鹿を捌く
腕がだるい。痛い。
慣れない作業に緊張し、肩も腕も凝ってしまった。
とうとう鹿の解体をしたのだ。
数か月前から、ひょんなことから鹿業に携わりはじめた。
「鹿業」とはわたしが勝手に心の中で呼んでいるだけなのだけど、狩猟や駆除で獲られた鹿を、お肉や料理として消費者に届けるまでの仕事のことを「鹿業」と呼んでいる。
2年前に鶏の解体はしたことがあった。これは、殺すところから。
自分の手の中で息が絶えていくことに動揺した。
「肉を食べる」ことについて、深く考えた日だった。
2年ぶりに動物の解体を行うことになった。既に鶏の解体をしたときの気持ちは薄れつつあった。今回は鶏でもなく、4本脚の動物だ。解体作業自体は見慣れつつあった。自分の手で行うのは初めてだ。
ハンターによって獲られ、息の根は止められ、内臓も腹から取り出されてはいた。
皮を剥ぎ、大まかに、前足・ひれ・後ろ足に切り分けていく。その後はさらに、部位ごとに精肉にしていく。
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