【読書】ジェイソン・シュライアー『血と汗とピクセル: 大ヒットゲーム開発者たちの激戦記』
この本は、10本のビデオゲームの開発のストーリーからなっている。世界的に人気のゲームタイトルばかり…らしい。らしいというのは、筆者はゲームにあまり興味がなく、この本に登場するゲームを1つもプレイしたことがないからだが、それでもこの本を読むのは楽しかった。10本のゲームの開発にはそれぞれ独自の物語がある。
とりあげられるゲームの中には、たった1人の人間が完成させたものもあれば、数百人からなる開発チームによって作り上げられたものもある。この本の登場人物は、プロデューサーや、デザイナー、ライターなどのゲーム開発スタッフだ。彼らの中には、富を掴んだ者もいれば、ゲームを完成させたにもかかわらず、働いていた会社が消滅する憂き目に合う者もいる。だが、全てのゲーム開発に共通することが一つある。それは、ゲームの開発はとんでもなくシンドいものであり、完成までには莫大な労力と時間を必要とする、ということだ。
特に出荷前の数週間、あるいは数カ月間の「土壇場」(crunch)では、朝から晩まで、長時間労働の日々が続く。業界ではこれがほぼ不可避なことと認識されているのだ。
また、ゲームに限っていうと、出荷が終わった後もまだまだパッチやアップデート、追加コンテンツなど作業は続く。
なぜゲーム開発にはそれほど労力が必要なのか。ゲームには、使い易さとバグの少なさが要求されるソフトウェアとしての側面と、ユーザーを楽しませ、没入させることが目的の芸術作品としての側面があり、双方を高い水準で達成して初めて成功といえるからかもしれない。
製作過程で多くの人々が関わるという点で、ゲーム開発は映画製作に似ているかもしれない。だか、ゲーム開発には、映画にはない特徴もある。
魅力的なアイデアを持っていれば、クラウドファンディングで完成までの資金を集めることも可能であること、発売時に評判が芳しくなく、ユーザーのクレームや不満が噴出しても、フィードバックを適切に取り込んでパッチやアップデートを行っていけば、ユーザーを満足させる、人気の高い作品に化けさせることも可能だということだ。