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【七転び八起きの六起き目⑤】
予選で全てを出し切ったぐらいに疲れ果て、終了後にはパルマのメディアの取材を受けたりました。
前年はたくさんの人たちがタクちゃんに話しかけてきて、写真撮影しているのを世界チャンピオンってスゲェなと横目で見ていたけど、この年はみんなが2人と写真を撮りたいと話しかけてきてくれて、嬉しくてね、本当に、けどまだ信じられない気持ちでドキドキしたまま、写真を撮っている時も目は泳いでいたと思う。
YouTubeで観ていたチャンピオンたちを蹴散らして、自分が3位で予選を通過するなんて、それが現実になったことに興奮していた。
そして2人にはファナル用の生地を仕込む余裕が残っておらず、その日は生地を仕込めないまま翌日に全てを賭けることしかできなかった。
初めてイタリア大会ファナイルのステージに立った時の感動を忘れることはないだろう。ファイナリスト6人が紹介され入場しステージに並ぶんだけど、観客全員の目が自分たちに向けられているあの空気、緊張と興奮。
前日に疲労困憊で生地を打てなかったから、当日の朝にファイナル用の生地を打ったんだけど、それが上手く馴染むかという懸念はあったがそれは見事に大当たりで、明らかにいつもよりも緩い仕上がりだった。
自分なりになぜ予選であんなに盛り上がってスコアが伸びたのか分析してみて、やはり最初の1分間全く生地を変えずにパフォーマンスしたのが大きかったんじゃないかと思い、ファイナルもそれを再現しようと思っていたけど、そうするにはあまりにも生地のコンディションが悪すぎた。
結果は5位だった。世界選手権のファイナルで5位だ、素晴らしい結果だったと思うけど、予選を3位で通過していたこともあってメダルに届かなかったという悔しさの方が喜びよりも強かった。
そしてコンディションの悪い生地でタクちゃんは見たこともないスコアを叩き出して優勝して2度目の世界一になった。あの生地でなんでそんなパフォーマンスができるんだよと、会場で1番驚いていたのは間違いなく自分だろう。
そうそう、憧れていたダン・レイクーという有名な世界チャンピオンとも同じファイナルのステージに立ててすごく嬉しかったし、僅差で彼に勝つことができて夢のようだった。
正直、これがフリースタイルピザアクロバットにおける自分のピークかもしれないなって、その時はこっそり思ったりもしたよ。
いつだって世界選手権で優勝するのを目標にしているしそれを公言しているけど、現実的な自分のポジションを把握できていないわけではない。
それでも目指すのが夢なんだよ。
2018年、この年、タクちゃんは料理部門でも国別最優秀賞を受賞した。これは各国のトップスコアの人に贈られる賞で、自分たち2人が日本の1位2位だった。スポンサーを連れて団体で来ていた日本のナポリピッツァ協会の人たちより、北海道の田舎のお店の奴らの方が良い結果を残すなんて、まるでフィクションみたいな話だ。
エンドロールにはまだ早い。