最近の記事

さけるチーズ

さけるチーズは、1本をさらに4等分して食べるものだと思っていた。 30歳入ってから、ようやく、もう大人なのだから、ひとりで1本そのまま食べたっていいんだ、ということに気が付いた。 なんたる幸せだろう。 母は、わたしが中学生になるくらいまでは、年に数回、イベントごとにオードブルを作ってくれていた。誕生日、桃の節句、子どもの日、クリスマスやなんかに。特に小さいころは、ケーキも手作りしていて、生クリームのおこぼれを、キッチンの入り口の10センチほどの段差にちょこんと座って、なめて

    • 元気でいてほしい

      入籍をした。 同居してから1年半ほど経っていたので、わたしの名字が変わるくらいで、これと言った変化はない。 戸籍が出来るまで一週間ほどかかるらしいので、煩わしくなかなか終わりの見えない「名字変更作業」はまだ見ないことにしている(いいのか)。 20代半ばから30代前半まで、長いこと「異性とお付き合いしたいのに、にっちもさっちも何にもうまくいかない時期」があった。 そのそばで、多くの友人たちが結婚し、妊娠・出産し、家庭を築いていった。こちとら、母は亡くなり、父は倒れ、泣きそうな

      • 伝えるには遅く

        「広島の兄」と親しんでいた方が亡くなった。43歳だった。あまりにも早く、いつでも会えると思っていたのが悔やまれる。 広島の御調町(みつぎちょう)という、今は尾道市に編入された町で生まれて、紆余曲折を経て、御調町に帰り、デザインや映像アーティストの仕事なんかをしつつ、昔の医院を買い取って、喫茶や奥さんのアロマ商品を置いたりする施設にリノベーションして、町を使って遊んでいるように見えた。御調町の町のマークを復興させて、おいしいどら焼き屋さんの包装紙を作ったりしていた。 201

        • 虫さん、こんにちは

          人口2,000人を切る町へ越してきて3か月が経った。 いまだにネットは開通されない。今月末の予定で、心待ちにしている。 さてさて、自然が極めて近いのだから(昨夜も落っこちてきそうな星空)、 虫との生活は必須なのだが、自分があまり想像できていなかったことに気づく。 4月は春を喜ぶカメムシとテントウムシが家の中にいた。 幸せなことに、長らくカメムシの香りがわからずにいたが、30代も半ばになり、カメムシの匂いをキャッチすることとなった。 掃除機で吸ってしまったときには最悪である。

        さけるチーズ

          ヒマラヤに触れる

          北海道は喜茂別町に引っ越してきて2か月。書きたいことはたくさんあるはずなのだけど、プライベートすぎる内容だったり、まとまらない考え事や発見だったりして、なかなか書けずにいる。 今日は喜茂別で触れたネパール・ヒマラヤのお話。 先日、喜茂別にGHTprojectのお二人がやってきた。 日中は尻別岳を登ったようだけど、わたしは仕事で参加できず、夜の報告会のみの参加。 こちらに来てから、いろんなものへのリーチが遠くなったので、自分からリーチしないようなものでも、近くに来たものはキ

          ヒマラヤに触れる

          農業始動

          北海道の春。先日、農作業をしていたらウグイスが啼いた。 農園に通年勤務していたら2月くらいから種まきをして、3月くらいから冬前に外したビニールをハウスにかける作業を始めるところ、今年は冬の間、農園に勤務していなかったので、わたしはゆっくりの始動。 今月中旬から、町内の近所(歩いて通えるくらい)の農園で週に3日働くことになり、始まる前に身体を慣らしておこうと思い、はじめてアプリ「デイワーク」を利用した。 一日単位で農業の仕事を探すことができる。タイミーやシェアフルの農業版と言え

          出会い続ける旅路で

          まだまだ片付かない、引っ越したてのお家から。 昨日も1.5往復の末、車で2,30分の隣町の温泉へ行く。アチアチのお湯に、いいだけ身体をのびのび伸ばして疲れをとってきた。 今日は今日で、役場に行き、さまざまな申請。 「お休み中です」と書いてはあるが、古本webショップに注文があり、奇跡的に段ボールの中からご所望の商品発掘。しかし、ネットがないと発送作業もできない。我が家はまだまだネットが開通しそうになく、泣く泣く町内のシェアスペースへ。 町内にwifi使えるシェアスペースが

          出会い続ける旅路で

          わたしたちの引っ越し

          わたしたちの引っ越しは、軽トラと軽自動車で、最低4往復。もっとかかるだろう。まあ、ボチボチ、おいおい。片道90分。運転にもだいぶ慣れた。 北海道の、海沿いの町から山の麓の町へ、お引っ越し。 お日柄もよく、と言いたいところがあいにく前日夕方からの雨。 でも予報通り午後から晴れて、山も姿を現してくれた。 晴れたので、一番運びたかった大物家電を運び出すことができた。その軽トラの後ろ姿はなかなかシュールだ。 大荷物を乗せた軽トラは、アクセルをフルで踏んでもスピードが出ないようで、の

