代代代のライブは毎回必ず驚きに充ちていた。品川の一夜もその集大成だった。代代代のステージにしか存在しない驚き。その驚きを目撃するために、また次のライブに足を運ぼうと思う。


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