自選短歌30首
2012年ごろから短歌を作っています。
以前はNHK短歌や毎日歌壇、うたらばなどに投稿していました。
このnoteにも短歌を載せていきたいと思っているので、まずは自選30首を。
読んでいただけたら嬉しいです。
今後、増えたり入れ替えたりするかもしれません。
2024/02/02更新 数首入れ替えました
分かんないけど天国はこっちじゃない常磐線は曇天を行く
三日月の名の付くパンを食べているこの世の終わりはきっと満月
泣くための湯船に沈めばペディキュアが真っピンクこれバカな色だな
あの人に会わないだろうけどヒールまで血が通いだす柏駅
オムライスのやぶれた卵から呪文が逃げないように塗りたくる赤
あと百回笑い合いたいあと百回頭ぶつけろ長身の君
階段でロングスカートを摘まめば優雅な気持ち 改札口へ
わるいひとがはびこる国で心身のやわらかいとこ隠して暮らす
あの人の寝顔を想像する時間矢じりを研ぐように膝を洗う
かさぶたを剥がすたび血の赤色に動物として少しおびえる
恋人にならなかったね信号は君の歩いて行くほうが青
「ゆううつ」とフリック入力する指が軽快すぎるから見においで
恋人にしてくれない人ばかり好き みんな名字に濁点がある
窓際の席で見下ろす人波のひとりひとりに名があるなんて
穏やかに暮らしたかったイニシャルのM.W.が波打っている
三つある持病がどれも死ぬほどのやつじゃないからずっとくるしい
できるだけ涼しい場所で眠らせる君にもらったブローチの犬
冷房が寒い電車で抱き合える人がいなくて髪をほどいた
柴犬を一匹飼って可愛がり看取った平成だった さよなら
「海老だよ」と知らせてくれる君と行くフードコートにたくさんの海老
閉店の張り紙が好き 会ったことないあなたにも人生がある
太陽光パネルが増えて故郷の景色だんだん黒っぽくなる
音はするのに見えなくて夏の夜の暴走族は花火のように
ユニクロを着ない季節がないことが少しこわいね冬の早朝
一本だけ生えた白髪を光らせて未来が明るそうでこわいわ
私には学歴も職歴もない百円ショップは物であふれて
距離をとることは余白を作ること レジ待つ列は歌集のように
祝日も命日も忘れてしまう私のバッグ今日も重たい
「猛犬に注意!」あなたが猛犬になってしまった理由きかせて
S音の名前が似合う恋人とさらりと話す将来のこと