最近の記事

2024年11月9日四国停電,何が起きていたのか。

2024年11月9日(土)20時22分,四国エリアで約37万戸の停電が発生しました。四国電力送配電の資料等を基に,何が起きていたのかを電力系統工学の視点から解説します。なお,本記事は公開資料を基にしていますが,一部推測を含みますのでご了承ください。 四国の電力系統と事故前の状況上図が四国の主要な電力系統です。西端の伊方発電所から,東端の橘湾発電所および阿南直流変換所まで,500kV送電線が東西に横断しています。途中の讃岐変電所から枝分かれする形で本四連系線により交流で本州と

    • 電験3種 2021年度 理論 問16 計測器の内部抵抗

      電圧計と電流計の内部抵抗に関する問題です。内部抵抗とは何かさえわかれば,あとは単なる直流回路の問題になります。 (前提1)内部抵抗とは回路の電流を測る時には電流計を使い,電圧を測る時には電圧計を使うわけですが,正確に測定するために必要なことはなんでしょうか? その条件の一つに,計測器が回路に影響を(なるべく)与えないということがあります。計測器を回路につないだことで,回路の電気の流れが変わってしまうと,正確な測定ができません。 単純な例で考えましょう。電池と抵抗がつながっ

      • 電験3種 2021年度 理論 問15 三相交流回路

        (前提1)交流回路と合成インピーダンス突然ですが問題です。 ⓵ 抵抗値3Ωの抵抗に60Vの直流電源をつなぐと,流れる電流は何Aでしょうか? ② 抵抗値4Ωの抵抗に60Vの直流電源をつなぐと,流れる電流は何Aでしょうか? ③ 抵抗値3Ωの抵抗と抵抗値4Ωの抵抗を直列につなぎ,そこに60Vの直流電源をつなぐと,流れる電流は何Aでしょうか? 全部オームの法則で解けますね。 ⓵ 60V÷3Ω=20A ② 60V÷4Ω=15A ③ 60V÷(3Ω+4Ω)≒8.57A ③では,抵抗を

        • 電験3種 2021年度 理論 問14 ブリッジ回路

          ブリッジ回路についての問題です。 (前提)ブリッジ回路とは抵抗の大きさを測るには,抵抗に電源をつないで抵抗にかかる電圧の大きさと流れた電流の大きさを測り,オームの法則で求めるのが一般的です。しかし,電圧や電流の測定には誤差が伴い,それらを使って計算した抵抗値にも誤差が生じます。 一方,電流が流れたか流れていないかだけであれば,電流の大きさがどれくらいかに比べて精密に求めることができます。これを利用して,抵抗の大きさを精密に求めるのがブリッジ回路です。 ブリッジ回路では,測

          電験3種 2021年度 理論 問13 電界効果トランジスタの等価回路

          電界効果トランジスタ(FET)の等価回路に関する問題です……が,与えられた等価回路にオームの法則を当てはめるだけで解けます。 (前提1)電界効果トランジスタ(FET)とは電界効果トランジスタ(FET)はトランジスタの一種です。名前の通りですね。電界効果じゃないただのトランジスタ(バイポーラトランジスタ)と同じく,3本の端子を持ち,電気を増幅することができます。 2種類のトランジスタの違いは,バイポーラトランジスタはベースB・コレクタC・エミッタEの3端子を持ち,ベースに

          電験3種 2021年度 理論 問13 電界効果トランジスタの等価回路

          電験3種 2021年度 理論 問12 電界・磁界による力

          電界から電荷が受ける力と磁界の中を動く電荷が受ける力についての問題です。 (前提)電界による力: 電界E [V/m]中に電荷q [C]を置くと、電界の向きにq×E [N]の力が働きます。電界は電荷が受ける力ということに注目し,電界の単位は [N/C]と表すこともできます。 磁界による力: 磁束密度B [T]の磁界中を電荷q [C]が速度v [m/s]で動くと、フレミングの左手の法則で表される向きにq×v×B [N]の力が働きます。 磁束密度B [T=N/Am]と透磁率

          電験3種 2021年度 理論 問12 電界・磁界による力

          電験3種 2021年度 理論 問11 半導体

          半導体の性質についての問題です。 (1) ベースが(n型やp型にするための不純物は考慮しません)1種類の元素でできていれば単元素半導体,複数の元素でできていれば化合物半導体です。インジウムリン(InP)はインジウム(In)とリン(P)の化合物,シリコン(Si)は単元素なので,(1)は誤りです。 (2) 半導体の中を自由に動いて電流を運ぶものをキャリアといいます。n型半導体では電子,p型半導体では正孔(ホール)がキャリアとなります。 半導体内にキャリア濃度の濃い部分と薄

          電験3種 2021年度 理論 問11 半導体

          電験3種 2021年度 理論 問10 過渡現象

          コイルを含む回路に直流電源をつないだ瞬間からの過渡的な電流を求める問題です。 (前提)コイルの過渡現象コイルは電流の変化を妨げるものです。 下の2つの回路でそれぞれスイッチを閉じた瞬間からの電流を考えます。 左の抵抗だけの回路では,オームの法則で求められる電流が瞬時に流れます。 右の抵抗とコイルが直列になった回路では,電流は0Aから徐々に増え、最終的にはオームの法則で求めた電流になります。 電流が一定になるまでの変化している状態を過渡状態、電流が一定になった状態を定常

