2020年7月の💛映画『グッド・ワイフ』『追龍』『誰がハマーショルドを殺したか』、『悪人伝』もちらり。

2020年7月6日放送かわさきFM「岡村洋一のシネマストリート」“マリバールコーナー”で、7月公開の映画『グッド・ワイフ』『追龍』『誰がハマーショルドを殺したか』を紹介しました。

noteで非公開メモを販売します（注：2020年12月10日現在無料です）。後日公開される動画に先駆け。放送との違い探しも楽しんで下さい。

コロナ禍で映画館が営業自粛に追い込まれ、解除になったら公開目白押しで、紹介作品を選ぶのも大変。悩みに悩んで選んだ 3 本。

１．『グッド・ワイフ』

メキシコの上流階級奥様たちの昼ドラのようなマウンティング合戦が 1982年に起るメキシコ経済危機でどうなる？というお話。
監督のアレハンドラ・マルケス・アベヤは 1982 年生まれ。
主人公の奥様達の女王ソフィアを演じているのはメキシコの実力派女優イルセ・サラスは81 年生まれ。物語の頃に生まれた世代が、母の青春時代を描く、という感じか。

ゴージャスでバブリーな家、パーティーライフ、ファッション、ヘアメイク、音楽、グルメも楽しい。でも儚く虚しい。
監督は「35 年経った今もメキシコのセレブ女性はほとんど変わっていない」と言う。自立する女性よりも、裕福な男性の善き妻となることが人生の勝ち組という価値観は根強い。夫に依存し頼りなく助けが必要な存在でいることが「良い女」の条件とする考え。批判的に描いている。

メキシコに家族で赴任していた友人がおりまして、娘さんが「良家の子女」学校に通っていたそうなので、彼らにも見てもらって感想聞きたいなあなどと思いながら見ました。
また私もバブル青春世代ですので「我買う故に我あり」の狂った感覚があり、いろいろ思い出しました。（笑）

「メキシコ通貨ペソを守る番犬になる」と言ったけれど経済政策に失敗した元大統領が、民間人となってレストランに行くと、居合わせた客たちが「わんわん！」「キャンキャン！」と囃し立てる。
安倍首相が日本料理店に現れたら「アベノミクス！三本の矢だ！」と言ってみんなで爪楊枝を投げたい。

7月10日公開。

２．『追龍』

1960年代の香港警察と香港マフィアの関係を描いた、実話映画。
実在したマフィアのボス、ン・シックホーを『イップ・マン』のドニー・イェンが、香港警察のルイ・ロックを『インファナル・アフェア』のアンディ・ラウが演じています。2大スターの初共演、涎ものです。

ドニー・イェン、『イップ・マン』と顔が全然違う！と驚いた。さすがです。
今報じられる香港警察の暴力と、映画で描かれている時代との違いや繋がっているところなども興味深く見た。
警察とやくざが結託しようが敵対しようが、その上に当時はイギリス、今は中国がいて、「香港国家安全維持法」（香港国安法）が 6月30日に行われた中国全人代常務委員会で可決され、その日の午後11時をもって施行された。施行されるまでこの法律の全文は公開されなかった。
やられながらも香港人は強い！香港加油（ジャーヨウ）！と思いながら見た。

日本も同じ。ヤクザ、警察の上にアメリカがいる。そういう映画で超エンタメ作品、見たいなあ。

7月24日公開。

ちなみに警察とやくざの結託と言えば、7月17日公開の韓国映画『悪人伝』はマ・ドンソクがヤクザの組長で、暴れん坊刑事と組んで連続殺人犯を追うという物語映画で、面白い。
ですが、まあフィクションの世界。私はやはり実話派。なので今回は『追龍』の方を取り上げました。

３．『誰がハマーショルドを殺したか』

実録ものが好きですが、ドキュメンタリーは更に難しいことに挑戦している。面白い作品にするためのハードルはより高いのではないか。
そういう点で『誰がハマーショルドを殺したか』は、傑作の一つではないかと思う。

1961年9月18日。第2代国連事務総長ダグ・ハマーショルドは、アフリカのコンゴ動乱における停戦調停のため、時の権力者モイーズ・チョンベ大統領に会うべくチャーター機でコンゴの空港を飛び立った。
途中、ローデシア（現ザンビア）にて謎の墜落事故を起こし、ハマーショルドと15人の乗員は全員死亡。その後も詳しい調査が行われず、長らく原因不明の事故として扱われていた。

この、「冷戦期最大の謎のひとつ」（米ワシントン・ポスト紙）とされてきた未解決事件にデンマーク人ジャーナリストで監督のマッツ・ブリュガーと調査員のヨーラン・ビョークダールは7年の歳月を費やして調査。当時の関係者たちは皆、口をつぐみ追跡取材は行き詰まりを見せる。しかしついに、彼らはハマーショルドの暗殺事件にとどまらない、世界史をひっくり返すような驚愕の”ある暗殺計画”に遭遇した。

監督はデンマークで長年、ジャーナリストやテレビ司会者、タレント、ラジオ番組ディレクター、作家として多岐に渡り活躍しているドキュメンタリー映画作家マッツ・ブリュガー。

2017年に国連調査委員会の報告書で”ある文書“が発表された。これは単なる墜落事故ではなく、彼の命を狙った暗殺事件であったことを仄めかす資料の存在が明らかに。ブリュガー監督のリサーチを裏付けるものであった。
国連職員である父の代からハマーショルド事件を追い続け、それを引き継いだヨーラン・ビョークダールと共に、封印された謎を解明すべく重要人物を追って南アフリカ、コンゴ、ザンビア、イギリス、ロシア、スペインなど、アフリカ、ヨーロッパ各地を旅する。

自らを狂言回し的な役割に置き、観客を迷わせつつも真相に迫っていくサスペンスフルでコミカルな独特のリズム。ハマーショルドの飛行機事故を追って世界中でインタビューを敢行し、様々な証言を得ていく。そして、ついにアフリカの秘密組織サイマーの存在を探り当て、CIA、MI6などの関与まで明らかにしていく。

アパルトヘイト政策の時代に実際に行われていた悪夢のような事実を暴き出す。
衝撃的な内容、監督が面白く、大変魅力的な作品でした。

佐々木俊尚「衝撃的な事実を暴いたドキュメンタリーのようでもあるし、よくできたフィクションのようでもあるし、言葉巧みな詐欺師に壮大なホラ話を聞かされたようにも感じるし…。」
当時のイギリスと南アフリカによる黒人政策は、今のコロナを巡る世界の動きに繋がっていますね。

また、この映画がきっかけとなり事実の解明が進み、続編や実話物語映画もいろいろできそうで、今後の展開も楽しみです。

7月18日公開。