新卒で広報宣伝部・広報室に配属になったことがきっかけで、それ以来、会社を変え、業界を変えながら広報の仕事を30年近くやってきました。
広報にはさまざまなタイプの仕事があり、大変幅も広いし奥も深い、非常にやりがいのある仕事です。
私の長女がちょうど中学3年生なのですが、これから自分の将来について考えるであろう時期に差し掛かっています。そんな娘や、娘と同年代の中高生の皆さんにわかりやすく自分の仕事について紹介したいと思いました。これから数回に渡って、広報の仕事に興味がある中高生、あるいは大学生の方にわかりやすく「広報の仕事」についてお伝えしたいと思います。
まず、広報には大きく分けて2つの仕事があります。
社外広報と社内広報
社外広報は、社外のオーディエンス(対象となる聴衆)に向けて、企業や自社商品のイメージ向上、認知度アップに繋がるような施策を考え、実行する仕事。例えば、会社にとってとっても重要な新製品が発売になる場合、マスメディアに働きかけ、記者会見を設定したり、プレスリリース(記者の方たちが記事を書く元になるもの)を配信し、取材を誘致して記事にしてもらう、などが代表的な仕事です。記者の方たちと良好な関係(メディア・リレーションズと言います)を構築し、維持するのも重要な仕事です。
社内広報は、社員に向けて、トップからのメッセージや会社の重要な情報を社内に共有したり、社員のモチベーションの向上を計ったり、社内の風通しを良くし、コミュニケーションの活性化を図るような仕事です。社内イベントを企画・実行したり、社内報という社内向け広報誌を制作したり、イントラネットという社内用のウェブサイトの運営もします。ここ1年以上は、コロナ禍においてテレワークの状況もあり、オンラインを使ってイベントするなど様々な趣向を凝らした企画が必要とされます。
さらに細かく見ていくと、社外向けの広報には以下のような仕事があります。
製品広報
エグゼクティブ広報(経営者広報)
企業広報
危機管理広報
ちょっと毛色は違いますが、CSR広報(サステナビリティ広報)というのもあります。
これらについてはまた別途書きたいと思います。
それぞれ目的が少しずつ違うので、アプローチする媒体(雑誌や新聞、オンラインメディアのことです)も異なり、その媒体によってメッセージの仕方もそれぞれ変わってきます。例えば、製品広報も、どういった製品なのか、により、どのメディアにアプローチするのか、が変わってきて、どのメディアにアプローチするのか、でメッセージの伝え方も変わってくるのです。
会社によっては、社外も社内も同じチームで担当する場合もありますし、それぞれに担当を置く場合もあります。
広報にはどんな人が向いている?
冒頭に、広報の仕事は幅が広く奥が深く、やりがいのある仕事だと書きました。それでは広報の仕事に向いている人はどんな人でしょうか?考えてみました。
コミュニケーションスキルが高い人
言わずもがな、という感じですが、マスコミを相手にする対応が多い仕事ですので、コミュニケーション能力の高さは必須です。記者・編集者などとの人脈を積極的に作り、仕事に活用するのは大変重要な任務の一つです。一昔前までは、所属する記者クラブに足繫く通い、顔を覚えてもらい、忙しそうな記者さんに時間をもらって説明する・・・という地道な活動で人脈を築くのが常套手段でした。今はメールで何でも済ませられる世の中ですから、そういうやり方は減ってきているようです。コロナ禍においてはなおさらでしょう。でも、そんな時代だからこそ、ひと手間をかけてアポを取って訪問する、フォローアップの電話をするなどのお付き合いも、今まで以上により重要になってくるのではないでしょうか。
社内広報であっても、マネジメント(経営陣のことです)の意図や会社の戦略を理解して、社員にわかりやすく情報発信をしていく必要があります。社内イベントでのファシリテーター(司会進行のことです)、社内広報誌の編集、Eメールでの配信、イントラネットでの記事展開、そして最近はビデオを使ったり、Podcastなどの動画・音声メディアを活用する企業も多いようですので、コミュニケーションスキルの高さは不可欠です。
情報収集力がある人
自分の企業や自社製品・サービスを社内外にPRするには、自社のことのみならず、競合他社をはじめとする業界全体の動きを常にウォッチしている必要があります。ですから、情報収集力は広報担当者にとって、必須の能力と言えるでしょう。毎日、主要な新聞や雑誌、ウェブサイトの記事に目を通し、競合他社の掲載記事、ウェブサイト、プレスリリース、ソーシャルメディアをチェックするなど、コツコツと情報収集を行う能力が必要な仕事です。また、社員からの情報を吸い上げ、マネジメントにインプットする社内情報収集の役目も担っています。
