なぜ日本人は車が来てなくても赤信号で止まるのか【日本・マレーシア・カナダ比較論】
日本人は~
○○人は~
とひとくくりにするのは主語が大きすぎる(どの国にだっていろいろな人がいる)、とは思うものの、確かに傾向っぽいものはある、と思います。
そんな風に「日本人は~」といわれるものの中の一つに、「日本人(歩行者)は車が来ていなくても赤信号で止まって待つ」というものがあります。
車が来ていなくて渡っても大丈夫なのに止まって待つの、なぁぜなぁぜ?
って海外から日本に来た人は思うといいます。
今日はこの点について、日本・マレーシア・カナダの比較をしてみようと思います。
日本人:車が来なくても赤信号で止まる
日本人はルール大好き、規律を守る人たちだから。
ルールを守って思考停止している。その方がラクだから。
という見方もできるとは思うのですが、信号に関しては
・日本の信号がかなり正確(誤作動や故障がほぼない)で信頼性が高い
・利用者が信号を守ることがスタンダードだから信頼性が高い
という安心感に加えて
・日本は一般道を小さな子どもが大勢歩いている場所だから
ということが大きいかなと思います。
小学1年生から一人で通学しますし、場合によっては学童や習い事・塾などに学校帰りにそのまま行く1年生もいます。帰りは夕方になることもあり、季節によっては薄暗い~真っ暗な場合もありえ、視認性も悪いです。
子どもの動きは時として大人の予想を超えます。そのため、「信号」を守ることは子どもを守ることにも通じているんだと思います。
まず、日本の信号利用者には、かなり判断が未熟な存在が相当数含まれる、というのが海外と異なる点と感じます。
大人であれば「車が全方向から来ない」ことが確認できて「この場合なら渡ってよし」と判断できたとしても、「赤信号でも渡っていい・信号は守る必要はなく、自分の判断でよい」というのを6~7歳の子どもに適用するのはなかなか酷です。
ベビーカーの時代や未就学児の時代から、大人が「赤信号で渡る」姿を常態的に見せていれば子どもも「それが普通」と思うでしょうし、6歳になって小学生になれば、周囲を見てそれを実践してしまうでしょう。
私自身も、日本での子育て時代は「ここ、横断歩道ないけど今なら渡れるな」と思っても、「赤信号だけど、いけるな」と思っても、子連れの時はそれをしませんでした。急いでいるときや横断歩道が遠い場所では歯がゆく思ったこともありますが、子どもが一人のときに真似されたら、と思っただけで血の気がひくからです。
大人が「車が来ていなくても赤信号を渡らない」のはなぜか、の理由は、日本では街なかに小さな子どもが日常的に一人歩きをしている、という事実があるからかな、と思います。
日本でも、急いでいる人やせっかちな人、自分の判断で渡る人は渡りますので、待っている人はそれなりの余裕があるということでもあると思います。余裕があるのはいいことです。
マレーシア:車が止まるのを待ってたら一生渡れない
私が子連れで初めてマレーシアにきたのは2018年です。最初は旅行でした。
そのとき、語学学校に通いました。
宿泊施設付きのサマースクールプランだったので、最初の登校日に学校の先生(スタッフだったかも)が宿泊施設まで迎えに来てくれてそこから徒歩で一緒に学校まで行きましたが、そのときさっそく驚くことが。
車がバンバン通っている3車線くらいの道路を、先生がぐいぐい渡っていくのです。
周囲を見渡しても信号や横断歩道などありませんでしたし、歩道橋などももちろんありません。道の反対側にいきたければそうするしか方法はないのです。
車と先生は阿吽の呼吸で、車は止まり先生はスイスイとわたり、私たちは取り残されたら最後!とばかりに離れないように付いて行きました。当時子どもはけっこう小さかったのでかなり驚きましたし(特に、学校の先生がそれをしたので)、特に小さな下の子に注意したことを覚えています。
先生は「こうしないと渡れないからね」とニッコリ。
マレーシアでは子どもが外で歩いていることなどまずありません。わりと大きな道路であっても途中でいきなり歩道がなくなったりするし、ショッピングアーケードやよほどの中心地でない限り、安心してそれなりの距離を歩くことはできません。屋根がなければ灼熱だし、よほどの繁華街の中でないかぎり、道に迷えば聞ける人もいなければ商業施設もなく、水を買う自販機やコンビニもないような場所が多いです。頼みの地図アプリも、携帯の電波が途中で入らなくなるかもしれません。