          電験3種 2021年度 理論 問10 過渡現象

          電験3種 2021年度 理論 問9 共振

          コイルとコンデンサによる共振状態についての問題です。 (前提)共振とは?共振とは、コイルLとコンデンサCの間で電荷が行ったり来たりをくりかえす現象です。 ⓵上側に正の電荷がたまっているコンデンサをコイルとつなぐと, ②コイルを通って上から下に電流が流れます。 ③さらに電流が流れるとコンデンサにたまっていた正負の電荷が打ち消しあって0になります。 ④⑤しかしコイルは電流を流し続けるので下側に正の電荷がたまってきます。 ⑥下側に正の電荷がたまると, ⑦今度は下から上に電流

          電験3種 2021年度 理論 問9 共振

          電験3種 2021年度 理論 問8 交流回路

          抵抗に交流電圧をかけたときの電流を求める問題です。正弦波の式とグラフの関係がわかれば解けます。 (前提)正弦波の式とグラフ 正弦波の式 A×sin(Bθ-C)とグラフの関係は下図のようになります。 式全体にかかる係数Aは,グラフの縦軸方向の高さ(振幅)を決めます。 sinθだけなら-1から+1の間で振動するので,Aをかければ-Aから+Aの間で振動するようになります。 θにかかる係数Bは,グラフの横軸方向の幅(周期)を決めます。 sinθはθが2π[rad]増えるごと

          電験3種 2021年度 理論 問8 交流回路

          電験3種 2021年度 理論 問7 直流回路

          内部抵抗のある電源による最大出力電力についての問題です。簡単な解き方があるのですがそれは(解法2)に回して,まずは正攻法で解いてみます。 (前提)抵抗で消費される電力抵抗に電流を流したときに消費される電力P [W]は,電圧V [V],電流I [A],抵抗R [Ω]として,  P=V×I……⓵  P=R×I^2……②  P=V^2 / R……③ で表せます。②③は,⓵にオームの法則V=R×I,または,I=V/Rをそれぞれ代入したものです。 ⓵~③どれを使ってもいいのです

          電験3種 2021年度 理論 問7 直流回路

          電験3種 2021年度 理論 問6 直流回路

          直流回路の抵抗を切り替え,流れる電流を求める問題です。電源の性質さえ問題文から読み取れれば,計算は難しくありません。 (前提)直流安定化電源とは?直流安定化電源は,設定された電圧と電流のどちらがが上限となるめいいっぱいの電気を流す装置です。例として,上限値を問題文の通り100A,20Vに設定したものとして具体的に計算してみましょう。 ①0.1Ωの抵抗をつないだ時 ・抵抗に100Aの電流を流すために必要な電圧は,100A×0.1Ω=10Vとなります。10Vは電圧の上限値

          電験3種 2021年度 理論 問6 直流回路

          電験3種 2021年度 理論 問5 ゼーベック効果

          単に名前を知っているかどうかだけの意味のない問題です。 (ア)温度差→電圧は,ゼーベック効果です。ペルチェ効果は電流→温度差です。 (イ)温度差=熱によって発生する起電力なので熱起電力です。誘導起電力は,コイルに磁石を近づけたりとかで電磁誘導によって発生する起電力です。 (ウ)(エ)温接点と冷接点だそうです。あえて考えるなら,高低だと温度なのか電圧なのかわからないってことぐらいでしょうか。 というわけで答えは⓵です。 (蛇足1)本当に意味のない問題です。アマゾン

          電験3種 2021年度 理論 問5 ゼーベック効果

          電験3種 2021年度 理論 問4 電磁誘導

          コイルの近くで磁石を動かしたときの電磁誘導を求めます。 (前提1)電磁誘導とは?電磁誘導とは,導体の周りで磁束を変化させたときに導体に電圧が発生する現象です(電圧が発生している場所が導線でつながってれば電流が流れます) どんな形の導体でも発生しますが,効率よく電圧を発生させるため,導線をぐるぐる巻きにしたコイルの中の磁束を変化させることが多いです。 磁束を変化させるには,この問題のように磁石を近づけたり遠ざけたりするほか,別のコイル(電磁石)を近くに置いてその電磁石に流

          電験3種 2021年度 理論 問4 電磁誘導

          電験3種 2021年度 理論 問3 磁性体と磁気遮へい

          磁性体についての問題です。 (前提1)強磁性体とは強磁性体というのは,ざっくり言うと鉄(ほかにはコバルト・ニッケルなど)のように磁石にくっつく物質です。このような物質は透磁率(電気回路でいう導電率)が高いという性質があります。そのため,磁束(電気回路でいう電流)は透磁率が低い外部の空間よりも透磁率が高い強磁性体の内部を通ります。 (考え方と答え) 歩きにくい(透磁率の低い)草ボーボーの野原(外部空間)を歩いてるときに,近くに歩きやすい(透磁率の高い)アスファルトの広

          電験3種 2021年度 理論 問3 磁性体と磁気遮へい

          電験3種 2021年度 理論 問2 電荷に働く力と誘電率

          2つの電荷の間に働く力が,空間の誘電率によってどう変わるかという問題です。 (前提1)2つの電荷の間に働く力 2つの電荷に働く力の大きさは F=(1/4πε)×(Q1×Q2/r^2) となります。電荷が大きいほど,距離が近いほど,誘電率が小さいほど力が大きくなります。しかも距離は2乗で効きます。 力の向きは正負が同じ電荷なら反発する向き,正負が異なる電荷なら引き合う向きです。 (解法1)式を使って計算する式を覚えていれば当てはめるだけです。 真空中のとき 真空の誘

          電験3種 2021年度 理論 問2 電荷に働く力と誘電率