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争いの星

朝起きてコーヒーを淹れる。テレビをつけてみると、いつものようにT国とR国の戦争の様子が流れていた。

荒廃した地で兵士や戦車が向き合い、とある兵士たちはビルの陰から銃を構えながら相手軍の動向を静観している。数分経ったのち、T国の司令官が発破をすると、途端に銃声が激しく鳴り響いた。
撃つプロフェッショナルもいれば、守りを固めるプロフェッショナルもいる。はたまた、相手の連絡経路を破壊するサイバープロフェッショナルなども存在する。ここに映っている兵士たちは全員、戦う意欲を持って出てきた兵士ばかりで「同情」の欠片などひとつもない。

自分の国がこんなにも激しい戦争をしているにも関わらず、呑気にコーヒーを淹れて傍観していられるのにも理由がある。
「戦闘地指定法」。数年前、一部の人間が起こした戦争に、無関係な一般市民が大きな被害を受けたことをきっかけに、国際法のひとつとしてこの法律が定められた。

戦争を行う際、政治家含む関係者は国際法の指定する星へ移動し、そこで戦闘を行わなければならない。法律を破った場合には、指定星に永住権を移行する。

つまり、戦争の発端に無関係な我々一般市民はこの星に残り、国のトップを含む戦争関係者のみが別の星に移動して戦闘をするという法律だ。
法律を破れば一生その星で暮らさなければならず、他の国の戦争に巻き込まれる生涯を送ることになる。

この法律のおかけで、私たちの命も、子供たちの命も、動物たちの命も無下に奪われることはない。
テレビに映る、スーツ姿にヘルメットを被って一生懸命指示を送る政治家の姿は滑稽極まりないが、そもそも自分たちで決めた戦争であればこのような姿であるべきなのだ。

私たちはこの戦争の真意も知らなければ、理由も、価値も見出せない。
ただただ、この争いに巻き込まれないことに感謝をしながら、テレビに映るこの醜き地を見続けていた。

“争いの星”と呼ばれる「地球」という星を。




「争いの星」 了

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