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米海軍の無人システムの動向

7月29日、米海軍省が「自律型情報システムIAS:Intelligence Autonomous System)に関する戦略」を公表しました。
 
米海軍省は、3月16日に無人作戦構想UCF:Unmanned Campaign Framework)を公表し、将来の無人システムの方向性を示していましたが、今回の報告書では、無人システムに人工知能(AI:Artificial Intelligence)を連接することで「自律化」させる方針を打ち出したのです。
 
1 無人化・自律化に向かった経緯
第3オフセット戦略の最新動向」でも述べたように、中国が失地回復と海洋権益獲得を目指す中、米国では軍・シンクタンク等から様々な対抗戦略が打ち出されては議論されてきました。
 
そのような中、2014年にワーク国防副長官(当時)が第3オフセット戦略を打ち出します。その内容は2020年台中盤に革新的な技術・運用を確立し、中露のA2/AD能力を相殺(オフセット)することで米軍の優位性(=米国の覇権)を維持しようというものでした。
 
具体的には、無人機UAV:Unmanned Aerial Vehicle)や無人水上艦USV:Unmanned Surface Vehicle)、或いは無人潜水艦UUV:Unmanned Underwater Vehicle)などの無人システムを発展させ、一元的なネットワークにつなぐという構想も中核に含まれていました。
 
UAVは以前から比較的に順調に進展していましたが、USVやUUVはこの第3オフセット戦略によって更に弾みがついたように見受けられます。
 
そして、無人システムへの自信を持った米海軍は、将来体制検討FNFS:Future Naval Force Study)での結果を踏まえ、2020年9月に米海軍の将来計画(Future Forward)を発表、無人アセットを正式に戦力構成に組み込むことを明らかにしました(その後、エスパー前・国防長官は「Battle Force 2045」を打ち出し、2045年までに有人・無人の艦艇を500隻以上保有するとしたが、これは前政権期における「構想」扱いに留まっており、2016年の戦力構成評価FSA:Force Structure Assessment)で示された355隻が現時点での米海軍の目標値となっている)。
 
2 本報告書の内容
● 米国はこのAIの時代において闘争し、国を守ることにおいて準備が不足している。
● 米国が今日直面している脅威は、史上稀にみる早さで進展しており、その大半は軍事分野の外部における技術革新に起因している。
● この脅威に対処するため、米海軍と海兵隊は、無人システムとAIを連接し自律化させるIASによって優位に立てるように改変していく。
● IASは新たな能力であり、既存の能力を高めるとともに、マルチ・ドメインの能力を拡大する。
● 米海軍省の優先課題は「IASへの適合化を加速すること」であり、IAS 戦略的実施計画に基づいて新規事業を導入し、 海軍力の技術戦略へと発展させていく。
● IAS 戦略実施計画の目標はIASに関するビジョンを形成し、投資戦略を提示し、一貫性のある構想へと導くことであり、能力、人員、手順及びパートナーシップを重視していく。
● 21世紀において海軍力は最重要(Paramount)であり、IASがその礎となる。米海軍省は海軍と海兵隊、政府機関、産業界、学界及び同盟国と連携しながら、この構想を発展させていく。
 
3 無人システムの開発・配備状況
近年、米海軍の無人システムは実際にかなり進展しつつあります。
 
(1) 無人機(UAV)
MQ-4C Triton
米国は、2001年の同時多発テロを機に、関係機関が取り扱う海洋情報などを組織横断的に強化して、国や地域の安全保障、治安、経済、環境等に影響する情報を統合的に把握しようとする海洋状況把握MDA:Maritime Domain Awareness)への取り組みを開始しました。
 
そのような中、1990年代に開発され、2001年から量産化されていた既存のノースロップ・グラマン社製無人機RQ-4グローバル・ホークの海洋監視型として、2012年に広域洋上監視BAMS : Broad Area Maritime Surveillance)機の開発に着手、その後、量産化型のMQ-4Cトライトンを完成させました(2013年5月、初飛行に成功)。
 
