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ヴォクス・マキナの伝説をTRPG側から解説してみた Season3 Week4(第10~12話)

※初見の方へ※
この記事は「ヴォクス・マキナの伝説をTRPG側から解説してみた」の続きです。過去の記事がまだの場合はシーズン1から順に読むことをお勧めします。
シーズン1 #1では通算第1~2話の内容に加え、原作となるTRPGセッション『Critical Role』についても紹介しています。

シーズン3の前回の内容については↓からどうぞ。


原作の話数について

元々原作Critical Roleではライシャンの行方はすぐにわかっており、すぐにライシャン戦に入ってます。そのため、ライシャン戦までヴォクス・マキナの伝説としての大規模なオリジナル展開ということになります。

主要設定

クラスプ(第10話~)

リプリーの行方を追うため、ヴァクスが頼ったのは「クラスプ/The Clasp」と呼ばれる闇ギルドです。
「クラスプ」とは「留め金」の意味であり、組織は「犯罪シンジケートが存在するのに必要な文明社会を守る留め金である」という意味でこの名を名乗っています。
窃盗、恐喝、暗殺、破壊工作、人身売買、違法薬物売買など、タルドレイ中の犯罪行為に関与しており、作中に登場したスティルベンの港町以外にも、王都エモンの地下やウェストランなどにも居を構えています。

冬の頂(第12話~)

戦いの後、一行は「冬の頂」と呼ばれる行事にカサンドラから誘われています。
これはタルドレイ大陸における、我々の世界で言うクリスマスに相当する行事です。クリスマスと異なり、この祭日は強大な氷の精霊と、それに率いられた霜の巨人フロスト・ジャイアントの襲来により続いた戦争の終結を記念したものです。

なお、原作Critical Roleでは冬の頂のイベント回があったのはホワイトストーン編終了からクロマ・コンクラーベ編開始までの間であり、地味にアニメ化での改変内容の一つです。

余談ですが、冬の頂の英名はWinter's Crestである一方、原作Critical Roleの配信ではレギュラー出演者陣も出演しているMMORPG『World of Warcraft』の世界観内における「冬至祭/Winter's Veil」(訳語は『ハースストーン』より)と言い間違えるシーンがあり、どちらも現実のクリスマスに相当するイベントである事から、関連性が疑われます。

個別解説:第10話

盗賊の符丁(ヴァクス、クラスプの男)

「俺もマントを着ているが、傷つけるのか?」からの一連の会話は、日本語吹き替えにしていてもカッコ書きで字幕が表示されます。
これは「盗賊の符丁」とみて間違いないでしょう。ローグ・クラスのルールにも明記された特殊な言語で、裏社会独自の隠語や暗号にあたるものです。
窓が開いており、いつ誰が見ているかわからない状況でクラスプの所属に関する話を堂々とするのは危険と判断したのでしょう。

土のアシャリの儀式

ライシャンの居場所を知るべく、この世の全てを見聞きする儀式を学ぶことを選ぶケイレス。
これは… D&Dにも類似の呪文も見当たらないため、完全なオリジナル要素、あるいは特定の場所で行える、呪文ではない特殊な要素という事なのでしょうか?

個別解説:第11話

元素の自然の化身:アース・エレメンタル(ケイレス)

儀式に成功し、地の精霊と化すケイレス。
シーズン2第5話以降、火の精霊ファイアー・エレメンタルへの変身を見せているケイレスですが、アース・エレメンタルも「元素の自然の化身」の変身対象の一つに含まれています。

大地のメッセージ(ケイレス)

ライシャンの居場所を特定したケイレスは、木々や砂を通して遠くの仲間たちを召集します。
非常に遠くにメッセージを届けるという観点ではテレパシーの呪文などもありますが… これもあの洞窟の力なのでしょうか?

