ブラック・ミラー S3 EP4「サン・ジュニペロ」:ドラマ感想
「雲の上に昇るなんて天国みたい」
なんておしゃれな言い回しだろうか。
実際には「雲」に”クラウド”、「昇る」に”アップロード”とルビが入っている。
人気だからという訳ではなく、本エピソードは個人的上位にも入ってしまう。
サン・ジュニペロシーズン3、エピソード4「サン・ジュニペロ」(原題:San Junipero)
あらすじ
1987年、とある街「サン・ジュニペロ」で、内気な女性ヨーキーは、明るく自由奔放な女性ケリーと出会い、恋に落ちる。しかし、サン・ジュニペロは現実の街ではなく、高齢者がバーチャルリアリティを通じて若返り、生活する仮想世界であることが明らかになる。ケリーとヨーキーは現実世界では異なる人生を歩んでおり、サン・ジュニペロでの関係をどうするか葛藤する。
感想
高齢者にとって、日々のリハビリに追われる現実から解放され、自由な生活を送れることがどれほど魅力的に映るのか。今の私には想像でしかないが、このエピソードを通じて、高齢者のリアルを追体験できた気がした。
そこには、仮想空間では「永遠の若さ」や「理想の人生」が手に入る一方で、現実世界での痛みや喪失も今の自分を形作っているという葛藤があった。単純に理想を選べない、そんな複雑な心情が描かれていた。
意識をクラウドにアップロードし、肉体の死後も生き続けられるという技術という一つのテーマだけで、ここまで心を揺さぶるドラマを作り上げた手腕に感心した。ブラック・ミラーには珍しい心温まる結末から、愛や人生の本質について、改めて考えさせられるエピソードだった。
個人的得点:4.8 / 5.0