【エッセイ】 #2 デンマークの古着屋で。
人生で1番大事なポスターの話。
Copenhagenでは1日自転車を借りてブラブラして、良い感じの古着屋?があったので入ってみた。
すると、内装は北欧らしくシンプルに洗練され、80年代くらのレコードやヘビメタのコンサートの張り紙等興味深い物がズラリ。
雰囲気は北欧らしさのホッコリとちょっとスパイスの効いたロックが一緒にあるような感じで、入って間も無くその店の虜になった。
そんな店の中央には大きな加工されてないような木で作られたテーブルがあり、
その上に何枚かの大きな紙、ポスターか。と思ったが惹かれたのはそのデザイン。
北欧らしいような、絶対には日本では描かれないあの特徴的な感じだ。
自分はあの美形な北欧の人々が自分たちをああやって一本の線で全く美しさを主張することない形で、芸術的に描くのがとても好きだ。
その絵には皆確かに女性が描かれていてそして向こうの文字が大きく書かれている。
ちなみに色は赤やオレンジが使われていて何かを訴えているのは、全く読めない文字越しでも伝わる。
これは何だろうか。と思っていると、
店の奥からおばあさんがでてきた。
おばあさんといっても、きている服はまるでパルプフィクションにでてくる女優のようにエナメルのミニスカを履いて素足を出し、ハイヒールを履いている。
これにはちょっとたじろいだが、
おそらく店の中では自分と彼女の2人だけなので話しかけることにした。
彼女は、普通のおばあちゃんではない、見た目からもわかるように自分に誇りがあるとでも言おうか、とにかくその身のこなしに威厳を感じた。
これは何?と聞いてみるとおばあちゃんは
「ただのポスターじゃないわよ。」
と冷たい口調でいった。
じゃあ何のポスターなの?と聞くと
「これはfeministのプロパガンダなの、わかる?」
とさらに語気を強めて言われた。
なるほど、とその時ポスターから感じられる強いエネルギーとそのおばあちゃんの威厳の意味を理解した。
「あなた買うの?買わないでしょう。」というようなニュアンスでおばあちゃんはいった。feministなんて買ったらあんた変って思われるわよという感じだったと思う。
そこで「いや、買うよ。feministじゃないけど」といった。
するとおばあちゃんは「そう、あなたどこから来たの?」
と聞き、「JAPANだよ」と答えると
「あなたがそれを日本に持ってくことに意味があると思うわ」と、いった。その時初めておばあちゃんの笑顔をみた。ちょっとニヒルなかんじがなおさら印象的だった。
「うん、この赤のやつデザインが気に入ったよ。もちろんこの意味も忘れないけど。ちゃんと日本に帰ったらみんなに伝えるよ。」と僕が言うと
「いいわね、女性は強いのよ。忘れないで」と言った。
「うん、忘れない」といって会計を済ませて店をでる間際もう一度おばあちゃんをみると、「サヨナラ」といってくれた。
その時おばあちゃんと一緒に写真を撮ろうと考えたが、それはやめた。きっとおばあちゃんは写真が嫌いだとなんとなく思った。
そして「ありがとう、またね!」といって店を後にした。
この数分の店でのやり取りは自分はずっと忘れないと思う。
このポスターを見る度にあのおばあちゃんが頭に浮かんで、そして今日おばあちゃんとの約束としてこの話を書き起こしてみた。
今このポスターは僕のベッドの上に飾ってある。