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南のはての島、波照間島に行ってきた話

日本最南端の有人島。はてのうるま、波照間島。

いつか行ってみたいと長年望んでいたその島に、夫と二人で行ってきた。あいにくお天気には恵まれなかったけれど、とっても素敵な時間を過ごすことができました!

波照間島への道

波照間島へ行く手段は二つ。週に3便しかないけれどひとっ飛びの飛行機に乗るか、または日に2便あるけれど船酔い必至の船に乗るか。いずれも石垣島から便が出ている。

今回私たちは、スケジュール面と金銭面を考慮して船旅を選んだ。とは言え、波照間島は外海にあるため波がハチャメチャに荒いと聞いており、欠航することも頻繁にあるし、出航できたとしても船酔い必至との情報を得ていた。大きなフェリーでさえ船酔いしてしまう私にとって、試練でしかない。しかも乗船当日の朝には、テレビで「海上は波が荒れてるよ!警報レベル!」の天気予報を見て絶望的な気持ちになったりもした。でも憧れの波照間島に行くためと、万全の対策で船旅に臨んだ。

船酔い対策については、別で記事を書きました。よかったらこちらもどうぞ。

自分なりの対策が功を奏した結果、90分の乗船を経てもノーダメージで無事に波照間島に上陸することができました。アネロン先輩(酔い止め薬)、マジ感謝…。

旅客とともに、生活物資も積載され運ばれていた。

宿泊施設「ホテルオーシャンズ」

着いたらすぐに、宿泊先のスタッフさんが車で港まで迎えに来てくださっていた。車に乗って5分程度で、島唯一のホテルである「ホテルオーシャンズ」さんへ。

ホテル、と謳ってはいるものの、どちらかと言うとペンションに近い雰囲気のお宿。あたたかい趣きのある内装や、変に飾らない合宿所のような食堂は、とても安心できて居心地がよかった。チェックイン時点で朝の10時だったけれど、「もうお部屋は自由に使っていいですよ」とのこと。ありがてぇ。

外の天気も不安定だったので、お言葉に甘えて早速部屋に荷物を放り込み、そしてそのまま昼まで爆睡。他にも宿泊者がいるはずなんだけれど、みんなお互いに配慮し合っている感じで、静かに過ごしている。扉の開け閉めもそっとだし、廊下を歩く足音も微かなもの。それがまた心地よくて、とても落ち着けた。

沖縄そばの店「ぶどぅまれー」

昼過ぎくらいにむくりと起き上がり、お腹がすいたね、とホテルのすぐ近くにある沖縄そばの店へ。グーグルマップで見て一番近いお店に行ったけど、知らなければ絶対に気付かないような外観のお店だった。

民家の外階段を上ったところにある。

おじいちゃんとおばあちゃんが二人でやってるお店で、唯一のランチメニューであるソーキそばともちきびおにぎりを注文。外のテラスで待っている間も、どこかに設置されたラジカセからは、沖縄ことばのローカルラジオ番組と軽やかな三線の音色が流れてくる。この日は少し風が強く、さわさわとフクギの葉擦れの音も聞こえてくる。あぁ、自分は今、沖縄にいるんだなぁ、と改めて思った。

優しい昆布だしに、コシのあるストレート麺。八重山そばに当たるのかな?柔らかいソーキ(いわゆるスペアリブ)とテビチ(豚足)はしっかりとした味付けで、口の中でホロホロと解けた。めちゃくちゃ美味しかった〜!!!また、一緒に頼んだもちきびおにぎりが、もちっとした弾力で最高に私が好きなやつだった。あまりに美味しかったので、この後、島の売店で自分用のお土産に「もちきび」を買うことに。

島一周道路

昼食の後は、ホテルから借りたバイクで島の中を巡ることに。楕円形をしている波照間島には、島をぐるりと囲むように海沿いに「島一周道路」なるものが整備されている。観光地としての見どころもだいたいその道路沿いにあるので、バイクや自転車で島を一周すれば十分に楽しめる。

バイクに乗って走り始めても、驚いたことに誰とも遭遇しない。道の左右に広がるのは、さとうきび畑やこんもりとした茂みばかり。たまにヤギが放牧された原っぱが広がっている。道路に車線表示や速度表示はなく、信号機もなく、どちらかと言えば農道のような様相を呈している道だった。島の人たちの生活用道路を使わせてもらっているんだなぁと改めて思った。

ニシ浜

お天気がよかったら、いわゆる「ハテルマブルー」と言われる美しい青い海と白い砂浜が見られるらしい。あいにく、私たちが行った日は小雨がパラつく曇天だったのだけど、逆に言えば、これだけ天気が悪いのにこのエメラルドブルーて!!と、ニシ浜のポテンシャルの高さにワクワクした。晴れた日にまた来る、という再訪の理由ができた。

