R5予備論文憲法再現(答案構成・評価A)

 色々とスマホのデータを整理していたら予備論文を受けたその日(9/9の18時くらい作成)に答案構成をしていたデータが出てきたので公開します。
 37分で2.4枚の途中答案(だったらしいです)。評価はAです。

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1.Xの主張
民訴法197条1項3号「職業の秘密」に該当するか否かにつき、①取材の自由は21Ⅰで保障されており重要な自由である、②①の自由は甲の証言を聞く利益よりも遥かに優越する、③取材態様は個人の尊厳を著しく蹂躙しておらず正当である
から該当する
2.私見
①近年のネット社会ではフェイクニュースや誤情報がすぐ拡散されるので事実の報道を支える取材の自由は重要とも思える
 しかし博多駅事件は昭和期の判例であるが、「十分尊重に値する」との言い回しにとどめる趣旨は取材の相手方が任意に取材に応じてこそ自由が発揮できるという本来的制約可能性を示していると解すべきだから、現在でも十分尊重に値する程度にとどまる
 また、博多駅事件は報道機関を主体とする取材の自由を論じたものであるが、これは判例が出た昭和期とは異なり、近年のネット社会の下では個人の発信とその正確性を支える個人の取材の自由も十分尊重に値すると考えられる
②甲は契約の自由(29)の反映として守秘義務を課しておりその実現のためとしても、公正な裁判を受ける権利(33)の一環として証言を受ける権利があると考えるべき
 しかし、取材の自由も十分尊重に値する自由だから、公正な裁判の実現との比較衡量で決する
 具体的には制限が必要とされる程度、自由の内容・性質、具体的制限の態様程度を較量する(よど号事件参照)
 もっとも、取材の態様が不当である場合はXの取材の自由はそもそも十分尊重するに値しないと考える
③個人の人格を著しく蹂躙する態様の取材は不当であると考える(西山記者事件)
 西山事件は刑事事件であるから本件では考え方が妥当しないとも
 もっとも外務省の秘密電文の秘密保持という公共性の高い法益と取材の自由とが対立する事案類型と、公正な裁判の実現という公共性の高い法益と取材の自由とが対立する本件は、公共性の高い法益と取材の自由が対立する点で共通しており事案類型は同一と考えられるから妥当する
 ただし、西山事件は外務省の秘密電文というニュース内容の公共性が考慮されずに取材態様のみで判断されたが、取材態様を判断するには報道事実の重要性も考慮する必要があると考える
 地球規模で関心を向けられるSDGsは重要だが、家族と住む生活拠点に執拗に押しかけ、自己の個性を全うすべき人格的価値と不可分である職業について殊更悪く言うのは個人の人格の尊厳を著しく蹂躙して不当(「じゅうりんしてふとう」と書いてタイムアップ)

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感想:結論が書けずに途中答案となったこと、具体的事実をあてはめる部分がスカスカだったことから終わった直後はFだと確信していました。出題趣旨の要求にそれなりに応えていたこと、判例に明示的に触れてその射程を論じたことがA評価に繋がったっぽいです。時間的に追い詰められていたので書きながら構成を考えた(行政法を終わらせてから問題を読み始めた)にしては、意外にも筋が通っている気がします。

内容面:試験終了後、そういえば報道クラブと個人の自由の保障の程度が違うと言っていたのはレペタ訴訟だったということを思い出しました。
 博多駅事件の部分は、答案構成には書いてませんが、実際の答案には問題文の事情の当てはめも書きました。結論はXに取材の自由を認める方向で書きたかったのですが、ガーシーにも取材の自由を認めていいかな? みたいな当てはめをした記憶があります。また、博多駅事件は予備R2過去問で出題実績があったので、実際の答案では21条1項→事実の報道の自由→取材の自由の流れを正確に判例の言い回しをトレースしながら書けました。
 証言拒絶の判例はよく知らなかったので、公正な裁判の実現との比較衡量でいいだろうと思って枠組みについてはあっさり書きました。
 外務省秘密電文事件についてはよく知っていました。情を交わすだけで「個人の尊厳を著しく蹂躙」という強い言葉を使った規範に該当するのか? みたいな疑問が以前からあったので結構しっかり覚えていた感じです。
 外務省秘密電文事件の規範で取材態様が不当だから証言拒絶は不可とするのなら、そもそも比較衡量の枠組みを立てる意味なくない? 結局あてはめしないのはどうなの? とは自分でも思っていましたが、時間がなかったので細かいことは無視して走り抜けました。
 SDGsの重要性の記述ではグレタさんの名前を出そうとかいう発想がちらつきましたが、時間がなくて結局書けませんでした。
 ちなみに、外務省秘密電文事件の規範の後にごちゃごちゃ書いてる部分についてですが、SDGsの地球的関心の高まりを外務省秘密電文事件の規範で考慮要素とするために報道内容の公共性についても一応考慮要素とすることを明示したものです。「外務省秘密電文事件の下級審は取材内容の公共性をも考慮して比較衡量をしたが、最高裁は取材態様の不当性のみを考慮要素としており批判がある」みたいなことを基本憲法Ⅰで読んだ記憶がなんか蘇ったから一応書きました。
 出題趣旨はまだ流し読みしかしていませんが、本番はだいたいこんな感じで考えていました。

R5予備論文出題趣旨(pdf直リン)
https://www.moj.go.jp/content/001411617.pdf


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