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物語創作のスピードを100倍に加速する-100 TIMES AI HERO’S JOURNEY-note版

100 TIMES AI HERO’S JOURNEY
生成AIを活用して、物語創作のスピードを100倍に加速する

このnoteは、2025年2月23日、技研ベースで開催された「技研AIマーケット」にて限定頒布した拙著「100 TIMES AI HERO’S JOURNEY」のnote版です。

第2章まで無料で公開しています。


第1章 - AIヒーローズ・ジャーニーのはじまり

1.1 小説「禁忌の輪廻」(抜粋)

第1章:静謐なる運命の交差

冷たい風が街角を吹き抜ける秋の午後、天宮蓮人は人気のない路地に佇んでいた。午後3時を告げる教会の鐘の余韻が、まだかすかに空気を震わせている。
そこに彼は現れた。霧島蓮斗。

「君の中に、何か特別なものを感じる」

突然投げかけられた言葉に、蓮人は無意識に後ずさった。見知らぬ男の静謐な眼差しが、まるで彼の心の奥底まで見通すかのように注がれる。

「何を...」

返答に窮する蓮人の前で、蓮斗は優しく微笑んだ。その表情には、どこか懐かしさを感じさせる温かみがあった。

「君の持つ力だ。それは祝福であり、同時に呪いでもある」

その言葉に、蓮人の胸が痛みで締め付けられる。幼い頃から誰にも打ち明けられなかった秘密—「Memory Erasure」という不可思議な力。過去の記憶を消し去ることができるその能力は、彼にとって重荷以外の何物でもなかった。

「私にはわかる。君が誰にも心を開かず、孤独な闘いを続けてきたことが」

風が二人の間を通り過ぎる。落ち葉が舞い、蓮人の足元で小さな渦を巻く。彼は無言で俯いた。確かに、これまで誰とも深く関わることを避けてきた。傷つくことを恐れ、自分の中に壁を築き続けてきた。
しかし、目の前の男の言葉には、不思議な説得力があった。まるで運命に導かれるように、蓮人は少しずつ心の扉を開こうとしているのを感じる。

「私と共に歩まないか。君の持つ力の真実を、共に探ってみないか」

蓮斗の声は、優しく、しかし力強かった。

「...わかりました」

返事をした瞬間、蓮人の胸に温かいものが広がる。長年封印してきた感情が、少しずつ溶け出すような感覚。それは不安であり、同時に希望でもあった。
夕暮れが街を包み始める中、二人の影が長く伸びていく。この出会いが、蓮人の人生を大きく変えることになるとは、まだ誰も知る由もなかった。

ただ、彼の心の中で、かすかな光が灯ったことだけは確かだった。それは、孤独という闇を照らす、小さいけれど確かな希望の灯火。蓮人は静かに空を見上げた。
夕焼けに染まる雲が、まるで彼の新たな旅立ちを祝福するかのように、鮮やかな色を放っていた。

………


1.2 誰でも生成AIを使って物語の創作ができる

冒頭の小説は、生成AIが生成したプロットを元に、生成AIに指示して執筆させたものの一部です。
人間は最初にいくつかの質問に答えただけで、あとは生成AIが物語の登場人物とプロットを生成し、そのプロットを元に生成AIが小説を執筆しました。
仕組みを考えたり、コードを書いたりする時間を除けば、最初の入力から小説が出来上がるまでの時間は約 分間でした。
生成AIを活用することで、物語の創作のスピードを圧倒的に加速することができます。
この書籍には、どのように物語創作のスピードを加速したかを記しています。

コードを載せているので、Google ColabとOpenAIのAPIを使ったことがある人なら、手元で再現することができます(Google ColabのサンプルコードのURLも掲載しています)。
プログラミングができない人でも、無料のChatGPTとコピペだけでも同じことはできます。
是非、お手元でも物語の生成を楽しんでみてください。

生成AIに登場人物を作らせたり、ストーリーテリングをさせることは、ビジネス分野にも応用ができるかもしれません。
そのような応用的な活用を行ってみた方がいらっしゃったら、是非お知らせください。


第2章 - 生成AIを活かして物語創作の生産性を100倍に加速する

2.1 前身:100 TIMES AI HEROES

2024年11月9日、AIフェスティバル2024の中で行われた、第3回AIアートフェスティバル最終審査会において、拙作「100 TIMES AI HEROES」が、審査員特別賞をいただきました。
「100 TIMES AI HEROES」は、本書「100 TIMES AI HERO’S JOURNEY」の前身たる作品で、生成AIを活かして、キャラクター創作の生産性を100倍にすることを目指すプロジェクトでした。

「100 TIMES AI HEROES」では、生成AIを使ってキャラクターの人物像を構成する要素のアイデアを生成し、プログラムがランダムに要素を組み合わせて、キャラクターの名前、紹介文、印象的なセリフ、画像生成用のプロンプトを短時間で大量に作ることに成功しました。
具体的には、100名のキャラクターのアイデアを15分で作ることができました。

「100 TIMES AI HEROES」には、さらに前身となるプロジェクトがあります。
さかのぼること2021年11月、漫画家:山田玲司先生の主催するオンライン漫画スクールで漫画を学んでいた私は、「オリジナルのキャラクターを作る」という課題に取り組んでいました。
私は限られた期間(具体的には1週間)のなかで、実際に漫画の登場人物として利用可能なキャラクターのアイデアをできるだけたくさん作る、ということに挑戦し、50人以上のキャラクターのアイデアを提出しました。
「100 TIMES AI HEROES」の「100倍に加速する」の根拠は、この50人のキャラクターを考える作業のおおよそ100倍のスピードを実現したことを根拠としています。

短時間で多くのアイデアを形にするアプローチについては、同じく2021年に受講した、筑波大学のSTEAMエクステンション講座の中で受講した、SF思考の講義からインスピレーションを受けています。
つまり、既存のアイデアの延長線上に無いように思える新しいアイデアも、既知のアイデアと既知のアイデアの偶発的な組み合わせの中から導き出せる、という発見です。
本書「100 TIMES AI HERO’S JOURNEY」も基本的にはこのアプローチが基盤になっています。

2.2 創作のワークフローの中で、何を生成AIに担わせるとよいのか

創作のワークフロー全体のなかで、何を生成AIに担わせるのが効果的でしょうか。
先に述べたように、新しいアイデアが、既知のアイデアと既知のアイデアの組み合わせだとすると、既知のアイデアを列挙したり、それを組み合わせることは生成AIやプログラミングの得意とするところです。
実際に「100 TIMES AI HEROES」においては、人間の役割は、「高速で生成されるキャラクターのアイデアを眺めて、インスピレーションが降ってくる(つまり物語を作る内的な動機が生まれる)のを待つ」という役割のみで、その他の工程は全て生成AIとプログラミングによって実現しています。

生成AIが、人間よりも高速に、継続的に実行することで、創作のワークフロー全体に貢献することができる領域こそ、生成AIが活かせる領域でしょう。
そのように考えると、物語のプロットを考えたり、そこから小説やシナリオのプロトタイプを作ることも生成AIに担わせることができれば、人間の役割はもっと映画監督のような役割になっていくのかもしれません。
その先には、「人間の役割と呼べるものは、何が残るのか?」というような問いかけが生まれてくる予感がします。
本作「100 TIMES AI HERO’S JOURNEY」の中では、そのような問いかけにも向き合っていきたいと思います。


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