2022カタールW杯試合分析 大会7日目
グループD チュニジアvsオーストラリア
試合はチュニジアの3-4-3のBUに対してオーストラリアの4-4-2のミドルブロックでカウンターを狙うという構図。
オーストラリアはvs3バックBUの泣き所になるWBに対してのアプローチをSHの外切りでパスコースを遮断。
2FWは相手VOをカバーシャドウで前進を防ぐ。
オーストラリアとしては相手のボール保持をある程度許容しながら粘り強く戦うという狙いが見えた。
オーストラリアの守備ブロックに対してなかなか前進ができないチュニジアは、VOのスキリが3CBの両サイドに「幅を取れ」というようなジェスチャーをみせ、広げて空いたスペースにWBがハーフスペースに絞って出口をつくるという変化をみせた。
試合中に相手の狙いや状況を的確に把握し、変化させている姿に中堅国ながらレベルの高さを感じた。
しかし試合はオーストラリアが再三狙っていたカウンターからの左サイドのクロスから得点がうまれた。
先制点までのクロスは割と深い位置からのクロスであったが、チュニジアのDF陣に準備される時間ができるため、アーリークロスでFWのデュークに合わせた。
後半はゴールを狙いたいチュニジアがロングボールを多用するようにもなり、相手DFに弾かれたセカンドボールを回収し、二次攻撃に繋げるという形もみれた。
オーストラリアDFも空中戦に強いので、前半に比べてオープンな展開が増えた後半になったが、先制点を固く守り抜いたオーストラリアに軍配があがった。
90分間通してとても見応えのあるゲームであり、互いに世界では中堅国といわれるような国であるが、随所にグループ戦術のレベルの高さを見せる攻防が展開されていた。
MVPはオーストラリアのCBソウター。相手の攻撃の芽をことごとく潰していて、集中がきれなかった。
グループC ポーランドvsサウジアラビア
ポーランドはレバンドフスキを起点に攻撃を行いたいため、守備では4-4-1-1のような前残りにして、奪ったボールを繋げて得点を狙いたい。
サウジアラビアは4-3-3ベースにBUを試み、サイドからのクロスでチャンスを狙っている。
しかし、ポーランドDFやGK陣も空中戦に強いので、拮抗した試合展開になるかと予想。
サウジアラビアはアンカーのパスコースを狙っているポーランドのトップ下を認知すると、IHがアンカー脇まで降りてきて、中→外の循環でBU。
サウジアラビア2CBは、自分たちに対してはレバンドフスキはプレスにはいく素振りを見せないため、ドライブして打開ができるのだが、シンプルにサイドを変えることが多かった。
ポーランドの中盤の守備も粘り強いスライドを見せているが、サウジアラビアも一つ飛ばしのパスや1タッチを駆使し、打開を図る。
レバンドフスキは守備にはあまり参加せずとも、カウンターから得点を決めるため、試合巧者のポーランドが勝ち点3を得た。
内容だけでいえばサウジアラビアに分があったのだろうが、世界の舞台では90分後に勝つために何をするかというところで、ポーランドの戦略は見事であった。
もちろんMVPはレバンドフスキ。費用対効果がでかすぎる。
グループC フランスvsデンマーク
フランスはムバッペの左サイドをストロングにしながらも、そこを警戒させておいて、右サイドで前進し、デンベレからゴール前に迫るという守備側からすれば「ほなどうすればええねん!」というような布陣。
BUも左肩あがりで明らかにムバッペを活かしたいのが見て取れるが、非保持のアタックラインはハーフラインよりも低く、不思議に思って試合を観ていた。
しかし、その理由がわかった。
フランスは前線の選手のスピードを生かすために、わざと自陣に引き込んで(=相手の背後のスペースを大きくする)いるのだと。
逆に、デンマークは非保持に5-4-1のローブロックで相手の使いたいスペースを消し、ボールを持たせるという狙いがあった。
デンマークのBUは、3-4-2-1でWBが相手のSHを押し下げる立ち位置をとり、VOやCBが使用できるスペースを共有し、サイドからゴール前に迫っていた。
このように見れば、お互いに相手の出方を伺いながらのゲーム展開かと思われたが、ボールを持たされたデンマークがフランスのカウンターをくらい2-1で負けてしまった。
デンマークはサイドチェンジの際にスピードが上がらず、フランスのスライドが間に合っていたため、サイドチェンジからアーリークロスや1タッチでのクロスなど、相手が後ろ向きのまま対応せざるを得ない状況でゴール前に迫ると面白かったのかと思う。
MVPはジルー。ベテランの味をだしながら、得点はとっていないものの攻撃の起点になっていた。
グループD アルゼンチンvsメキシコ
偽9番のメッシに対して、メキシコはスライドを徹底し、5-3-2の3ラインもコンパクトにしながら、アルゼンチンボールを外循環にさせて引き分け狙い、あわよくばセットプレーで得点を狙うというような意図を感じた。
ただ、メキシコや前節引き分けなので、あくまでも失点せずに3試合目に繋げようとしているのか?
アルゼンチンは前半30分くらいからBUの形を3-5-2に変化させ、打開を図る。
スライドが速い相手に対しては1つ飛ばしのパス、1タッチ、3人目を使うなどしないと突破できないが、それら全ての定石を1プレーで跳ねのけたのが神の子メッシ。
「DFが引いている?来ないなら打てばいい」ということでローブロックの相手に対して、しっかりとミドルシュートで得点。
ゴールという目的を常に意識しているからこそ、筆者のように手段にとらわれていないのだと感じた。
失点したメキシコは前に出ざるを得ない状況なので、よりアルゼンチンはゲーム運びがやりやすくなった。
THIS IS MESSI。
以上。