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ソーシャルビジネスとは?【共有編】創出された利益をみんなで共有する

さて、ここ数回、ソーシャルビジネスとは何か?について、ミャンマーの貧困農家さんの具体例をとりながら説明してきていますが、今回でいよいよ最終回です。

前々回は、どうやって困っている人を巻き込むのか?(包摂編)というテーマで、彼らができることの中で最大限バリューが出せることは何なのかを突き詰め、導き出していくことが欠かせないという話をしました。

そして前回は、それぞれが持てる力を出し、助け合い協力してビジネスを創り上げる(協創)、つまり、困っている人とどうやってビジネスを協力して創るか?について引き続きミャンマーの農家さんを例にとり、説明していきました。

最終回の今回は、創出された利益を、困っている人を含む、ビジネスにかかわる人みんなで共有すること(共有)について説明していきたいと思います。

1,包摂(巻き込む):社会課題に直面し、困っている人々の力を価値に転換することでビジネスのバリューチェーンに組み込む
↑前回の話
2,協創(協力して創る):それぞれが持てる力を出し、助け合い協力してビジネスを創り上げる
3,共有(分かち合う):創出された利益を関係者全員で共有する
↑今回の話はココ!

ここでいう「利益」というのは、単なるお金(プロフィット)だけでなく、信頼関係や繋がり、知識・ノウハウなど(ベネフィット)も含まれます。

まずはお金の話から。

農家さんが頑張ってハーブを試行錯誤しながらつくり、私たちも新たなマーケットを切り拓きました。

お互いにそれぞれができることで、新たな価値を顧客に届けることができました。

なので、顧客に喜んでもらったことで出た利益は、彼らが十分に生活でき、私たちも十分に生活できるように分配していかなければいけません。

彼らの生活は貧困ゆえにいろいろなことができておらず、最低限必要な生活水準さえ満たせていない状態でした。

子どもを学校に行かせられない。
病気になっても病院に行けない。
ちゃんとした家に住めない。

彼らが今どんな状況に置かれているのか、丁寧にヒアリングする

そこでまず私たちが最初に決めたのは、「彼らが安心して生活していくための生活費+生産コスト」から逆算してハーブの買い取り単価を決めることでした。

不安定かつ年々下落していっていた市場取引による「マーケットプライス(市場価格)」に依存していることが彼らの赤字経営につながっていため、生活費や生産コストを担保できる買取価格「ファーマーズプライス」を採用しました。

資本力がある事業者が、大量生産によって価格を下げていった結果、私たちの生活は、さまざまなものを手に入れることができ、豊かになりました。

その一方で、資本力の無い小規模な事業者は、どんどん生活が苦しくなっていく

世界中、あらゆる業種で生じている人類の課題です。

資本力のある事業者が、生活ができなくなった人々を雇用していくだけの余力があれば話は別ですが、実際は、そうではありません。

この社会構造を変えていくためには、そして、小規模農家さんたちの状況を打開するためには、既存のあり方を疑い、常識を根底から見直す必要があることが多々あります。


もう一つ決めたのは「買い取り保証」です。

栽培前に、農家さんたちが生産した量は必ず買い取る、と約束しました。

もちろん、大きなリスクを孕んでいますが、市場を切り開くのは私たちの役割。
何が何でも、農家さんの生活を安定させるための覚悟の表れです。

これにより、日々安心して農業に打ち込み、農家さんの生活は安定、人として必要な生活水準を満たす生活ができるようになりました。

この話を聞くと、「農家さんたちを囲い込むための戦略ではないのか?」と思われる方もいるかもしれませんが、決してそうではありません。

私たちよりも高い価格で買い取ってくれる事業者が現れて、彼らの生活がより良くなるなら、私たちはそれを止めることはしません。

むしろ、そうならないように、私たちも継続して新たな市場を創出し続ける。
なれ合いではなく、お互いプロとして、フラットで程よい緊張感のある関係性を維持しています。

もうひとつ、共有の例として灌漑の話をしていきたいと思います。

リンレイ村では、タナペの栽培を続ける過程で木を伐採したせいで、地下水が枯渇してしまっていました。


木がほとんど伐採されてない状態

水不足は農業の天敵。自給自足用のお米や野菜の収穫量は年々減少しており、ハーブも水不足は栽培が難しくなります。

ただ、彼らには農地に水を引いてくる(灌漑する)お金がありませんでした。

そこで、私たちがまず資金を出して、灌漑工事することにしました

灌漑をしている様子

「それって共有というか、ハーブ栽培のためのただの初期投資ではないの?」という疑問を持つ方もいそうです。

もちろん、水を引いてこないことにはハーブは栽培できないので、そういう意味では初期投資という捉え方もできるでしょう。

ただ、灌漑は私たちがお金を出したからといって使用料を課金せず、農家さんたちに運営管理してもらうことにしています。

水は、農家さんたちにとっての生命線。誰かのものにするのではなくて、分け合うべきものだという考えからです。

大切な共有資本を独占するのではなく、みんなで少しずつ負担しながら維持管理することが、仲間たちや自然との共生を考える上で非常に重要です。

もちろん水はハーブ栽培以外にも自由に使えるようにしているので、従来のお米や野菜の栽培にも活用でき、生活全体の向上に貢献しています。

彼らの暮らしをより良いものにしたい。

そして、この村の他にも苦しい生活をしている人がいれば、その状況を共に乗り越え、未来への希望をつくりたい。


そんな経営思想から始まっているビジネスなので、利益で投資回収をしていこうというよりは、余剰利益は他の社会課題を解決していくために使っていこうという考えなのです。

以上、二つの例をあげながら、今回は「共有」について説明していきました。

ところで、みなさん、このあたりでうっすらと思われているのではないでしょうか…?

わざわざミャンマーの僻地で、ビジネスとしては効率が悪い小規模農家さんに生産を頼み、市場価格よりも高い値段で買って、本当にビジネスとして成り立つのか?と。

次回は「社会課題を解決しながら儲けられるの?」というテーマについてお話していきたいと思います!

POD CAST『水曜日のカンパニオ | ソーシャルビジネスって最高に面白い!』ではMCを担当しています

POD CAST『ボーダレス・ラジオ | おもしろいぞ、ソーシャルビジネス』では、ボーダレスの素顔に迫っています

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