【連載】研究最前線⑨「膵臓がんに対するmRNA医薬品のアプローチ」
こんにちは。株式会社ARCALIS(アルカリス)です。
私たちの手がける「mRNA」という研究領域についてご紹介するこの連載。
今回は、「膵臓がん」に対するmRNA関連の研究動向についてまとめていきます。
1.膵臓がんにおける個別化mRNAがんワクチンの開発
ビオンテック社のautogene cevumeranと呼ばれている個別化mRNAがんワクチンの中間データでは、化学療法とGenentech社のPD-L1抗体であるTecentriqと併用することにより、治療した患者さんの半数以上が免疫反応を示し、無再発生存期間が延びることとの相関が示唆されていると発表しています。
さらに米国臨床腫瘍学会年次総会で発表された第Ⅰ相臨床試験においては、無再発生存期間の延長がネオアンチジェン特異的T細胞の応答の増加と相関していることも示唆されました。
また、autogene cevumeranと呼ばれている個別化mRNAがんワクチンは化学療法との併用療法において忍容性が高く、評価した16人のうちグレード3の副作用の症状が現れた患者さんは1人だけという結果になりました。今後は、切除された膵管腺がんの患者さんにおいて安全性及び有効性を評価するための無作為化試験を進める予定です。
ビオンテック社はまた固形がん、大腸がん、メラノーマを対象とした、個別化ネオアンチジェン特異的免疫療法(iNeST)の開発も進めています。
iNeST用ワクチンは、各患者の腫瘍細胞と健常細胞の遺伝子の差異を測定することにより、患者特異的な腫瘍の目印となる抗原タンパク質を特定します。がんと闘うために最大20個の患者固有がん抗原をコードするmRNAを製造する必要があり、これら製造面での課題の克服も求められます。
2.まとめ
今回は、「個別化mRNAがんワクチン」の領域に関するmRNAをターゲットとした開発事例を紹介してきました。
mRNAを使った医療の可能性は広く、さまざまな研究開発がなされています。次回以降も、さまざまな研究開発の動向をお伝えしていきます。
ARCALISでは、mRNA医薬品の創薬支援・CDMOサービスをご提供しております。協業・ご依頼に関しましては、下記よりお気軽にお問合せください。