抵当権の抹消がある場合の注意点
抵当権(根抵当権も含む)の抹消がある場合には、注意しなければならないことがあります。これは相続登記に伴う抵当権の抹消に限られません。
不動産の売買による所有権移転登記の際に一緒に実施する抵当権の抹消にも該当します。
抵当権者の代表者に変更があるとき
抵当権の抹消登記を申請する際は、現在の抵当権者の代表者が弁済証書(または解除証書)に記載の代表者と同じかどうかをチェックする必要があります。
住宅ローンを完済したものの抵当権の抹消を放置している場合、弁済証書等に記載の抵当権者だった銀行の代表者が変更になっているケースがあります。
この場合、登記申請書では以下の対応を行います。
抵当権の抹消登記の「申請時点の代表者」の氏名を記載する
「登記義務者の代表者の代表権限は消滅しているが、代表権限を有していた時期は平成○○年〇月○○日から平成○○年〇月○○日である。」と明記する
抵当権者の会社法人等番号を明記する(法人の会社法人等番号は、常に申請書に記載する(記載しない場合は資格証明書の添付が必要となる))
抵当権の抹消書類を紛失したとき
住宅ローンを完済すると、ひと月程したら抵当権者から抵当権の抹消の際に使用する書類(弁済証書(または解除証書)、抹消登記申請にかかる委任状、抵当権者の権利証または登記識別情報)が設定者(不動産の所有者)の自宅に到着します。
これらの書類は抵当権の抹消登記の申請に必要となる書類ですが、登記申請までに紛失することもしばしば発生します。
紛失してしまった場合は、抵当権者に電話して再発行の依頼をします。すると抹消書類を再度送付してくれます。
しかし、当初提供された抹消書類とは異なる点があります。抹消書類が再発行となった場合には、以下の点に注意が必要となります。
権利証・登記識別情報を紛失した場合には再発行はされない取扱の為、抹消書類の再発行の場合は、権利証等の書類は同封されない。
権利証・登記識別情報がない場合の抵当権の抹消登記の申請に必要な委任状に押印された抵当権者の印鑑は実印でなければならない。恐らく、再発行書類を送付してくれた際に、委任状に押印した印鑑証明書のコピーが同封されていることが多いが、押印された印が実印であるかどうかは抵当権者に電話して確認する。
なお、権利証・登記識別情報紛失の場合、法務局から抵当権者宛に「抵当権の抹消の申請がなされているか問題が無いか?」という問い合わせ(事前通知)がハガキでなされ、抵当権者は2週間以内にハガキで返信しないと登記申請は通過しない取扱です。抵当権者の本店が東京だけれども、対象不動産の事務を行うのは大阪だった場合、ハガキは東京の本店所在地へ送付されるけれども、東京の担当者は誰もこの抹消登記の申請について認知していないという事態があり得ます。その場合、ハガキが2週間以内に法務局へ返信されないという事態が発生し、登記の申請は却下となる場合があります。そのような事態にならないよう、予め抵当権者の取扱部署とコンタクトしておき、法務局からの事前通知への応答もお願いしておくと手続がスムーズに進行します。