(なので、旅行で行く方や、移住の際に学校と住居を歩ける範囲で探したい方、地図を見て「この距離なら10~15分で歩けそう」などと判断してはいけませんよ。距離的には歩けても、状況的には歩けないことが多々あります)
子ども一人で外にいることなどまずあり得ないし(誘拐もあるし、交通状況も道路状況も悪いし、暑いし、季節や時間によっては大雨スコールあり)、信号も少なく、信号が壊れていることも多い。車同士の交通事故もとても多いです。
外の道路は基本的に大人の世界で、「自己判断で、周囲の人と協力して、いく」ことが前提の作りとなっているのがマレーシアの道路ですね。
カナダ:歩行者優先。車が止まる
カナダこそ広いので「カナダは~」というのは非常に憚られますが、都市部や住宅街では基本的に歩行者優先。車が止まります。
横断歩道はもちろん、横断歩道がなくても歩行者はわりと平気で渡ろうとしますし、車はそれを予見して運転します。自分が歩行者としてあるいていると、ちょっと道の反対側を見ただけで車が止まってくれたりします。
わりと歩行者優先が徹底されている感じです。
スクールゾーンは時速30キロ制限。スクールバスがハザードランプをつけて停止していたら追い越してはいけない(これはカナダで車の免許に書き換えるときの問題として出題される5問のうちの1問です)。ときとして警察が監視していて、スピード超過の車に注意を与えていることもあります。
道の細い住宅街などは時速40キロ制限。ここは犬の散歩やランナー、お年寄り、電動車いすに乗った方(多い)などが多いので車の方に注意が必要。歩行者は「車は止まるもの」という認識でいるので、車がブレーキを踏む前から道路を横断し始めます。
また、ダウンタウンエリアや中華街など治安のよくない場所ではふらふらとしている大人(薬かお酒を召されているなど)もおり、彼らは信号など守りませんから、本当に注意が必要。
都市部では小学校高学年や中高生の子どもが一人でバスにのって通学することも普通なので子どもの姿も見かけます。(13歳以下は子どもだけでもバスに無料で乗れたりします)
ヘルシーでエコな移動手段としての自転車も多く、自転車専用レーンのある道路も多いです。ハイウェイにも一部自転車レーンがあり、個人的にはちょっと怖いです。
ランニングする人、自転車に乗る人、犬の散歩をする人、登下校の小中高校生、野生のリスやシカなどの小動物、場所によっては薬やマリファナでハイやローになってる人や路上生活者、などなど、路上に車以外の存在がわりといるのがカナダの都市部。
シンガポールから来たママ友は「シンガポールは車道がきっちりしていて路上にほとんど人がいないから気兼ねなく運転できたけど、カナダはではいろんなものに注意して運転しないとならない(笑)」といっていました。
そしてカナダでも、信号は概ね機能しているし、見る限りほとんどの人が信号を守っていますね。逆に、ときとして、歩行者用の信号が赤であっても車が止まってくれて歩行者をいかせてくれようとするほど「歩行者優先」です。
また、信号や横断歩道が付いているような道路は片側2~3車線あるので、赤だったりしたら見た目に車が来ていなくてもちょっと渡るのは怖いですね。
まとめ:日本人が赤信号を守る理由
ということで、総括しますと、
日本:ルール優先(それぞれが信号を守って止まる)
マレーシア:自己判断(車が止まるの待ってたら一生行けないので渡る)
カナダ:歩行者優先徹底(車が止まるので歩行者は適当に渡る)
といった印象です。
なので、タイトルの疑問の答えを私的視点からいうならば、「日本は路上に子どもが多いから。なおかつ歩行者がさほど優先されていないから、信号を守るのが総合的に合理的」といったところでしょうか。
なお、マレーシアで他の都市(市街地)に旅行したときホテルスタッフにあるホテルから距離的に徒歩5分程度のレストランの場所と行き方を尋ねた際、
「近いけどGrabで行ってね。一か所道路を渡るから。地元の人じゃないと渡るテクニックがないから。お車、呼びましょうか?」
といわれましたw
マレーシアでは(「地元のテクニック」を持たない人は)近くてもGrab推奨。
カナダで運転する人は歩行者に超注意!です。