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コインランドリーから未来を考える

2024年10月03日(木)のNACK5『Good Luck! Morning!』内「エコノモーニング」では、こんなお話をしました。

今週はこのコーナーでは月曜から水曜まで石破新政権についての話をされていたようですね。私は、その話は来週にしようと思います。石破さんだけではなく、河野太郎さんから平将明さんに交代したデジタル大臣の観点からお話ししようと思って準備中ですので、乞うご期待、ということでお願いします。

そして、今日は政治とはずっと離れて、とても身近な街の変化についてお話ししようと思います。テーマはコインランドリーです。じつはコインランドリーというのは、ここ30年ほどずーっと年々店舗数が増加し続けているんですが、そういう実感はありますでしょうか?

私はデータを見て驚いたのですが、約30年前の1996年には全国で約1万店舗だったものが、現在は倍増して2万2000店舗を超えているのだそうです。背景には、共働き世帯が増加し洗濯に充てる時間を毎日確保するのが難しくなっていること、形態安定シャツや洗濯機で丸洗いできてしまうような機能性の高いスーツなど衣服の素材の変化、花粉や黄砂などを避けて洗濯物を外に干さない人が増えたことなど、私達の生活スタイルや環境が変化してきていることが関係しているようです。利用者も多様化しているようで、昔は一人暮らしの方や学生がメインでしたが、今では共働き世帯や子育て世帯、高齢者まで幅広く利用されているのだそうです。

そして最近のコインランドリーは、機能が非常に向上しています。まず、洗濯と乾燥を一度に行える「洗濯乾燥機」の普及で、時間が短縮されました。そして大容量化です。家庭用洗濯機が8キロ~10キロであるのに対し、コインランドリーには20キロ以上の大容量の洗濯機もありますから、一度に大量の衣類や毛布なども洗えます。また、スマートフォンのアプリで洗濯機の空き状況を確認したり、洗濯完了の通知を受け取ることができますので、待ち時間を有効に使うことが可能です。梅雨や冬など家庭用乾燥機で乾きづらい時期には、高性能な乾燥機能を求める方も増えるそうです。また、自分で洗うのに比べればお金はかかるわけですが、スニーカーやスポーツシューズを洗うことができたり、布団やカーテン、カーペットなどといった大きなものをこまめに洗うこともできるというのも喜ばれているようです。

コインランドリーの進化の中でも、私が興味深いなと注目しているのは、2018年に東京都墨田区に誕生した「喫茶ランドリー」というお店です。洗濯機があり、ミシンやアイロンのある家事スペースがあり、ソファがあってくつろげるカフェスペースもあります。地域の方々のコミュニティイベントなども行われていましてて、この「まちの家事室」とか「私設の公民館」のような場所を目指しているんだそうです。このスタイルが注目されまして、いまでは店舗数は3店舗になり、仲間のお店も各地で増えているようです。喫茶ランドリーを運営しているのは株式会社グランドレベルという会社でして、代表の田中元子さんという方もお話やご著書が非常に面白い方です。たとえば手作りで公共スペースを作っていく「マイパブリック」という考え方ですとか、建物の1階(つまり会社の名前にもなっているグランドレベル)というのがまちづくりには大事なんだという考え方は、まさに「喫茶ランドリー」で具体化されています。

コインランドリーへの需要は、今後もさらに増えていきそうだと私は考えています。いちばんの根拠は、単身世帯の増加です。私が子供だった1980年当時、最も典型的な世帯の形は夫婦と子供から成るいわゆる核家族世帯でして、全体の約4割を占めていました。一方、単身世帯というのは約2割でした。しかしこの40年ほどでその割合は逆転してしまいまして、いまやもっとも典型的な世帯が単身世帯で約4割を占めるようになっています。しかも未婚化や晩婚化、高齢者の単身世帯の増加が進んでいくことにより、単身世帯は2050年には43%が単身世帯になる、と国立社会保障・人口問題研究所は予測しています。つまり、今後も一人暮らし世帯が増加していくとなると、コインランドリーの需要はますます高まっていくのではないか、と考えられますね。

また、このように一人暮らしの方がますます増加していくとしますと、洗濯機だけではなく、掃除機や調理器具といった家電や、お風呂なども、すべて自分用に所有するのではなく、近所の人たちとシェアして必要な時に利用するというスタイルが広がっていくのではないか、ある意味では昔のスタイルに戻っていくのではないか、と私は予測しています。一人暮らしにとっては、1人用のものを全部自分で所有して家を狭くするよりも、必要なときに高機能のものを近所で使う方が合理的だと思うんですね。喫茶ランドリーのような場所があれば、人と人のつながりを作ることもできますしね。

ということで、コインランドリーの増加や高機能化は、私達の生活スタイルの変化やシェアリングエコノミーの未来までも想像させる動きなのではないか、と思います。以上、今日はコインランドリーから未来を考える、というお話でした。

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