P-8Aポセイドン哨戒機が、MQ-4Cトライトンが発見した目標に対処する等、両者はいわば親子(注1) のような協働運用が想定されています。
 
2013年10月、カリフォルニアに第19無人哨戒飛行隊VUP-19:Unmanned Patrol Squadron 19)を創設、2020年からグアムに展開し第7艦隊の指揮下での活動を開始しています。
 
(注1) ギリシャ神話では、トライトンは海神ポセイドンの子とされている

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本年4月、前方運用基地FOB:Forward Operating Base)を在日米空軍基地に移設し、5月には初めて日本(三沢)に展開しました。米海軍としては最終的に68機を取得し、2025年までに世界5か所(注2) で運用する計画です。
 
(注2) カリフォルニア州ポイント・ムグ、フロリダ州ジャクソンビル、グアムのアンダーセン、イタリアのシゴネラ、UAE
 
RQ-4グローバル・ホークとの違いは、ミッション器材が多くなった分、やや飛行時間や行動範囲が制限される一方、バード・ストライク対策や除氷装置を備え、低高度での飛行も想定していることです。それでも連続24時間の運用が可能であり、行動範囲は8,200マイルに及びます。
 
現在、一部機能が制限された状態で運用されていますが、間もなくSIGINTやターゲティング能力が付加され、2024年にはフルスペックで運用できるようになります。
 
なお、米国以外では、同じくP-8哨戒機を運用する豪州が既にMQ-4Cの導入を決定しており、今後は広域洋上監視における無人システムの割合が増えていく見通しとなっています。
 
MQ-25 Stingray
一方、空母機動部隊も無人艦載機の開発・配備を目指しています。2006年のQDRでは、ステルス性を備え敵地深く侵入して攻撃する無人戦闘航空機UCAV:Unmanned Combat Aerial Vehicle)が想定されていましたが、2011年から無人艦載偵察攻撃機UCLASS:Unmanned Carrier-Launched Airborne Surveillance and Strike)と呼ばれるようになり、次第に情報収集・監視・偵察(ISR:Intelligence, Surveillance and Reconnaissance)や攻撃の用途が想定されるようになります。
 
しかし、2016年になるとF-35CやFA-18等の有人機の調達が優先されることとなり、その結果、MQ-25のISRや攻撃の用途を断念し、当面は空中給油を主任務とする艦載空中給油システムCBARS:Carrier-Based Aerial-Refueling System)として再出発することになりました(ただし、将来的なISRや攻撃への道筋は残している)。
 
UCLASSの試作機として空母離発着を成功させたノースロップ・グラマン社製のX-47Bなどの技術はMQ-25に引き継がれ、2019年9月に試作機が初飛行に成功します。

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試作機は、本年6月にF-18に対する空中給油に成功、また8月にもE-2Dに対する空中給油に成功しており、米海軍は、間もなくカリフォルニア州のポイント・マグ海軍航空基地に第10無人艦載多用途航空隊VUQ-10:Unmanned Carrier-Launched Multi-Role Squadron 10)を発足させる予定です(最終的に、米海軍全体で72機を調達予定)。
 
また、現在4隻の空母に無人航空戦闘指揮所UAWC:Unmanned Aviation Warfare Centers)を設置しており、無人艦載機の開発・配備は着々と進められています。
 
(2) 無人水上艦(USV)
USVも実戦配備に向けて動き出しています。USVの研究開発は、2010年に国防高等研究計画局DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)が立ち上げた対潜戦継続追尾無人船ACTUV:Anti-Submarine Warfare Continuous Trail Unmanned Vessel)計画に遡ります。2014年、DARPAは海軍研究本部ONR:Office of Naval Research)と協力してACTUVの試作機を共同開発し、2016年4月にシーハンター(注3) が進水しました。
 
(注3) 長さ40メートル、重量は140トン、三胴船(Trimaran)の船体を採用、最高速度は27ノット、最大90日間、約1万マイルの連続航行が可能
 
2018年、DARPAはACTUV計画を終了し、シーハンターを米海軍に引き渡しました(2番艦シーホークは、2021年に米海軍に引き渡し)。
 
その後、米海軍は2019年5月にUSVや新型兵器含む将来水上戦力の開発を担う第1水上開発隊SURFDEVRON-1:Surface Development Squadron One)を発足させ、指揮下にズムウォルト級駆逐艦と共にシーハンターを配備しました。
 
