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インターナショナルスクール選び。アメリカ式が、イギリス式より「緩い」理由

先日、とある方に取材を行い、アメリカ式教育は「緩い」のになぜ大学や産業界はイノベーティブで世界トップなのか?について考えて書いています。

そちらをまとめるのに時間がかかっているので、本日はアメリカ式インターナショナルスクールがイギリス式より「緩い」理由について書いてみます。


アメリカ式が「緩い」理由


マレーシアには180校を超えるインターナショナルスクールがあると言われ、その数は年々増えています。そして、その中の大半は「イギリス式カリキュラム」を採用しています。これはマレーシアがもともとイギリスの統治下にあった歴史に関連します。
(現在も英国連邦の一員なので、医療システムや交通システムなどがイギリスを踏襲しています)

それら「イギリス式」の学校と比較して、「アメリカ式・カナダ式」など北米式カリキュラムを採用しているインタナショナルスクールは「緩い」と一般的に言われることが多いです。理由は、学業面での要求が厳しくなく、お行儀の点でもカジュアルなためです。

笑い話としてよく語られるのは、

・アメリカ式インター、算数ですぐ計算機使うw

・アメリカ式インター、授業の様子の写真を見ると生徒が地べたに寝そべって授業受けてるw

・アメリカ式インター、先生すらピザ食べながら学校内歩いているw
(休み時間)

という感じで、カジュアルです。

また、「在籍して授業に普通に出席していれば卒業できる」こと、「詰め込み教育ではないので、学校からの要求は多くなく、生徒本人に学習意欲がなければそれなりにそのまま過ごせてしまう」ことから、全体的に「緩い」と言われています。


イギリス式が「緩くない」理由


一方、イギリス式カリキュラムでは、17歳頃(11年生の終わり)にIGCSE(GCSE)という全世界共通の中等教育修了認定試験があり、これに合格しないと高校卒業の資格が得られないシステムです。そのため10~11年生(15~17歳頃)の2年間はこの試験対策としてイギリス式の学校はかなり真剣に勉強します。

(ちなみに、科目によって「ペーパー試験」で評価がつくものも、「課題や作品を提出しそれが評価の50%を占める」ような実技やレポートがともなうものもあります。しかしペーパーテストであっても回答は記述式で、番号を選べばいいようなものではありません。また、試験当日に体調を崩したり特定の科目だけ不合格の評価をとってしまったときの救済策(再試験)もあったりと、日本の中学受験や大学入試のような「ガチの一発勝負」のテストとは少し異なります

受験科目数は、最低5科目ですが、8~11科目受ける人が大半。9科目前後が多いのではないでしょうか。英語・数学・理科が必修で(理科はいくつかの分野にまた分かれますが)、その他外国語や社会分野、ビジネス、コンピューター、芸術分野などの選択問題があります。

そのIGCSEが11年生の終わり。その対策授業が10~11年生の2年間。
(ここは2年間がセットなのでイギリス式の学校は11年生から入学することはほぼできません

となると、9年生の頃には「試験対策に耐えられるだけの英語力」があることが前提となります。そのため、9年生くらいでこのIGCSEの試験タイミングに「仕上がらなそう」な生徒はやんわりと(あるいはキッパリと)退学を促されたりします。
(その場合に転校していく先が、アメリカ式やカナダ式。もしくは日本に本帰国)

インターナショナルスクール側としても、自校でIGCSEの落第者を出したり、低い成績で合格して学校全体の平均点を下げられたりすると大変困るためです。
(日本の私立校や塾と同様に、イギリス式のインターナショナルスクールは「IGCSEのA以上を取った生徒が全体の何パーセント」などの数字を学校のアカデミックレベルの高さの証明として宣伝に使うので)

一方で、「日本人生徒がインターナショナルスクールの授業についていけるようになるには3年かかる」と留学エージェント業界で言われたりしています。これは何年生で入学するか、どんな環境か、生徒本人のモチベーションや潜在能力は、などいろいろな要素が絡むので一概にはもちろん言えませんが、「普通の子が小学校高学年以降で英語力が乏しい状態で来たら、まぁそれくらいかな」という数値ではあると思います。となると、Year 5~6くらいで来られるといい、せめてギリギリでもYear 7の最初から…といわれたり、「早ければ早いほどいい」と言われたりする所以です。
(早ければ早いほどいい、という意見には個人的には賛成しかねますが)


IGCSEは難しいのか


IGCSEはすごく難しいのか、と言われれば、教科としての難易度的にはさほどではない、と言えると思います。なにしろ「全員」が受けるテストですから。「とても簡単」とまでは言えないまでも「十分に対策ができる」ものです。日本の高校生レベルの問題をイメージしていればそう遠くないと言われています。

テストとしての歴史が長く受験者数も多いため、「こう勉強すればいい」という方法論も確立されているし、インターネット上にも無料で手に入る有益な情報がたくさんあります。ただし、記述式が多いため「英語ができること」は条件になり、日本人の受験経験者からは「実質、全教科が英語の試験」という声を聞きます。


日本人にとってはイギリス式の方が納得がいきやすい


そういったわけで、アメリカ式よりイギリス式の方が、15歳くらいで「勉強をちゃんとやっている感」が感じられます。

そもそも、日本はかなり勉強をちゃんとやらせる国ですから、その日本を出て海外のインターナショナルスクールに行けば「ちゃんとやってない」「レベルが低い」と感じる親も少なくありません。そもそも特に数学は、日本やアジア諸国の方がレベルが高いのです。中華系のタイガー・マムも「数学は同級生より2学年進んでおくべし」と言っています。

(この「レベル」という考え方がまた「何をもって」「何のレベル」という話なので複雑なためエントリを改めますが、多くの日本人が「レベルが低い」と感じるようになることは確かです。英語に四苦八苦している間は気になりませんが、ひとたび英語ができるようになるとぶつかる悩み・不満がこれです

昨今の流れから、マレーシアのインターナショナルスクールに留学する子どもは小学生以下が多いですから、日本の中学生と同じ年齢になったときにあまりにも勉強が緩いとなると、ついつい自分の知っている「常識」と比較して親としてやきもきしてしまう場合が少なくありません。

そのため、IGSCEという国際試験があってそれに向かって勉強をするイギリス式の方が、勉強の山場がアメリカ式より早いタイミングでやってくるし、勉強のスタイルとしても「日本の常識」に近いものがあるので納得しやすいのです。

アメリカ式からイギリス式に変えるのは難しいけど、逆はラク。と言われるのもこうした理由です。

と、そんなあたりがアメリカ式が、イギリス式より「緩い」理由です。
これからマレーシア等でインターナショナルスクールを探そうとしている方は参考にされてください。

ではでは、また。

国際バカロレア、イギリス式、アメリカ式……さまざまな教育システムについて特徴が詳しくかつコンパクトにまとめられている一冊。著者の野本響子さんはご自身の長男が不登校(ホームスクール&独学)を経験したのち国際バカロレア(IBDP)を修了しておられ、学校に行くだけでない選択肢にも造詣が深い。
「日本の教育が合わない」「留学したい・させたいけど、どこの国を選べばいいの?」という段階から役に立つ、国際的な教育・オルタナティブ教育の辞書のような本。


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