【超音波#4】白と黒の世界
こんにちは。msk3104です。
この記事にたどり着いていただきありがとうございます。
前回は、超音波の特性についてお話しさせていただきました。
反射、透過、減衰についてイルカや野球ををイメージしながら考えると分かりやすいと思います。
輝度(きど)
今日は、輝度について書きます。輝度は超音波画像を読み解く上でとても重要です。超音波画像は、白と黒で表されます。今回はその仕組みについてお話しさせていただきます。
送信と受信
前回、イルカのお話を書きましたので、ここでもイルカを登場させます。イルカは自身が超音波を発信し、反射してきたエコーを受信して情報を得てます。
超音波画像を作り出す際も同じ原理です。プローブから超音波を送信し生体内の組織で反射してきたエコーを受信して画像を作り出します。
ここまではイメージできたでしょうか?
超音波が反射して戻ってきた情報をもとに判断していますね。
その情報がとても大切です。
音響インピーダンス
聞きなれない言葉というか、聞いたことないですよね。音響インピーダンス。必殺技みたいでカッコいいですが、これが肝です。
簡潔に表すと音響インピーダンスは、組織の硬さの差です。
組織の密度と音速(超音波が通る速さ)こちらの表がまとまっています。
表にある通り、水と頭蓋骨では音響インピーダンスの差が大きいですよね。その場合、反射は強くなります。
逆に、脂肪と筋では差が小さいですね。その場合、反射は弱くなります。
運動器超音波観察法P9 第1章 超音波工学の基礎 表4
骨がダントツで、音速も密度も高いので音響インピーダンスが高いですね。なので、骨はどの組織とも差が大きいので、反射が強くなります。
筋と脂肪は数値が近く差が小さいので、反射は弱くなりますが、画像的には違う組織と区別して判断することができます。
プリンとゼリーと豆腐
こちらの画像をご覧ください。
豆腐とゼリーは違う。と以前の記事にも書かせていただきました。
こちらは、実際に実物を使って実験した画像です。机の上に、豆腐、ゼリー、プリンを3層に重ねて描出しました。
それぞれ、硬さの差がありますので、組織の境界部で反射しているのが見えますね。特に机と豆腐のところは音響インピーダンスの差が大きいので強く反射しています。
プリン、ゼリー、豆腐は音響インピーダンスの差が小さいので弱く反射しています。反射は弱いですが、組織の境界部はわかりますね。
画像を見ても分かるように、白と黒で、明と暗しかありません。
白と黒と明と暗
先ほどから、しつこく硬さの差と反射の強さを強調しています。
なぜなら、硬さの差、反射の強さが輝度を決めているからです。
もう一度、この画像をご覧ください。
白く明るい部位を、高輝度(高エコー域)
黒く暗い部位を、低輝度(底エコー域)
と、表します。これが輝度です。
正常と異常
なぜ、硬さの差、輝度が大切か?
それは、正常と異常を見分けるためです。
ケガしていない方と、している方を比べると差があります
ケガをしたときを想像してみるとイメージしてみてください。
例えば、骨折。その場合は腫れますね。それは内部で骨が壊れて、出血しているからです。血は水分が多いですし、骨との硬さの差は強いです。
そこを、超音波で描出すると、正常な健側(痛めてない側)と、患側(痛めている側)の差が必ず描出されます。
このような感じで、一目瞭然です。(左:患側) 橈骨遠位端部骨折です。骨が段差のようにずれているのが分かりますね。
次は、靭帯です、こちらも分かりやすいです。同じ方の左右比較の画像です。
上の2つの画像のように損傷が大きければ、画像も分かりやすく描出できます。正常と異常の差が大きいので分かりやすいです。
左右比べると、白と黒、明と暗が違うのがお分かりいただけたでしょうか?
細かなケガ
しかし、損傷が小さく分かりにくいケガももちろんあります。見逃されやすいケガです。
その見逃されやすいケガをしっかりと見つけて、早期復帰に導くことがとても大切です。そこが私たちの本領発揮できる場所だと思います。
これは、そこに何があるか(解剖学)、状態はどうなっているか(骨折の治癒過程)、更になぜそのうように描出されているのか(超音波の特性)を考えて、問診や視診、触診と合わせて総合的に判断することが大切です。
少しずつ超音波について詳しくなってきましたね。
次回は、下の画像を参考にビーム幅について書きます。
お楽しみに。