【ホラー語り】 #1 ホラーが好きということ。
ホラーが好き。
この言葉で共感を得たことは人生で数少ない。
堂々と人前で言えたことではなかった。自分はそんな人生だった。
ホラーが好き。それを悪趣味だという人もいた。別に間違っていないと思う。良い趣味とは何かもよくわからないけど。
それでもホラーが好きだ。
きっかけは親が契約していたWOWWOW。
内緒でこっそり見ていたのはいかがわしい映画ではなく、
オーメンだった。思春期の夜、深夜2時過ぎ。
荘厳なBGMに包まれ、氷のような目をした少年を食い入るように観ていた。
人はそんな自分を悪趣味なやつだと、当時の自分を見た人がいたらそう呼んでいただろう。うっすらだけどそんな自分をわかっていた、だから独りぼっちの世界でホラーを見続けた。
時は過ぎ、令和。僕はホラー好きとして、
ホラーが好きという文章を書いている。良い時代だ。
14歳の自分には想像できなかった時代。ブログでは好きなホラー映画を好きなだけ羅列できる。SNSでホラー映画の感想をシェアできる。
良い時代だ。
そんな時代だと、ふと瞬間に口にしてしまう。
「何が趣味なんですか?」
「ホラーです」
「ホラーの何が良いんですか?」
「恐怖という使い古されたような感情を、あの手この手で表現しようとする、人間への挑戦のような気がするからです」
こんな自分はきっと悪趣味だ。
そう思いながら僕は今日もホラーが好きで、これからもホラーを見続ける。
ホラーが好きということは自分が好きということだった。
12年越しの気づき。良い時代になったものだ。