ミーティア・スウォーム?(ライシャン)

ついに始まるライシャンとの戦い。第一手に、虚空へのポータルを開き、緑の火球を呼び寄せます。
これはミーティア・スウォーム/流星雨の呪文に見えます。極大の隕石をいくつも振らせる呪文です。ポータルという表現なのは、ジガラットという屋内で隕石を降らせることへの正当化でしょう。

テレキネシス or アニメイト・オブジェクツ?(ライシャン)

祭壇に走るケイレスに襲い掛かるジガラットのブロック。
テレキネシス/念動力の呪文は集中している間念動力を発揮するという効果ですが、これは効果中1つずつしか動かせません。
複数の物体が浮遊しているという点ではアニメイト・オブジェクツ/物体操りの呪文で動かしているとも考えられます。これも念じて動かすという点では共通していますが、こちらの場合は物体に限りますが、複数体一度に動かすことができます。

個別解説:第12話

テレキネシス(ライシャン)

ソーダクの死体を操るライシャンに飛びかかるヴァクスですが、念力らしき物に止められてしまいます。
これも先述のテレキネシスの呪文と思われます。テレキネシスでは生物も効果対象になります。
動きを止めるだけであればホールド・パースン/対人金縛りの呪文でもできますが、こちらは相手の体を麻痺させるため、飛行もできなくなってしまうので違うものと思われます。

ウォール・オヴ・フォース?(ライシャンorジガラット)

ジガラットのブロックによって生み出されたと思われる魔法の壁が、ケイレスと残りのメンバーを分断します。
これまでにも紹介したウォール・オヴ・フォースの呪文にも見えますが、ジガラットの魔力であるため細かい仕様が異なっているのかもしれません。

メルド・イントゥ・ストーン?(ケイレス)

火炎ブレスに焼け落ちた姿を見せたかと思ったケイレス。地の精霊アース・エレメンタルとして地面から現れ、ソーダクの腹に一撃を喰らわせます。
地面から再構成し再生するという内容ではありませんが、一時石の地面に潜るという表現はメルド・イントゥ・ストーン/石への融合の呪文を思わせます。これは石に物理的に潜り込む(外の物を検知することはできない)というものですが、現れる位置も元と同じ場所と指定されています。
筆者としてはあまり使い道を見いだせなかった呪文なのですが… ブレスの回避というのは比較的実用的なように思えます。無論、場所依存ではありますが…。

ホールド・パースン?(アルーラ&ギルモア)

もだえるヴァクスが余計な被害を出すのを防ぐためか、二人が魔法でヴァクスの体を押さえつけます。
これは先述のホールド・パースンの呪文の表現でしょうか?麻痺ではなく物理的な拘束の形をしていますが、ウィザードやソーサラーとして使える拘束手段というとこれになります。

やや余談ですが、初めてギルモア自身が呪文を使っている様子が明確に描かれているように見えます。

あとがき

シーズン3、通例通りなら12話で終わり…なのですが、まだ戦いは続きます。
既にシーズン2~3間に原作第2キャンペーンをモデルとした続編シリーズ『Mighty Nein』(原題)の製作が発表されているので、ヴォクス・マキナの伝説は切り上げて、次に進んでしまうのかなと思ったのですが…どうやら最後まで、シーズン4もやるつもりなのでしょうか?シーズン3からの新オープニングには、ドラゴン達やリプリーとは異なる、盲目の人物の姿が描かれていますからね。

自分がシーズン4はないと思っていた理由がもう一つあります。それは、D&D側の内容に踏み込みすぎてしまうからです。
これまでジガラットや破壊のオーブなど、時折出てきた要素は「ささやかれし者」へと通じています。そして、シーズン1の記事で紹介した通り、「ささやかれし者」とはD&Dを代表する悪役の一角・ヴェクナ。克明に描こうとするなら、D&Dのライセンス内容を避けるという方針と合致しないからです。

「ささやかれし者」はどのように描かれるのか。それとも次世代の物語へと進むのか。シーズン4、あるいは『Mighty Nein』編でお会いしましょう。

追記:シーズン4の制作が発表されていました。

原作でのクロマ・コンクラーベ編の話数(全45回)よりも、それ以降の話数(全32回)の方が少なく、進行度合いによっては1シーズン12話で、長くて2シーズン24話で終了する見立てになります。
真のクライマックスまで、改めてお付き合いよろしくお願いします。

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