2022カタールW杯試合分析 大会9日目
グループG カメルーンvsセルビア
一言でいえば”身体能力”。
カメルーンは筋骨隆々のセルビアとは対照的にバネというイメージで、BUも含めて柔らかい印象。
対してセルビアは左サイドのコスティッチからチャンスを作り出したい狙いがあり、セットプレーも武器になると考える。
両チームともセットプレーで得点をとり、セルビアは得点の時間帯が良かった。
が、失点のあとに失点を重ねるなど、試合全体を通して、流れをつかみ切れていない印象であった。
チャンスはあったものの、決めきることができず、試合を決定づけることができなかった。
セルビアのBUで2VOは相手3FWのギャップで受けており、カメルーンのIHにマークされていた時には、シャドーの選手に一つ飛ばしてあてて前進するという相手の出方によるボールの運び方に明確な違いがあった。
MVPはセルビアのVOグルイッチ。ボール受けて前に運びながら相手をはがし、相手が出てこないならミドルシュートを打つなど、組み立てだけに留まらず、攻撃面では多くのキーマンになっていた。
グループH 韓国vsガーナ
ガーナはベーシックな4-3-3のBU。
相手の前線からのプレスがあった場合はシンプルに数的同数のFWへとロングボールを供給する。
これが収まる身体能力がある(笑)
そのように前進→相手がそれを嫌がってブロックをつくったら、丁寧に前進などと相手のプレスに応じてボールの出口(運び方)を変えていた。
対して韓国は4-4-1-1のようなミドルブロックを形成し、2列目の1の部分でアンカーへのパスコースをケア。奪ってショートカウンターが狙いであり、左サイドのソンフンミンとキムジンスのコンビネーションから得点を狙いたい感じ。
実際に韓国のBUは左肩上がりでキムジンスにできるだけ高い位置でボールを供給させ、クロスやソンフンミンにポケットを取らせてPAに侵入するという流れがみられた。
このような戦術で韓国の得点は2得点とも左サイドからのクロスから生まれていたので、狙いとしては嵌っていた。
しかし、ミドルブロックを組んでいるときに、1stDFの距離が遠いように感じられ、「敢えて持たせているのかな?」と思ったが、2失点目のように相手を自由にさせてしまうことで生まれた隙をつかれているので、守備のオーガナイズは修正が必要である。
今大会のアフリカ勢はカメルーンしかり失点のあとに失点をしがち。
集中力が無いのか、打ち合いにできる自身があるからなのかはまだ見えてこないが、トータル90分間でゲームを考えたときにはGLでは危ない闘い方である。
今試合の5得点とも全てがサイドからのクロスで生み出されており、MVPはそのクロスをあげた全選手にしたい。
サッカーというスポーツの原理をついて、しっかりと得点につなげられることは、日本の強みにもなる。
ポゼッションやハイプレスが注目されがちな昨今であるが、そもそも得点を奪い合うスポーツという観点でみると、シンプルではあるが究極の答えでもある。
それに気づかせてくれたゲームでした。
グループG ブラジルvsスイス
ブラジルは両WGにドリブラーを配置しており、BUの際は左肩あがりの3枚にすることで、より前線で勝負をできるような戦術をとっている。
ゆっくりとボールを動かしながら相手の出方、BUの出口を探っており、3CB+アンカーがボールを失ったとしても全員対人能力に長けているので、すぐにボールを奪い返して自分たちの時間を生み出していた。
スイスは4-2-3-1のミドルブロックで相手にボール保持を許しながら、攻撃のチャンスをうかがっていた。
守備の陣形が非常にコンパクトになっていて、ブラジルに「もたせている」という意識がチーム全体で共有できていた。
なので、ボールを奪ったあとに無理に背後を狙うというよりかは、しっかりと自分たちの時間を生み出すためのボール保持もできていた。
その際にスイス両SBは低い位置に立ち、相手のWGを引き出し、空いたスペースをトップ下orVOが使う。
これにブラジルが対応してくれば、VOはSB-CB間に入り、SBを高い位置にとらせ、ローテーションを起こしてスペースを生み出していた。
スイスのVOジャカが非常にキーマンになっており、両チーム攻守ともにハイレベルな闘いで、ロースコアになることが予想された。
そんな均衡を破ったのが、カゼミロのミドル一本。
相手が出てこないなら、打つ。至極シンプルかつ非常にハイレベルなシュートであった。
文句なしのMVP。
グループH ポルトガルvsウルグアイ
ポルトガルは4-4-2の中盤ひし形でアンカーネベス。IHにカルバーリョ、Bシウバ、トップ下にBフェルナンデス。2FWにジョアンフェリックスにCR7。という布陣。
BUの際に中盤のIHがSB-CB間に移動しながら相手のマークを動かし、スペースをつくっている。相手スペースにはトップ下やFWの選手が入って壁になり、3人目を使って前進。このギャップに入って壁パスを使うことが上手かった。2歩進んで1歩下がるイメージ。
じわじわと相手を食い付かせることでサイドを空けてFWのナナメのランニングでサイド深い位置へ侵入。
そこからのクロスで1点目を演出した。
ウルグアイは5-3-2でブロックでボールを奪い、ロングボールで前線FWへ。タメを作って押し上げたいところだが、ポルトガルのボール保持が圧倒的すぎてなかなか奪えない状況。
ただブロックを作ることで相手FWの背後へのスペースを消すことには成功していた。
ただボールが奪えない時間帯が続くことでフラストレーションがたまったのか、ファウルが多くなりカードも増えていた。
セットプレーが頼みの綱のような感じ。
ポルトガルのBUは中盤より前で多くの三角形を創り出しているため、保持がしやすく、また相手も捕まえにくいという状況であった。ボールを動かすテンポも早く、無駄に持ちすぎるというようなシーンもなかった。
MVPはカルバーリョ。ポルトガルのボール循環の際OFFの動きで他の選手をフリーにすることが多く。陰の立役者といえるだろう。
あとABEMAの右上テロップにあった「南米の狂犬」ってなんなん(笑)