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バイアスに負けないようにするために


1. 理解し合えない現実


私たちの日常生活は、しばしば「分かり合えない」経験で満ちています。家族との夕食時に自分の考えを伝えようとしても一蹴されたり、職場の会議で提案したアイデアが却下されたりすることは珍しくありません。これらの経験は、私たち一人一人が異なる人生経験や価値観を持っているからこそ起こるのです。完全な相互理解を求めるのは非現実的であり、むしろ「分かり合えない」ことを前提に、そこからどう歩み寄るかを考えることが重要です。

🗑️ゴミ出し:完璧な理解を求める考え方


2. バイアスの影響


私たちが分かり合えない大きな理由の一つに「バイアス」があります。特に注目すべきは「流暢性バイアス」です。テレビで見た滑らかに話す政治家の主張を、内容をよく考えずに信じてしまったり、会社のプレゼンで上手に話す同僚の提案を無批判に受け入れてしまったりすることがあります。このように、流暢さを正しさと同一視してしまうことで、本質的な理解や批判的思考が阻害されてしまうのです。

🗑️ゴミ出し:流暢さを正しさと同一視する傾向


3. 二つの思考システム


こうした状況を理解するために、私たちの頭の中にある二つの思考システムについて知ることが役立ちます。「システム1思考」と「システム2思考」です。システム1思考は直感的で素早い判断を行います。例えば、熱いものに触れた瞬間に手を引っ込める反射的な動作や、顔見知りの人を一目見ただけで認識することなどが該当します。一方、システム2思考はじっくり考え、分析する思考です。複雑な数学の問題を解いたり、新しい概念を学習したりする際に働きます。

🗑️ゴミ出し:システム1思考のみに頼る習慣


4. バイアスを乗り越える


より良いコミュニケーションのためには、システム2思考を活性化させることが重要です。相手の意見を聞いたあと、「なぜそう考えるのか」と掘り下げて質問したり、自分の直感的な判断に疑問を投げかけ、「本当にそうだろうか」と考え直したりすることで、批判的思考を養うことができます。

🗑️ゴミ出し:批判的思考を怠る態度


5. 日常での実践


「忙しくて考える時間がない」という声もあるでしょう。しかし、日々の小さな実践が大切です。通勤中にその日のニュースについて「なぜ」「どうして」と考えてみたり、家族との会話で相手の言葉の背景にある感情や経験を想像してみたりすることから始められます。こうした練習の積み重ねが、緊急時の的確な判断にもつながります。例えば、2009年にハドソン川に不時着した飛行機の機長のように、瞬時の判断が求められる場面でも冷静に対応できるようになるのです。

🗑️ゴミ出し:日常の思考訓練を軽視する姿勢


6. 長期的な視点での理解


相手と分かり合えるようになるには、時間と訓練が必要です。一度の会話で全てが解決するわけではありません。しかし、システム1とシステム2の思考をバランス良く使い、日々の小さな実践を重ねることで、少しずつコミュニケーションの質を高めることができます。即座の完全な理解を求める焦りは捨て、長期的な視点で自己と他者の理解を深めていくことが大切です。

🗑️ゴミ出し:即座の完全な理解を求める焦り


7. 新たな対話の始まり


この考え方を実践することで、私たちは日常のコミュニケーションにおける壁を少しずつ取り払っていくことができるでしょう。それは単に他者との関係を改善するだけでなく、自己理解を深め、より豊かな人生を送るための礎となるのです。今日から、あなたの周りの人々との対話に、新たな視点を持ち込んでみませんか?それが、より良い相互理解への第一歩となるはずです。

🗑️ゴミ出し:現状のコミュニケーションパターンに固執する態度


おわりに

以上の観点を通じて、私たちは思考の罠から解放され、より深い理解と豊かなコミュニケーションの世界へと踏み出すことができます。それは決して簡単な道のりではありませんが、一歩一歩進んでいくことで、私たちの人間関係や社会全体がより良いものになっていくでしょう。

日々の生活の中で、相手の言葉に耳を傾け、自分の思考を見つめ直す。そんな小さな実践を積み重ねることで、私たちは少しずつ、しかし確実に、より良いコミュニケーションの世界へと歩みを進めることができるのです。そして、その過程で自分自身の成長も実感できるはずです。

今日から、あなたも新しい対話の世界への扉を開いてみませんか?それは、より豊かな人間関係と、より深い自己理解への旅の始まりとなるでしょう。


野中恒宏

【参考文献】
今井むつみ「「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?」(日経BP)

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