フレキシブルな人
広報に限らず、という感じかもしれませんが、広報の現場では想定外の出来事が頻発します。例えば、記者発表会を予定している当日に、「登壇者が急病!」、「電車遅延発生!」、「プロジェクターの動作不良!」、「PCが壊れた!」、「製品の仕様に変更が入った!!」などなど。思い出すだけで冷や汗が出るような出来事が私の広報人生の中にも多く発生しました。発表会の朝まで、発表資料の内容に変更がガラッと入るなんて日常茶飯事。そんな時でも慌てず騒がず冷静に、その時にベストな解決策を瞬時に判断し決定できる、そんな臨機応変さも求められます。
ちなみに、私が一番冷や汗をかいた出来事は、アメリカ本社の日本法人に勤めていた時の出来事です。アメリカ本社のCEOが来日したので、取材を3媒体と設定しました。日本法人の本社が少し不便な所在地だったため、記者の皆さんに都合良いよう、取材会場を大手町のホテルに設定したのですが、記者が時間を過ぎても一向に現れません。電話を何度入れても通じなくて・・・やっとつながった時には、その記者は取材場所を日本法人の本社だと勘違いしており、そちらに向かっていたということで、本社CEOはすっぽかしを食らってしまったのでした。CEOにひたすら謝り、良き良き、と許していただいたのですが、今思い出しても冷や汗が流れる出来事です。
クリエイティブな人
広報の仕事においては、クリエイティビティ(創造性)が求められる状況が多々あります。例えば、新製品イベントの企画や、社内向けのイベントの企画などがあげられます。新製品のイベントであれば、記者がたくさん集まってくださり、注目を集め、多数の記事化を達成するためには、どういうイベントをやったらいいのか、ということを考える必要があり、そこにクリエイティビティは不可欠な要素になります。ですから、対コンスーマ(消費者)相手のビジネスであれば、タレントや女優を新製品イベントに呼んだりして、多くの記者を集め、記事の露出を図るわけですね。また、イベントでなく、プレスリリースを書く場合でも、クリエイティビティを発揮して、記者が読んでくださるような、目に留まる、面白いプレスリリースを工夫して書く必要があります。
そのため、クリエイティビティ能力の優れた人は、広報に向いていると言えるでしょう。
広報に必要なスキルとは
では、広報を務めるためには、具体的にどのようなスキルが必要でしょうか?
ライティングスキル(書く能力)
プレスリリースやSNS運用において、文章力・校正力は必須と言えるでしょう。社内広報誌やイントラの記事も同様です。マスコミの皆さんはお忙しいうえに、毎日何百通というプレスリリースを受け取っています。マスコミの記者の皆さんや、社内の読者が、読んでいて面白いと思ってもらえるような文章や、パッと読んだら伝えたいことがしっかりと伝わる文章を書く力が非常に重要です。特に最近では、プレスリリースにおいても、社内の広報誌やイントラネットの記事においても、ストーリー性が求められることが多くなっています。
プレゼンスキル(人前での発表スキル)
広報職に関わらず営業などの職種でも求められるスキルですが、やはりプレゼン力は必須です。イベント企画書をPPTにまとめ、なぜそれが必要なのか、目的は何か、それによりどういう結果を達成するのか、そういった熱い思いを伝えながらマネジメントに上手にプレゼンしなければ企画は通りません。きれいにまとまったプレゼン資料も、説明する担当者にプレゼンテーションスキルがないと説得力も半減です。また、新製品の紹介も、広報担当者がメディアに対して説明する場合も多々あります。社内で社員を前にイベントの司会をすることもあります。プレゼンテーションスキルは、磨いておいて絶対に損はありません。
外国語能力
外資系企業での広報担当なら言うまでもないですが、日系企業においても、海外に向けて情報発信を行う場合もあります。海外のメディアから問い合わせが入ることもあるでしょうし、外国人記者による取材対応に立ち会う場合もあります。海外にビジネスを展開している企業であれば、積極的に外国語、特に英語力は、習得しておいて決して無駄になることはないでしょう。流麗な文章を外国語で書ける必要はありませんが、最低限の読み書き、受け答えができたほうが絶対にためになります!