日本最南端平和の碑

碑は、沖縄県八重山郡竹富町のものと国のものと2種類あった。
高さ30mくらいはありそうな岩壁と打ち付ける波。

実際の最南端は碑がある場所ではないので、ごつごつした岩場を歩いて岬まで行った。岬から見える入り江に打ち付ける波が荒々しくて、「ひぇぇぇ…」と腰がひけた。また、岬から水平線を見渡し、「ここから先の日本領海内に人は住んでいないのか…」と当たり前のことをしみじみと噛み締めたりするなどした。

波照間空港

私たちが行った時は建物の扉が閉まっていた。多分、離着陸がある時だけ開けるのだろう。今まで見たことがある空港の中でも、建物・滑走路ともに最小。でも有事の際はここが防衛拠点の一つになるだろうから、島の人にとっても、そして日本という国にとっても、非常に大切な空港なのだろうなと思った。

売店「名石共同売店」

島をひと通り回ってから、最後は集落内の売店へ。コンビニはもちろんのこと、スーパーもない波照間島では、それぞれの集落にある共同売店ですべてを賄う。私たちも、夜に部屋で飲むものが欲しくて行ってみた。

私たち以外のお客さんはみんな、お店の人と顔見知りらしい。雑談を交わしながら買い物をしている。いいなぁ、あたたかいなぁ、と思いながら、自分は沖縄でしか飲むことのできないゲンキ乳業のコーヒーを購入。さっき食べたおにぎりに入っていた「もちきび」も売っていたので、ここで買ってみた。

黒糖ショコラは不思議な食感で面白い。もっと買えばよかった。
夫が買ったゲンキ乳業のサンピン茶ミルクティーが、めちゃくちゃ美味しかった!
買った時に撮り忘れていたので、使いかけの写真ですが…。白米と混ぜて炊く。

売店のこともそうだけれど、離島において好きな時に好きなものが手に入るとは限らないという制約は当然ある。物資もしかり、電気や水、ガスもそうだと思う。船便が欠航になると、それだけで予定していた食糧が届かないこともあると思う。そういう、地元の人が生活するうえでもリソースに限りがある状況で、観光業が島の産業になっているとはいえ、私たち観光客を迎え入れてくれることは本当にありがたいことだな、と改めて感じた。

居酒屋「あがん」

波照間島では飲食店も数や座席数が限られており、毎日営業しているわけじゃない。宿泊プランに夕食がついていない場合、食いはぐれることのないよう、早めにお店に入るが吉。私たちは、集落の中心部にある居酒屋「あがん」さんへ。

集落中心部とは言え、あたりは住宅ばかりなので真っ暗。

店内には、ロウニンアジ(いわゆるGT)や大型サヨリなどの魚拓がいくつか飾ってあり、釣り好きの人はより楽しいだろうなと思った。

ご飯はどれも美味しいし、鰹出汁のもずくとか、豚の油味噌とか、アーサ(アオサ)のあんかけとか、他で食べたことのないメニューもあって面白かった。紫芋のポテトサラダが材料不足で食べられなかったので、また一つ、再訪の理由ができた。

実はこのお店で作られている黒蜜が、めちゃくちゃ美味しくて。以前から何度か通販で購入させていただいていたものを、今回ようやく店舗で手にすることができて嬉しかった。バニラアイスやわらび餅にとっても合うのです。

参考に黒蜜の通販ページのURLを貼っておきますが、今は出荷停止中らしく現地で購入してね、とのことでした。いつか再開してたくさんの人に届くといいなぁ。

居心地がよかった理由

翌朝はホテルの朝食をいただいた。食堂に集まった宿泊客を改めて見てみると、みんな、どこかで見た人ばかりだった。たとえば、行きの船の中で。たとえば、ソーキそばのお店で。たとえば、ニシ浜で。たとえば、居酒屋あがんで。きっと、お互い「あっ、あの人どこかで会ったな」と思いながらも、それに気付かぬふりをして静かに箸を進めていた。

波照間島にある多くの民宿では、宿泊客同士が「ゆんたく(おしゃべり)」しながらお酒を飲むのが醍醐味なところもあるらしいけれど、知らない人と賑やかに話すのが苦手な自分には、そういう宿は少しハードルが高い。今回泊まった「ホテルオーシャンズ」さんでは、宿泊客もスタッフさんも、互いに干渉し合わない・他の宿泊客の妨げになるようなことはしない、という配慮をし合っている感じがとても居心地よかった。そのおかげか、自分のペースで波照間島の魅力を楽しむことができた。

今回の旅では、天候の影響で、当初やりたかったメインイベント(ニシ浜でお昼寝・南十字星を見る)はちっとも達成できなかった。でも、島の静かな時間に身をひたし、そこで生活する人たちに思いを致し、限られた生活リソースの中で観光客を迎え入れてくれることに改めて感謝することができた。

この記事を書きながら、波照間島での時間を改めて思い出すことができた。そうやって思い出している時間さえもが心地よくて。本当に、楽しい旅だったなぁと実感した。いつかまた、絶対に行きたいと強く思った。

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