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30.【メカニカルストレスが組織に与える影響】物理的ストレス理論
このnoteは、MSI(Movement System Impairment)について解説することを目的としています。
MSIについては、こちらをご覧ください。
MSIでは、セラピストに向けて、身体の動きがきっかけで生じた痛みの原因を解明し、改善するプロセスを学ぶことができます。
はじめに
今回のテーマは“物理的ストレス理論”です。
物理的ストレス理論は、英語ではPhysical stress theoryを訳したものです。
物理的なストレスに対して、身体の組織がどのように反応するかをまとめた理論になります。
この理論を理解することは、MSIのキモである運動病理学的モデルを理解することにつながります。
今回の記事は、POSTに鈴木勝先生が書かれた記事を参考にさせていただきました。
より詳しく理解したい方は、こちらの記事をぜひご覧ください。
今回のnoteでは、以下の3点がわかる内容になっています。
物理的ストレスとは?
物理的ストレス理論とは?
物理的ストレス理論と運動病理学的モデル
ぜひ最後までお読みください!
物理的ストレスとは?
物理的ストレス理論の説明に入る前に、物理的ストレスについて復習していきます。
物理的ストレスは、理学療法現場でよく用いられるメカニカルストレスと同じ意味です。
今回は、表記を物理的ストレスで統一します。
物理的ストレスとは、細胞や組織に物理的な刺激がかかることで生じるストレスです。
屈伸、圧縮、剪断、ねじれなどの力学的な刺激を指します。
物理的ストレスは、細胞の生理学的な反応を引き起こすために重要です。
細胞は物理的ストレスを感知し、その刺激に応じて体の様々な機能を調節しています。
理学療法の分野では、物理的ストレスは組織にとって負担になるものというイメージが強いと思います。
もちろん過度な物理的ストレスは組織の損傷につながります。
しかし、適度なメカニカルストレスは身体の維持・向上にとって重要になります。
その理由は、物理的ストレス理論を知ると理解できます。
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物理的ストレス理論とは?
物理的ストレス理論は、MuellerとMalufらによって報告されました。
https://academic.oup.com/ptj/article-abstract/82/4/383/2837004?redirectedFrom=fulltext
こちらの図を見ていただくと物理的ストレス理論の概要がわかります。
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画像は廣濱(2018)の総説より引用
物理的ストレスが適度な状態であれば、組織はそのままの状態を保ちます。
我々が日常生活を送っている間、筋力が増えたり減ったりしないのは適度な物理的ストレスがかかっているからです。
また、やや強いストレスは組織の耐性を増加させます。
適切な筋トレで筋肉が肥大するのはこのためです。
過剰な物理的ストレスは、組織の損傷や細胞死につながります。
筋トレで生じる筋断裂などは過剰な物理的ストレスにあたります。
一方、過小なストレスも耐性の減少や細胞死につながります。
廃用に伴う筋萎縮が過小な物理的ストレスにあたります。
より詳細な解説は、2018年の廣濱先生の書かれた総説が非常に勉強になります。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jptpr/27/0/27_9/_pdf
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物理的ストレス理論と運動病理学的モデル
運動病理学的モデルとは、怪我や病気が身体の動きの問題を引き起こしているという考え方です。
詳細は、過去にも数回解説していますのでそちらの記事をご覧ください。
物理的ストレスは、屈伸、圧縮、剪断、ねじりなどの力学的な刺激を指すことはすでに解説しました。
運動病理学的モデルとの関連の部分で考える必要があるのは、物理的ストレスがかかる方向や頻度です。
運動病理学的モデルでは、身体の動きと痛みの関係性を以下のように考えます。
普段の生活の中で何度も繰り返す動きや長時間とっている姿勢が、身体の動きの問題を引き起こし、結果的に痛みにつながるという考え方です。
これは、特定の方向に物理的ストレスが加わり続けることが痛みにつながると言えます。
物理的ストレスが過剰な状態を繰り返すことで、組織の損傷や破壊に繋がってしまいます。
このように、運動病理学的モデルを理解するためにも物理的ストレス理論を理解することは重要になります。
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まとめ
今回は、”物理的ストレス理論”をご紹介しました。
物理的ストレスとは、細胞や組織に物理的な刺激がかかることで生じるストレスです。
物理的ストレス理論は、適度なストレスは組織の維持を、過小・過大なストレスは組織の損傷や萎縮をもたらすことを説明しています。
物理的ストレス理論をベースに物理的ストレスがかかる方向や頻度を考えることが、運動病理学的モデルに基づいた痛みのメカニズムを理解することにつながります。
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