シーハンターは、中型無人水上艦MUSV:Medium Displacement Unmanned Surface Vessel)にカテゴライズ(注4) されていますが、今後、米海軍は大型無人水上艦LUSV:Large Displacement Unmanned Surface Vessel)も取得しようとしています。
 
(注4) 米海軍では、MUSVを長さ45~190フィート、排水量500トン程度の無人水上艦と定義、主としてセンサーとして有人艦より前方でのISRや対潜戦・対機雷戦用のアセットを想定。一方、LUSVは長さ200~300フィート、排水量1,000~2,000トン程度の無人水上艦と定義。今後、巡洋艦(CG)の退役に伴い激減するミサイル発射管数を補う(後述)ため、主としてアーセナル・シップとして運用される見通し

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国防省は、2017年に新たな開発計画(Ghost Fleet Overload Program)を立ち上げ、2019年に商用船2隻をLUSVに改修して試験運用を開始しました。
 
1隻目のLUSVレンジャーは昨年11月、ガルフコーストからパナマ運河経由、カリフォルニアまでの無人航行試験に成功(4,700マイル以上を航行、全行程の97%は地上から管制)、また2隻目のLUSVノマドも今年5月に同様のルートで無人航行試験に成功しており(4,421マイルを航行、全行程の98%は地上から管制)、2023年に7隻のLUSVを実用化することを目指しています。
 
また、今後、ズムウォルト級駆逐艦にこれらUSVの管制能力を持たせ、外洋における新たな戦闘能力を獲得しようとしています。
 
(3) 無人潜水艦(UUV)
UUVについては、オルカ(Orca)と呼ばれる特大無人潜水艦XLUUV:Extra-Large Unmanned Underwater Vehicle)計画が挙げられます。
 
2017年、米海軍はボーイング社などとXLUUVの開発に係る契約を交わしました。2019年、米海軍はボーイング社との契約を更新、ボーイング社が2016年に製造したエコーボイジャーをベースとしたXLUUVを5隻調達する計画が進んでいます(2022年6月までには調達完了)。

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この計画では、XLUUVは機雷用ペイロード確保のため長さ26メートルまで拡張され、試作機よりも大型化されます。ディーゼル・エンジンとリチウムイオン・バッテリーのハイブリッドで電力・動力が供給され、巡行速度は約3ノット(最大8ノット)、航続距離は最大6,500マイル、数か月の運用が可能です。
 
また、GPS、慣性航法装置、ドプラー速度計、深度センサー、衛星・音響通信機器のほか、自律障害物回避アルゴリズムや海底地形追従機能などの最新技術が施されるようです。
 
既存の米潜水艦から発進可能なサイズではないので、港湾を拠点として警戒監視や、対潜戦、対水上戦、機雷戦などに従事することが想定されていますが、UUVの場合は、いわば目隠し状態での水中航行や電磁波を通しにくい水中通信など、水中ならではの無人運用の難しさがあるので、この障壁を乗り越えるのは容易ではなさそうです。
 
4 関連動向
(1) 分散海上作戦(DMO)
そしてこれらの無人アセットは、先述のUCFにも記載されているように、米海軍が着々と進めている分散海上作戦DMO : Distributed Maritime Operations)(注5) において大きな役割を果たすことが期待されています。
 
(注5) 有人/無人の艦艇・潜水艦・航空機を地理的に分散し、高密度のセンサー網を構築するとともに、それぞれが射手(Shooter)にもなり得るよう、あらゆるアセットに攻撃能力を持たせるという作戦構想

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国防省と関係が深いシンクタンクCSBAは、2019年に発表した中国のA2/ADに対抗する海洋プレッシャー戦略(Maritime Pressure Strategy)を補完するものとして、2020年4月に探知による抑止(Deterrence by Detection)という報告書を出しています。
 
この中で、費用対効果と相互運用性に優れ、広域的に持続可能なリアルタイムの無人システムが、海洋プレッシャー戦略における平時のインサイド・フォースとして機能するとして、西太平洋では50機程のUAVが必要と提言しました。
 
