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パレット

『ねえ、カナ。生まれ変わりってあると思う?』

ここは学校帰りにふたりで寄る馴染みの喫茶店。ミホはいつも、私にいろんな疑問を投げかけてくれるの。世界の不思議、映画や恋愛、そして心のこと。

『うん。私は、生まれ変わりって信じてるよ』

『じゃあさ。生まれてくるときに、両親や場所を選んでるって知ってる?』

私は、なんでそんな話をするの?とは聞かない。だって、前置きなんていらないこの会話が大好きだから。わかっているから。だからミホの話に便乗していろいろ聞いちゃうの。

『あー、それ聞いたことあるよ。でもさ、覚えてないから、それってどこまで意味があるんだろうね』

『だよね。でも、わざと忘れてるみたいだよ』

『わざと?』

『うん。ほら、うちらのこの惑星ってまだ未熟じゃん。戦争もあるし、貧困もあるし、過去生の記憶を持ったまま生まれてくると、かえって成長の妨げになると思うの』

『へー、そうなんだ。でもさ、生まれてすぐに亡くなってしまう赤ちゃんっているよね、みんなぜんぶわかってて生まれてきてるの?』

『もちろん。自分で選んでるんだよ』

『じゃあ。死ぬために生まれてくるの?』

『死ぬって決まってるわけじゃないけど、困難な状況を選んでるのは確かだよね』

『へー。でも何のためなの?私だったら、健康な身体で愛情たっぷりの、お金持ちの家を選んじゃうかも』

『もちろん、そんな生を選んだっていいんの。でもさ、生まれ変わりがあるってわかってたら、いろんな経験をしたいじゃん。それに・・・』

『それに?』

『ここって自分だけじゃなく、みんなで愛を体験するための世界だから。だから生まれてすぐに亡くなってしまった赤ちゃんだって、ちゃんとメッセージを残してるんだ』

『それにしたって、悲しいよね。愛の成長に大きな悲しみって必要なの?』

『ちがうよ。もしかしたら、悲しまなくていいいよって言ってくれてるかもしれないんだよ。世界の悲しい出来事だってそう、私たちは悲しむだけじゃなくて、今世でどう在るべきか、自分で選んだ絵の具のパレットでどんな絵を描くのか、いつでもその先を選べるのよ』

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