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22.【小さな動きを捉える】上腕骨の症候群について

このブログは、MSI(Movement System Impairment)について解説することを目的としています。

MSIについては、こちらをご覧ください。

MSIでは、身体の動きがきっかけで生じた痛みの原因を解明し、改善するプロセスを学ぶことができます。

はじめに

今回のテーマは、上腕骨の症候群についてです。

肩関節の痛みには、肩甲骨の動きの問題が大きく関わっていることを肩甲骨の症候群の記事で紹介しました。

肩甲骨の動きと同時に、肩甲上腕関節における上腕骨の動きの問題が生じることがほとんどです。

肩甲上腕関節は自由度の高い関節です。

大きく動くため、その分動きのエラーが生じやすい関節とも言えます。

今回のnoteでは、以下の3点がわかる内容になっています。

  • 肩甲上腕関節の機能解剖

  • 肩甲上腕関節の評価ポイント

  • 上腕骨の症候群

是非、最後までお読みください。

肩甲上腕関節の機能解剖

肩甲上腕関節の機能解剖を復習していきます。

肩甲上腕関節は、肩甲骨と上腕骨で構成されている球関節です。
肩甲骨の関節窩は、比較的浅く、関節唇で補強されています。

画像はプロメテウス解剖学アトラスから引用

https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/89448

余談ですが、先日ドジャースの大谷選手が修復手術を受けたのがこの肩関節唇になります。
関節の安定性を向上させるための重要な組織です。

股関節など他の球関節と比較すると、骨同士の関節面が小さいです。
関節の可動性が大きくなるというメリットがありますが、一方で不安定性が生じやすいのも特徴です。

構造的な安定性の不足を、関節包と一体化した靭帯や、4つの腱板筋で補強しています。

腱板筋は、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つで構成されています。
関節窩に対して上腕骨を求心位に保つことで肩甲上腕関節の安定性に大きく関与しています。

画像はプロメテウス解剖学アトラスから引用

https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/89448

肩甲上腕関節の評価ポイント

MSIでは肩甲上腕関節の適切な運動を、上腕骨頭が求心位を保ち軸回旋することであると定義しています。

MSIの運動系機能障害症候群の本、通称黄色い教科書では、求心位での軸回旋をPICR(回旋中心の軌道)と記載されています。

関節の回旋中心となる点をイメージし、触診で評価することが大切です。

最近はこの用語は使われていませんが、概念としてイメージしやすいかと思います。

PICR

画像は運動系機能障害症候群のマネジメントから引用

https://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=212850

肩甲上腕関節では、特にこの回旋中心を保てているかが重要になります。

あとで紹介しますが、回旋中心が前方や上方にずれてしまっていることが多いです。

動作の評価や触診を通じて、この小さな動きのエラーを捉えることが大切になります。

小さな動きのエラーが痛みにつながるメカニズムに関しては、こちらの記事を参照してください。

上腕骨の症候群

上腕骨の症候群は、5種類に分類されます。

  • 上腕骨前方滑り症候群

  • 上腕骨上方滑り症候群

  • 肩甲上腕関節内旋症候群

  • 肩甲上腕関節過小可動性症候群

  • 肩甲上腕関節多方向過剰可動性症候群

上記の5つです。
一つずつ確認していきましょう。

上腕骨前方滑り症候群

運動機能障害として、肩関節の運動中に上腕骨頭の前方変位が生じることが特徴です。

シートベルトを取る時など手を後方に引く動きで痛みが出ることが特徴です。

肩関節後方に比べて、前方が過剰に柔軟である結果前方滑りが生じます。

上腕骨頭の前方滑りに注意しながら、肩関節の運動中に求心位を保持できることを目標とします。

シートベルトを取るのが困難という方は多い

上腕骨上方滑り症候群

運動機能障害としては、上肢挙上時に上腕骨頭の下方滑りが不足し、相対的に上方滑りが起こります。

上肢挙上時などに痛みが生じるのが特徴です。

三角筋が過剰に活動し、腱板筋群の弱化がみられます。

三角筋の過剰活動を抑制し、腱板筋群の活性化をはかります。

三角筋が発達している方は上方滑りが生じやすい

肩甲上腕関節内旋症候群

運動機能障害としては、過剰で反復的な上腕骨の内旋により症状が出現します。

肩甲上腕内旋筋群が外旋筋群よりも優位で、機能的活動や肩屈曲・外転の際,内旋することが特徴です。

内旋筋群の抑制と、外旋筋群の活性化がポイントです。

チェリストなど楽器演奏家に多い

肩甲上腕関節過小可動性症候群

運動機能障害としては、全ての方向への肩甲上腕関節の運動の制限が生じます。

肩甲上腕関節の運動の代わりに肩甲骨が動いて代償します。

疾患名では、肩関節周囲炎後の凍結肩などがこれに当てはまります。

肩甲上腕関節の可動域改善が最優先事項です。

肩甲骨の過剰な代償を抑制することもポイントです。

モビライゼーションなどで肩甲上腕関節の可動域改善を図る

肩甲上腕関節多方向過剰可動性症候群

運動機能障害として、上肢挙上時などに、過剰な上腕骨の滑りが観察される。

肩甲上腕関節の過剰な可動性と肩甲骨の運動の低下が特徴です。

全身の過剰柔軟性と関連していることが多いです。

腱板筋群の活性化と肩甲骨の動きの改善を要します。

最終可動域までの運動を避けることもポイントです。

バレリーナなど柔軟性の高い方は要注意

まとめ

今回は、上腕骨の症候群について紹介しました。

肩甲上腕関節の動きのエラーは大きくありません。

しかし、回旋中心を意識して適切に触診をすることで確認することができます。

回旋中心を意識して、上腕骨を評価することで正しい運動か、エラーが生じているかを見極めることがポイントです。


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