更に今年7月には、探知による抑止の実施(Implementing Deterrence by Detection)という報告書を出し、無人ネットワーク・システムにAIを連接することで、例えばExcelシートへのデータ入力や電子メールの配信、或いは一般報道との照合等、これまで人の手を介して行ってきた作業を、AIが引き継ぐことで迅速に処理することができるとして、その重要性を強調しました。
 
(2) 全領域指揮統制(JADC2)
このDMOを支えるため、米海軍は、新たな海軍作戦構想(NOA : Naval Operational Architecture)に取り組んでいます。そしてNOAへの取り組みの中で、米海軍作戦部長(CNO)が海軍情報戦システムコマンド(NAVWAR:Naval Information Warfare Systems Command)に命じたネットワーク面での能力開発を「Project Overmatch」と呼んでおり、この成果物が、国防省が推し進めている全領域統合指揮統制JADC2:Joint All-Domain Command and Control)(注6) に連接されることになっています。
 
(注6) 国防省は、既存の指揮統制システムでは2018年の国家防衛戦略(NDS)の要求を満たすには不十分であるとの問題意識から、JADC2と呼ばれる新たなシステムにより陸海空軍と海兵隊及び宇宙軍を同一のネットワークで連接し、全領域での統合指揮統制を可能にする構想に取り組んでおり、今年5月にオースティン国防長官が実用化に向けゴーサインを出した(最終的に米海軍の「Project Overmatch」、米陸軍の「Project Convergence」及び米空軍の「ABMS:Advanced Battle Management System」を連接(System of Systemsの様相))

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JADC2では指揮通信の統合化のみならず、AIによる自動化、クラウド環境、新しい通信方法という3つの新技術を取り入れることで、差し迫る脅威に最もよく対処できる有人/無人アセットや攻撃に適したプラットフォーム等を視覚的に提示し、指揮官の迅速かつ適切な意思決定に寄与するといわれています。
 
ただしDMOやJADC2の実現には、敵の電磁・サイバー攻撃に耐え得る堅牢なネットワークが必要です。そのため、電磁・サイバー領域で優位に立つことが絶対条件となります。
 
(3) 電磁機動戦(EMW)
国防省は、2010年代前半から電磁・サイバーに係る戦略を策定しており、米海軍も近年、電磁機動戦EMW:Electromagnetic Maneuver Warfare)コンセプトによる戦略・戦術の再構築に取り組んでいます。

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将来戦におけるネットワーク攻撃は、大きく分けてケーブルやアンテナ等への物理的破壊、電磁妨害(ジャミング)及びサイバー攻撃(ハッキング)などの形態が想定され、従来の電子戦EW:Electric Warfare)では対応できない可能性があります。
 
従来のEWとの違いを簡単に言えば、軍全体で電磁波の輻射に対応が必要なこと、無線周波数(RF:Radio Frequency)から離れて電気光学(EO:Electro-Optical)を使う可能性があること、非物理的(Non-Kinetic)攻撃という側面から利用されること及びサイバー戦という要素が含まれることです。
 
(4) 人工知能(AI)
第3オフセット戦略以降、米国防省はカリフォルニア州シリコンバレーに国防革新部隊DIU:Defense Innovation Unit)を設置して民間IT企業との連携を促進してきました(学界とも連携)。
 
2019年2月、国防省はAIの拡充を図るため、統合AIセンターJAIC:Joint Artificial Intelligence Center)を設立します。
 
2020年8月、DARPAが主催したVR空戦競技(Alpha Dogfight Trials)では、米空軍のベテラン・パイロットがAIパイロットに5対0で完敗しました。その際、当該ベテランは「AIはOODAループによる意思決定サイクルが人間よりも格段に速く、その差もあるように感じた」と語っています。

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本年6月、ヒックス国防副長官は、JADC2を推進するためのAIDA(Artificial Intelligence and Data Acceleration)イニシアチブを開始すると表明しました。今後、国防省から戦闘コマンド(COCOMs:Combatant Commandes)に専門チームを派遣し、全軍で活用できるデータ収集・分析要領等を指導し、教訓事項のフィードバックに取り組むとしています。
 
