夢で見た風景
久々なうえ、完全に創作です。
(「夢で見た」というのは本当です。あまりに印象的な内容だったので、つい文章に残したくなり、書き殴ってしまいました)
妻と二人で旅に出た。
青空が広がる、とても清々しい日だった。
たどり着いた場所は大きな山の麓に栄える街。
麓から山に向かって大きく右に反りながら登ってゆく、広い幹線道路と大きな橋が印象的な街だ。
橋のたもとまで歩みを進める。そこで見つけたのは骨組みと一部の壁だけを残した、随分と古びた廃屋だ。
廃工場だろうか?
私たちはその廃屋に立ち入り、奥に進む。
しばらくすると突如視界が開けた。そこには街を望める小高い丘があった。
丘を登り、広々とした景色を目の当たりにする。
そこはよく整備されており、足元は綺麗に刈り込まれた芝で埋め尽くされていた。
近くで遊ぶ子供たちの楽しそうな笑い声も聞こえる。
この場所はきっとこの街の公園なのだろう。
初めて来た場所にも関わらず、とても懐かしいと感じた。
景色を楽しむ妻を尻目に、私は彼女の元を離れ辺りを散策する。
しばらく進んだ先で路面電車の停留所を見つけた。
「これに乗らなければ。」
なぜか私はそう思い、程なくやってきた電車に飛び乗る。
私を乗せた電車は、街を過ぎ山を登り始める。
街中を走る路面電車とは思えないほど、とてつもないスピードで坂を駆け上ってゆく。
「戻れなくなる…!?」
勢いよく走り続ける電車に怖気付いた私は、山の中腹の停留所で停止した電車から慌てて駆け降りる。
山の中腹とは思えないほど開けた場所だ。
来た道を戻るべく、焦る気持ちを抑えつつ反対方向の電車を待つ。
そしてようやくやって来た電車に、私は安堵のため息を漏らしながらゆっくりと乗り込んだ。
しかし電車は、降って来た山道を再び登り始める。
結局山頂までたどり着いてしまった。
終点は、山のてっぺんとは思えないほど高い建物に囲まれていて、さながら繁華街のようだ。
しかも終点間際の線路は深い水に囲まれており、そこを子供達が楽しげに泳ぎ回っている。
危うく電車にぶつかりそうになる子も。
だが不思議なことに、その誰もがそんな心配は無用と言った表情だ。
一体ここはどこなのだろう?
ようやく電車を降りた私は、帰りの電車賃が心配になり手元の残高を確認する。
「しまった、足りない」
仕方がないので歩いて下ることにしよう。
私は百貨店のような駅舎を去り、歩みを進める。
眼前に広がるのはとても美しい街の風景だった。
ちょうど夕方だったのだろう。沈みゆく夕陽がひどく美しかった。
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