どうでもいい話をしよう
手紙ではわりと真面目なことばかり書いていたのとは反対に、物販で話すときは、行き当たりばったりの、下らない話しかしなかった。しょうもな過ぎて、今では何一つ思い出せないくらいの。4ヶ月前に卒業の発表があって、公式ホームページに、みすゞちゃんのコメントも載っていた。その中に、応援してくれた人を裏切るようなことになった、と書かれていた。ぼくは、これっぽっちも裏切られてなんかいない、と思ったので、そのことを手紙にも書いたけど、口頭でも伝えなきゃいけないと思った。でも物販では相変わらずどうでもいい話しかしなかった。卒業のことはほとんど話さなかった。
ワンマンの2週間前、黄色チェキの使えるライブはあと2回、というときになって、流石にこれではいけないと思い、言うべきと思ったことを短い手紙にして、物販でもそれを見ながら話すことにした。裏切られてなんかいない、とか、感謝していることとか。ワンマン前の最後の対バンが終わった後、話すべきことはなんとか話せたと思って、ほっとした。それと同時に、いつものくだらない話ももう二度とできないんだと思うとなんだか無性に懐かしく感じた。
ワンマンのライブが終わって、個別チェキの撮影が始まった。1回目の自分の番が来て、みすゞちゃんにプレゼントのバラの花束を持ってもらった。チェキを撮った後、みすゞちゃんは花束を見ながら「ドライフラワーにするね」と言った。前に花をプレゼントしたときもドライフラワーにすると言っていたので、ぼくは気になっていたことを尋ねた。「花瓶、持ってないの?」。すると、みすゞちゃんは、一瞬ムッとした顔をして、「ドライフラワーが好きなの!」と言ってから、にっこり笑った。物販で、ぼくがしょうもない冗談を言ったときによく見せた表情だった。最後にできた、どうでもいいような、くだらない話。