邪馬台国の謎 (17)
魏志倭人伝のざっくりとした翻訳を終えたことで、とりあえず一休みしておりましたが、折を見て少しずつ進めていきます。
魏志倭人伝や魏志韓伝、魏略等々といった文献の記述を鵜吞みにした場合、現実にマッチしない箇所がいくつか出てくることは、お話しました。
特に、距離に関する記述はさっぱり分からないですね。
近年、春秋の筆法による解釈論等もあり、文献サイドからのアプローチもかなり進展してきています。
ただ、昭和(特に戦後)以降は、
考古学的アプローチ
に主眼を置いた邪馬台国論争が重視されるようになっています。
ただ、個人的には「戸数」に関する記述についても疑念を感じています。
従いまして、どの程度の規模の遺跡群であれば、邪馬台国に比定しても良いのか、考古学的アプローチも結構難しいかも? と思っております。
実際に戸数や人口についての記録を探してみました。
すると、女王卑弥呼が朝貢を行なった三国志の時代、三か国の戸数や人口に関しての記録が残っていました。
ただ、当時は戸籍登録されていた人とそうでない人もいましたので、正確な戸数や人口ではないのですが・・・
魏では、約64万戸 人口440万人程度
呉では、約50万戸 人口230万人程度
蜀では、約28万戸 人口100万人程度
とされています。
第九話で、
三韓合計 24か国で、4万5千戸と紹介しました。
対馬で1000戸
壱岐で3000家
松浦郡で4000戸
というお話もしております。
三韓で蜀の6分の1。推定人口で16万人程度になります。
国の比定を行なわず、単純に戸数を見ていくと
伊都国 1000戸
奴国 20000戸
不弥国 1000家
投馬国 50000戸
邪馬壹国 70000戸
戸数が記載されていない邪馬台国連合の国々が、
斯馬国 巳百支国 伊邪国 都支国 弥奴国
好古都国 不呼国 姐奴国 對蘇国 蘇奴国
呼邑国 華奴蘇奴国 鬼国 為吾国 鬼奴国
邪馬国 躬臣国 巴利国 支惟国 烏奴国
の20か国あります。
国レベルとして扱われるのが1000戸以上だと仮定した場合、
20国x1000戸=20000戸以上
と考えることが出来るでしょうか。
つまり、16万6000戸+4000家という規模となり、蜀を一回り小さくしたぐらいの国家群になるということになります。
ここで、先程の三国志の魏・呉・蜀の戸数と人口から、1戸当たり人口を計算してみましょう。
魏では、約64万戸 人口440万人程度 ⇒ 1戸=6.875人
呉では、約50万戸 人口230万人程度 ⇒ 1戸=4.600人
蜀では、約28万戸 人口100万人程度 ⇒ 1戸=3.571人
となります。
単位として不ぞろいなのが浮き彫りになりますね。
もっと深く中国の歴史を研究しなければいけないのですが、研究者ではないので、色々な文献に当たる時間もお金もなく・・・
一応の仮定として、軍人1人を出す単位を戸数としているのかな? と。
そう考えると、強大な魏に対抗するために、呉や蜀では人口当たりの軍人輩出の負担が大きくなるのも納得できるからです。
戸数や人口に関しての考察した文献にあまりお目にかかることがないので、私自身まだまだ、この辺は論文を探さないといけないなと思っています。
さて。ここで参加国の比率で邪馬台国連合の人口を割り出してみます。
家と戸の単位比較が不明なので、暫定的に同じとして計算します。
魏の比率 1戸=6.875人 ⇒ 17万戸=約117万人
呉の比率 1戸=4.600人 ⇒ 17万戸=約78万人
蜀の比率 1戸=3.571人 ⇒ 17万戸=約61万人
このように、かなりの人口規模と考えることが出来ます。
さらに、この邪馬台国連合に屈することなく、一か国で邪馬台国に伍する狗奴国の存在があります。
五分に渡りあうには、最低でも邪馬台国連合の半分ぐらいの人口は欲しいところなので、30万人~60万人ぐらいでしょうか。
そう考えると、邪馬台国連合と狗奴国だけで蜀と同レベルか、それ以上の人口、国力を持っていたと考えられることになります。
さらに、遠方には倭種の国々がまだあると記載されていますので、その人口規模は150~200万人規模になるのではないでしょうか?
呉と遜色がないレベルですね。
歴史人口学者である鬼頭宏氏の推論では、
弥生時代の日本人の全人口が約60万人
とされていますので、随分と開きがあるように感じています。
もちろん、鬼頭氏の推論値が誤りである可能性は否定できませんが・・・
以上のように人口に関する記述についても、数字が正しいのかどうか分からないので考古学的アプローチでも規模が小さいとして候補から外される懸念はありそうです。
ただ。最終的にこの論争に決着をつけるには、遺跡の発見しかなくなっていますので、今後の発掘調査に期待しています。
さて、次回以降は、九州説や畿内説以外の説について紹介と考察をしていきたいと思います。
詳細まで把握していない説もありますが、その辺りはご愛敬ということで。