【カヌーポロ】安全と安心の話
日本選手権が終わりました。
今回は男子8チーム、女子4チームという規模での開催でした。
近年の参加チーム数が低迷している問題は継続中ですが、若いチームが台頭してきたことやベテランチームが頑張って参加し続けていることで僅差の好ゲームが繰り広げられ大会は盛り上がりました。
また、今回はジュニア選手権と同時開催で普段あまり関わることのない小中学生などが日本選手権のハイレベルな試合をたくさん見てもらう機会になったことで、未来の選手たちに大いに刺激になったと思います。
さてさて、今回の記事は日本選手権の振り返りではありません。
遠征の道中での話題。以前より他の記事でも何度も触れてきた「引き付ける」や「スペース」について、どうも同じ話をしていてもかみ合わない時があるよね、という話になりました。
特に「過剰に敵が自分に寄り切って」からパスを出すケースが多く、もっと手前の段階で出せば楽にパスが通るのに、パドルによるパスカットがかかる距離まで寄せているのでパスを通すのに苦労している光景を見かける。これについて考えました。
安全と安心は違うもの
引き付けてスペースを作ってパスを出すという一連の動作。本来はこれをなるべく安全に実行したいわけですが、どうやらここの考え方に違いがありそうだと思いました。
それは・・・
安全ではなく安心を求めている
これではないかと思いました。
似た言葉ですが、実は違います。「安全」は「安全性」と使われるように客観的な事実に基づくものである一方、「安心」は「安心感」と使われるように主観的に判断されるものです。 安全の反対は「危険」、安心の反対は「不安」です。
「安心」は主観的なもので、どうすれば「安心」できるかも人によって違うということです。 一方、「安全」は、客観性に基づいているため基準は一定で変わらないはずのものです。
この違いによりスペースに対する認識も異なっているのではないかと考えました。敵を徹底的に自分に引き付けてしまえば、その分大きなスペースが生まれます。
大きなスペース=安心
大きなスペースであれば、パスの行き先が多少ぶれてもパスの受け手が修正して処理してくれますし、上手く渡ればその先の行動の選択肢の幅が広がります。
こうした考えをしているから敵を必要以上に引き付ける行動が生まれているのでは、という仮説に行きつきました。
ただ、この場合は逆にパスを出す瞬間においては敵が近いのでパスカットされるリスクが高まってしまいます。
これに対して下のような感じでパスを分解してみました。
パスを投げるという行為は投げる本人の「主体的」な動作です。当たり前ですが、そこには自分自身で実行することができます。
次のボールの行き先です。これも一見、自分の投げた行為によるものなので主体的な動きに見えますが、実は投げ終わったボールは文字通り「自分の手を離れてしまった」状態なので後からここに自分が介入することはできません。さらに最後のパスをキャッチする行為に至ってはもはや別の人間の動作なので、その人次第です。
パスの技術に自信がある人も、逆にパスの精度にあまり自信なかったりキャッチしてくれる相手に不安がある場合も、パスカットという最初の障壁を自分の力でクリアしてしまえばその先の安心感が大きくなるので、あえて引きつけ過ぎる行動をするのではないでしょうか。
つまりどこに安心を求めるのかで行動が変わってくると考えました。
その安心は自己満足になっていないのか?
パドルをかいくぐるパスというのは、投げる際にフェイクを入れたり、投げる位置を変えたり、投げ方・タイミングが一定ではありません。
パスの速度自体もカットされる前にシュート性の強パスでかいくぐることが多く、キャッチ側の技術も求められます。
パスの受け手がその場に留まっていて、ボールキャッチに注力している状態であれば処理することもできるかもしれませんが、スピードに乗ってドライブしている場合、処理はさらに難しくなります。
また、パスを受ける側からしてみれば、いつ飛んでくるかわからないパスに対して全力疾漕で受け止めるのは難しいですし、そもそもちゃんと手元に飛んでくるかもわからないので勢いのあるドライブなんて不安でできたもんじゃありません。
パスカットに入っている敵だけでなくパスを受ける味方選手も翻弄されている状態に陥るわけです。
つまり、敵の妨害を受けながら頑張ってかいくぐったとしてもそれはいいパスになるとは限らないのです。リスクに対してのメリットが少ないのでは、と筆者は考えています。
まとめ
安全と安心の意識については人それぞれ考え方があると思います。私なんかは安全な状態が一番安心できるので、なるべく低リスクな選択をしてしまいがちです。これはこれで、いざという時にリスクを取ることが出来ないとも言えるので、正解かどうかはわかりません。
勝つためにどこまで安全に進めて、どこからリスクを負うのか。そのバランスを考えていきたいですね。