米Kymera Therapeutics社、アレルギー・アトピー性疾患向けSTAT6標的の新たな蛋白質分解誘導薬KT-621が第1相臨床試験を開始
Kymera Therapeutics社は、2024年10月9日にシグナル伝達・転写活性化因子6(STAT6)を標的とする蛋白質分解誘導薬(開発コード:KT-621)の臨床試験実施申請(IND)が米食品医薬品局(FDA)に認められたと発表しました。KT-621はアレルギーやアトピー性疾患の治療を目的としており、2024年10月に健常被験者を対象に第1相試験を開始しました。2025年上期にはそのデータを報告する計画です。
KT-621のメカニズム:
構造: KT-621は、Kymera社の標的蛋白質分解誘導薬のプラットフォームにより創製された低分子経口薬です。E3ユビキチンリガーゼに結合するリガンド(受容体や酵素などのタンパク質に結合して生体内の情報伝達を担う低分子化合物のこと)と、標的蛋白質であるSTAT6に結合するリガンドをリンカーでつないでいます。
作用: KT-621がSTAT6に結合すると、E3ユビキチンリガーゼがこれを分解対象として認識し、ユビキチンプロテアソーム系を介してSTAT6を分解します。これにより、アレルギー反応を引き起こすIL-4とIL-13のシグナルが阻害され、炎症が改善または抑制されます。
前臨床試験の結果:
細胞試験: KT-621は様々なヒト細胞株でSTAT6の分解を非常に低い濃度で誘導し、ヒトTh2細胞におけるIL-4/IL-13のシグナルをデュピルマブより低濃度で阻害しました。
動物試験: 非ヒト霊長類(NHP)を含む複数の動物種への低用量の経口投与でSTAT6を完全分解し、十分な経口バイオアベイラビリティーを示しました。マウスのアトピー性皮膚炎モデルや喘息モデルへの投与でTh2細胞を介した炎症反応を強力に抑制し、その効力はデュピルマブを上回りました。
毒性試験: 有効用量の40倍の用量でも高い忍容性が確認されました。
期待される効果:
KT-621は、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などの適応で承認されている抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体「デュピクセント」(デュピルマブ)に類似した薬理活性を示すことが確認されています。STAT6を分解することで、アレルギー反応を引き起こすIL-4とIL-13のシグナルを阻害し、炎症を抑制します。
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