シンプルに作っていい感じに仕上げる小説同人誌のデザイン表紙
友人の小説同人誌の表紙デザインを作成したときの覚え書きです。
キャラクターイラストを使わず、
複雑なロゴや作字にも頼らず、
シンプルな文字のレイアウトと素材だけで構成した、
小説本らしいデザイン表紙です。
こんなふうに作ってる人がいるんだな~と、ご笑覧いただければ幸いです。
①本の内容を把握する。
さて、まずは本の内容について把握するところから始めます。
依頼主である友人から聞き取ったのはこんな感じ。
「鬼滅の刃」と「刀剣乱舞」のクロスオーバー作品である。
小説本である。
B6サイズである。
藤花紋がキーアイテムとなる作品なので、藤の花の絵を使いたい。
藤の花から光が溢れ出るようなイメージで。(希望や人の温かさ等を表現したい)
ほうほう。なるほど。
今回は、これを使ってほしいという藤の花のイラスト素材が指定されていたので、その素材データを渡してもらって、準備完了です。
②ざっくりラフを複数作ってみる。
では改めて、表紙に載せたい情報を洗い出してみます。
依頼主の希望を聞きつつリストアップ。
こんなもんかな。
同時にデザイン方面のアイディアも洗い出します。
鬼滅もとうらぶも和の世界観だから、使うフォントは明朝体がいいな。
同じ理由で、タイトルは縦書きが良さそう。
凝ったロゴをガチガチに作り込むのではなく、大きな文字でさらっとタイトルを見せるような、シンプルで大人っぽいデザインのほうが内容に合いそう。
以上を踏まえて、いくつかレイアウト案を作ってみます。
参考になるのは、やはりPinterest。
「本 表紙」あたりで検索して、出てきた画像を眺めているだけでも、ヒントが山ほど見つかります。
小説本のデザイン表紙の場合、ラノベや漫画の表紙よりも、教養本や洋書のデザインのほうが参考になったりします(イラストを使わず、タイポグラフィやグラフィックデザインで構成されている本が多いので)。
そんなPinterestの力も借りながら、ざっくり何種類か作ってみます。
まだラフなので、イラスト素材の加工はあまり作り込まず、使用フォントも仮のもので、配色も適当で良いので、とにかくざっくりと。
「藤」と「家」を大きく、文字のジャンプ率を意識してみっちり詰めてみたり。
極端なくらいシンプルにしてみたり。
印象派絵画の展覧会のポスターか? というようなレイアウトとか。
趣向を変えて、もっと柔らかい光の雰囲気を全面に押し出してみる?
うーん。
どれも似たりよったりで決め手に欠けるなぁ……。
アイディアも一通り出て、手が止まってしまったので、
ここで基本に立ち返って、鬼滅の刃に登場する藤花紋を見返してみます。
あ、そうか。
藤花紋なんだから、家紋っぽさも欲しいよね。
円をレイアウトに取り入れるのはどうだろう?
というアイディアが出てきたので、タイトル文字を円(半円)状に配置してみることにします。
おお! なかなか収まりが良いのでは?
この時点で依頼主の友人にラフを見てもらって、さらに希望などを聞き出します。
藤の色は、もっと赤みの強い紫色が良いとのことなので、希望に合わせて色味を調整。
レイアウトはこれでOKということでGOサインをもらえたので、このざっくりラフから、さらに作り込んでいきます。
③ラフからさらに作り込む。
作り込みたい要素をリストアップしてみます。
藤の色味を赤寄りに調整。
フォントを、もっと細身の明朝体に変更。スッキリとした大人っぽさを演出したい。
文字に被写界深度の概念を取り入れるのをやってみようかな。(※制作当時のトレンドだったのでやってみたかった)
文字が読みやすいように、藤のイラストのディティールをぼかすなどして加工。目指すイメージは印象派の絵画のタッチ。
藤から光が溢れるように……とのオーダーなので、全体を少し暗めに加工してから光を足して、バランスを調整。
文字がほんのり発光しているような加工にすると、光の優しい雰囲気が表現できるかも。
そして出来たのがこちら。
文字の配置が思いのほかいい感じにまとまったので、
これを流用して、表4も統一感のあるスッキリした感じに仕上げちゃいましょう。
タイトル文字を反転させて、こちらが裏表紙ですよ~というのをわかりやすく。
すべての文字を反転するとさすがにくどいので、反転はタイトルだけで十分かな。
④完成
そんな感じで、完成しました。わ~い!
印刷所は栄光さん。
オフセット印刷です。
想定通りのカラーで、微妙なグラデーションの色味も綺麗に刷ってくださいました。素晴らしい〜!
実際の本にはマットPP加工がついています。
マットPPのしっとりした手触りと、
シンプル&大人っぽさを目指したデザインとが大変良くマッチして、
とっても上品な一冊に仕上がりました。
以上です。
今回はかなり気心の知れた友人からの依頼だったので、
面識のない方からお仕事として受ける際の進め方とは少し異なりますが、
だいたいこんな感じで作ってますよ~という記録でした。
最後まで読んでくださってありがとうございました!
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