また、本年7月、米国の本土防衛を担う北方軍(US NORTHCOM)では、収集したデータとAIを組み合わせて数日先の敵の動きを予測するシステムの実験を行いました。
 
実用化というには、まだ乗り越えなければならない課題は山積しているようですが、このようにAIの軍事技術への転用も着々と進展しつつあります。
 
5 懸案事項
(1) 予算配分

2016年のFSAで示される355隻の実現には、次の10年で約4%の増額が必要とする見方もあります。既存の装備品を維持しながら有人/無人の新装備の研究開発予算を如何に確保するか、米政府・議会及び関係機関で議論は続いています。
 
(2) 能力とレディネス
CNOは「2030年代半ばに艦艇の3分の1を無人化する」と述べる一方、「能力とレディネスが損なわれてはならない」とも言っており、355隻を目標としつつも、能力とレディネスが重要との認識を示しています。
 
レディネスは訓練によって補えるとして、CNOや米議会の懸念は能力、特にミサイル発射管の数であり、122のVLSセルを有する巡洋艦(CG)22隻が順次退役することで失われるVLS発射管を如何に補うか、このことについても米政府・議会及び関係機関で議論は続いています(米海軍は、先述のLUSVのアーセナル・シップ化で補うと説明)。
 
一方、航空機についてCNOは「当初は40%、いずれ60%まで無人化したい」と語っていますが、UAVの運用を可能にする制空権をどう獲得するか、有人/無人のチーミングや次世代制空NGAD:Next Generation Air Dominance)の在り方について議論の余地が残されています。
 
(3) 造船所の収容能力
現時点で、既にメンテナンスが必要な米艦艇の75%が遅延状態にあると言われており、今後、造船所の収容能力も上げていかないと355隻もの艦船を回すことはできないと指摘されています。
 
まとめ
本年4月、米太平洋艦隊はサンディエゴ沖での演習(UxS IBP:Unmanned Integrated Battle Problem 21)でミサイル発射試験を行いました。
 
この試験では、ミサイル駆逐艦ジョン・フィンが放ったSM-6を、E-2D等によるアクティブ・レーダーを使うことなく、無人アセットと宇宙配備センサーによるパッシブ・センサー群の支援だけ250マイル遠方にあるレーダー・ホライズン下の目標に命中させたという点で画期的なものでした。

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先述のとおり、米海軍は第3オフセット戦略を機に無人アセット(UAVs/USVs/UUVs)、これらを戦域に分散させる新戦術(DMO)、これらを統制する新たな指揮通信システム(JADC2)並びに指揮通信の安全を確保しつつ攻撃にも転用する新戦術(EMW)の開発配備を加速化し、それぞれ一定の進展を見せてきました。
 
米国が企図する3度目のオフセットとは、戦域に展開する有人/無人の巨大ネットワーク網にAIを組み入れることでシームレスで常続的な共通状況図(COP)を維持し、自動識別機能や最適なアセットによるターゲティングを可能にし、非物理的(Non-Kinetic)手段も含む最適な攻撃オプションを迅速かつ視覚的に指揮官に提示するなど、OODAループを可能な限り縮小して、敵を上回る速さでの行動を可能にする「意思決定上の優位」(Decision Dominance)を引き起こすことです。
 
今般、本報告書で無人システムにAI連接し自律化させる方針を打ち出したことは、米海軍としては、これまで人の手で管制されてきた無人システムから、より人の手から離れた自律型の無人システムを目指す「次なる段階へと進んだ」ことを意味します。

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今後、米軍がアジア太平洋地域で自律型無人アセットの割合を増やしていくことは、すなわち「前方でのISRや攻撃の能力を維持したまま、前方基地が仮想敵国からの第1撃を被るリスクを極限する戦略」とも受け取れるので、長期的には在日米軍の規模縮小や、それに伴う抑止力の低下が懸念されます。
 
間もなく公表される「世界的な態勢見直し」(Global Posture Review)において、どのような報告がなされるかに注目したいと思います。