短い楽しみがいっぱいあると、毎日うれしい。
この頃、短編小説を並行して読むのが楽しくてはまっています。
職場に置いているのは
『百年と一日』柴崎友香
日々のなんでもないような出来事を綴った、ちいさな物語が34篇。
それぞれが短い話にも関わらず、作中で大きな時間経過が描かれているのが特徴です。
すごいものだと、1行ほどの語りで数十年・数百年の時間が跳躍します。
なんだか土地の歴史や登場人物のファミリーヒストリーを垣間見ている気分で、短い時間で壮大な感傷に浸れます。
仕事のちょっとしたすき間時間に、ふっと意識を遠くまで巡らせるのが心地よい、お気に入りです。
家に帰って、作業机には
『汚れた手をそこで拭かない』芦沢央
「人間コワイ」系の短編エピソードが5篇。
ちょっと目が泳ぐくらいのちいさなウソから、音もなく始まる底なしのドツボ。
誰にでも起こりそうなその様が恐ろしく、でも続きが知りたくもありーーー
パソコン作業やギター練習の合間に手に取っては、自分を含めて人間って本当に厄介な生き物だなあ、と噛み締めています。
今年読んだ『火のないところに煙は』が最高に面白い(そして怖い)作品だったので、少しずつ芦沢央さんの本を読み進めている最中です。
枕元には
『しっぽ食堂の土鍋ごはん 明日の歌とふるさとポタージュ』高橋由太
こちらは短編集ではなく群像劇。
かわいい看板にゃんこ・しっぽくんがいる土鍋料理のお店「しっぽ食堂」を舞台に、さまざまな悩みを抱えたお客さんたちがやってくる物語です。
描かれる料理がどれも本当においしそうで、読んだ後にどうしても食べたくなって、次の日にシチューを作ってしまったくらいです。
夜、ふとんで眠る前に読んで、あったかい気持ちになってごろごろします。
短編小説は、ひと区切りごとに「読みきった!」という充実感・達成感が味わえるのが魅力だと思います。
忙しさのすき間に、読書好きの欲求をねじ込むのにはもってこいです。
次はどんな本に出会えるかなあと期待しながら、また近いうちに、本屋さんをうろうろしてみようと思います。