女性化について⑤女性らしい装い
ホルモンを打ち始め半年も経つと少しずつ乳房が膨らみだした。これは人生2度目の変化で、1度目は中学の頃、肌着なしでTシャツを着られないくらい膨らみ学校の健康診断の際、男の医者が目を丸くしたくらいだった。
そんなことを思い出しながら膨らみだした乳房には、どのブラジャーが良いのかなど女友達に相談すると「思春期の女の子みたい。それくらいのふくらみならこんなんで十分よ~」と見せられたWEBサイトには、何の変哲もない、かわいげもセクシーさも皆無のいわゆるスポーツブラが・・・
身体の変化に女性化を感じつつ「もっと女らしくしたい」という欲求が高まり「スポーツブラでつぶしてしまうのは絶対に嫌!もっともっと寄せて少しでも膨らみを持たせたい」とワコールやトリンプのブラジャーを買うことに決めた。
とはいえ、トランス初期で女装の域を超えられていない身で、デパートのランジェリーショップに入ることも気が引けたため、当時池袋駅前にあったキンカ堂のさびれた下着売り場でおばさまたちに紛れて、あらかじめ自宅で測ったサイズのものを購入し、身に着けていた。
下着の次は日常生活するうえで着る洋服だ。エクステでロングヘアになっていたとはいえ、まだまだ精悍さが残る時期だったため、まだまだスカートは履けなかったが、手持ちのパンツに膨らみのない胸がカバーできるデザインのブラウスやチュニックを合わせてフェミニンで中性的な服装を心掛けた。
二週間に一度のホルモン注射を打っていても、魔法のように女性らしくなれるわけではなかったが、化粧を工夫して、毎日巻き髪を欠かさなかった。はた目でみたら、THEアルフィーの高見沢俊彦さんのような風貌だっただろうが、本人は必死だった。
そんな中性的な装いががらりと変わったのは、ホルモン注射を打ち出して1年半ほどが経った頃だ。これ以上膨らまない乳房に見切りをつけ、豊胸手術を受けた。片側450ccのシリコンバッグのせいでそれまで身に着けていた洋服がことごとくサイズアウトしてしまった。
豊胸したスタイルに似合う服装はないものかと慌てて女友達に相談し、ZARAで一式購入することに。ZARAは外国人の体系にも合うサイズ感とセクシーで女性らしい服装が多く一見華奢で自分にはサイズが合わなそうに見えて、豊胸の元男性という体系をもカバーしてくれるとても便利なファストファッションだ。
このころから胸や足を際立てるような服装ばかり身に着けるようになった。そうすることで、自分は女になったと思えたからだ。
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