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          昨年、長谷寺にて

          去年の12月、鎌倉にある長谷寺に行った。 鎌倉に行くのは三度目くらいだったのだが、長谷寺に行ったのは初めてだったかもしれない。友人がいなければ、伺うこともなかったかもしれない。 北海道にいると、なかなか寺社仏閣への興味は沸かないような気がする。歴史が遠いのだ。でも、長谷寺で「本尊十一面観世音菩薩立像」と対面して、ひどく感激した。見上げるほどの背の高さ、くすみがかった金色に輝くその像。非常に神々しく、美しかった。30代になったからこそ、染み入ったのかもしれない。高校生だったら「

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          北海道の農業~冬編

          北海道(ひとまず石狩、後志地方周辺)ではだいたい、11月、積雪までがシーズンの一区切りとなる。雪が先か、農家が先か、な日々となる。 まず、根菜や豆類を栽培している場合はその収穫に追われる。根菜は収穫後、洗いの作業が入ることもあるので、水道の凍結との闘いもある。豆の場合は、機械の有無にもよるが、脱穀作業もあるので、やはり天候との闘い。 それから施設栽培がある農家では、ハウスビニールを下す作業がある。 北海道では雪の重みにより、冬にはハウス倒壊の恐れがある。そのため、毎シーズン、

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          鹿を捌く

          腕がだるい。痛い。 慣れない作業に緊張し、肩も腕も凝ってしまった。 とうとう鹿の解体をしたのだ。 数か月前から、ひょんなことから鹿業に携わりはじめた。 「鹿業」とはわたしが勝手に心の中で呼んでいるだけなのだけど、狩猟や駆除で獲られた鹿を、お肉や料理として消費者に届けるまでの仕事のことを「鹿業」と呼んでいる。 2年前に鶏の解体はしたことがあった。これは、殺すところから。 自分の手の中で息が絶えていくことに動揺した。 「肉を食べる」ことについて、深く考えた日だった。 2年ぶり

          ¥100

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          食べものが生まれる現場

          わたしは今、農業と鹿肉業(?)に携わり、自分では店舗を持たない古書店を営んでいる。 農業では、 収穫 →選別 →調整 →出荷 鹿肉業も似ていて、 狩る →捌く →調整? →出荷 となる。 農業では選別や出荷の時点で計量が入り、 鹿肉業では出荷の前に計量を行う。 わたしはこの、計量の作業なのか、出荷前の作業なのかがたぶんすきで、売られるものになっていく過程に興味があるのだと思う。 パン屋の一日のYouTubeとか見ているとすごくたのしい。 大きなパン生地のかたまりを、美し

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          アイデンティティ

          先日、職場の畑に、アメリカの大学生がひとり、ボランティアにやってきた。 ご両親はラオスの方で、タイ料理のレストランを経営。ご両親が高校生のときに渡米して開業したという。その後、そのひとは生まれた。 ラオスのことは、今までさほど考えたことがなかった。そういえば村上春樹さんが「ラオス」がつく本を出していたっけ。 話を聞くほどに、知らないことがこんなにもあるんだな、と思う。そんなの日常茶飯事なのだけれど。 ご両親はベトナム戦争後に渡米したということ。 ラオス人はタイでは差別されて

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          盆によせて

          お盆がやってくる。 仕事にお盆は関係ないので、親戚・家族に会ったり、お墓参りには行くことができない。 学生の頃は、「お盆」という概念が全くなかったので、目いっぱいバイトを入れていたと思う。 母が亡くなってから、お盆はお盆になった。 母がこの世に帰ってきている気がするようになった。 盆踊りでトランスに入ることが、冥界とつながる入口のようにも感じられた。 お盆がお盆になったことにより、お盆が近づくと少し、ナーバスになる。 でも、年を経るごとに、亡くなった母との折り合いも少しず

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          女のコスパ

          もう20年来の付き合いになる友人がいる。 出産後の帰省で1年ぶりくらいに会うことになった。 彼女は「それなりに学も身に着けて、人間である自分は考える葦、だなんて思ってたけど、子どもを産んでみたら自分がいかに動物であるかわかった」と話した。 妊娠・出産に伴う身体の変化、出産後の生活スタイル、様々なことを通して、それを感じたのだろう。 どれだけよい大学を出ても、よい就職をしても、出産を前に女性は働き続けることは体力・体調面から難しく、出産後も家族や実家の支えなしにフルタイムでの勤

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          メロンの「血」

          母の生まれ故郷は北海道夕張市。 今となっては「破綻」した自治体としても有名になってしまったけれど、夕張はメロンの生産地なのである。今年は初競りで2玉350万円と、過去2番目の高値だったそうだ。 自然と親戚も夕張にいたため、毎年夏が来ると買わずして夕張メロンを食べられる、今考えればなんとも贅沢な環境で育った。 甘い香りが漂い、皮が黄色くなり完熟すると、果肉は舌で潰せるほどで、果汁はジューシー、甘さが溢れる。生で食べるのはもちろん、カットして半冷凍で食べるのがすきたっだ。 親戚が

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