写真の色作り、その前に。
あなたの写真をスペシャルなものにするために、色作りは欠かせない工程です。
今日、lightroomなど現像ソフトのハウツーは多くの書籍やブログや記事で紹介されています。
しかし、多くはパラメータの説明と操作方法について触れるのみで、
ソフト操作以前の設計段階、つまり自分の出したい色がどのように成り立っているのか分析して、どのようにソフトで再現するのか見当をつける手法はあまり共有されていないのが現状だと思います。
ですので、今回は色作りのゴールを設定し、その達成の手法を考えるというところに着目して話をしてみます。
話のまえに
このnoteを読んでほしいのは、「写真の色作りにチャレンジしたいが、そもそも何をいじればいいのか分からない」「ソフト操作は分かるんだけど、アプローチが合ってるのか分からないし作業がかなり手探りだ」みたいな悩みを抱えてる人です。
また、このnoteで言う「色作り」はlightroomなどのソフトにおける基本補正とトーンカーブ、HSLあたりの作業を想定しています。photoshopのレイヤーやマスクを使って細部を追い込んでいくような段階は含んでいません。
色作りのゴールを考える
さて本題です。
ソフトを触る前に、自分が作りたい色のゴールを明確にしておきましょう。目的地の分からない旅に出るのは多くの場合危険であり、どこに辿り着いてしまうか分かったものではありません。
ゴールを定めるにあたり、参考にする写真を集めるといいでしょう。
集めた写真でいわゆる「ムードボード」というのを作りましょう。ここで「こういう写真にしたいんだよね」にブレがないことを確認しましょう。
(Pinterestはいいぞ)
ムードボードはゴールであって、スタート地点であって、セーブポイントです。
色の世界というのは、手探りで進むにはあまりに広大かつ複雑な迷路であり、あなたが自分の位置を見失わないための目印が必要なのです。
3つの「見極め」
作りたい色、その最終のイメージがムードボードによって明確なものになりました。
目的地が決まったので、次はどのように歩いていくか、その道のりを考えましょう。
ムードボードをじっくり観察して、その"ムード"の成り立ちを探っていきます。
このとき必要な工程は大きく分けて3つです。
【前提を見極める】
【トーンを見極める】
【色の分布と傾向を見極める】
【前提を見極める】
前提というのは、写真が撮影された環境のことです。
その写真がどのような場所で、どのような時間帯で、どのような光線状況で、どのような手段で撮られたのかを見極めることがもっとも大切です。
曇りの日の写真を晴れの日の写真に変換するプリセットを作るのは無謀な挑戦です。
それは室内で撮られた写真ですか?室外で撮られた写真ですか?
自然光ですか?人工光ですか?
撮影機材は何でしょうか?デジタルカメラですか?フィルムカメラですか?フィルムであればネガフィルムとポジフィルムのどちらなのかを考えないといけませんね。
自然光であれば、天気はどうですか?時間帯は?太陽は直接当たりますか?日陰、あるいは窓際ですか?
人工光であれば、その光源はストロボですか?蛍光灯ですか?ネオンライトですか?
光の質はどうですか?硬いですか?柔らかいですか?
空の色だって、南の空と北の空では違った色をしています。
その環境にどのような光が、色が、空気があったのかを見極めましょう。
目指す写真と、自分の写真との間に前提のズレがないかを慎重に考えましょう。
色味を整えるのにホワイトバランスを使うことがありますが、個人的にホワイトバランスは環境光に対するアプローチだと考えています。
色調補正による色の演出と、環境がもつ色の雰囲気は分けて考えるのが良いと思います。
【トーンを見極める】
トーンは明度と彩度からなり、画面全体の雰囲気を作ります。
写真全体の明度はどうですか?明るいですか?暗いですか?
彩度はどうですか?鮮やかですか?淡いですか?
1枚の写真は図のトーンをいくつか内包します。
目指す写真がどの範囲のトーンを持っているのかを見極めましょう。
コントラストが高ければその写真がカバーするトーンの範囲が広がったり、低くなればその逆になったりすることを意識しましょう。
(図の出典: https://www.color-site.com/pccs_tones)
先述したようにトーンというのは明度と彩度からなりますから、写真がトーンマップのどこに位置するのかさえ分かってしまえば、明るさと彩度のパラメータを調整して近づければいいわけです。
【色の分布と傾向を見極める】
次は配色の話です。
画家がそれぞれの配色理論を持っているように、写真の配色もまた写真家それぞれであり、個性が出るところです。
写真の色はどのような傾向で分布していますか?じっくり読み解きましょう。
ハイライトと、中間と、シャドーに分けて考えてみます。
太陽光下では、光の当たるハイライトは黄色味がかり、シャドーは青味がかるのが自然と言われます。
フィルムであればシャドーにはさらに緑がかり、シアンに近づきます。
影が長く伸びる時間、太陽光の当たるハイライトはより赤味を帯びます。
ティールアンドオレンジでは?ハイライト〜中間はオレンジに寄りますが、シャドーは強くブルーに近づきますね。
中間の色はどうでしょうか、大きく写真の雰囲気を変えてしまうところです。牧歌的な写真は緑が強かったり、セクシーな写真はマゼンタが足されていたりします。透明感は青色のさじ加減だったりします。
複雑に思えた色彩の分布は、分けて考えるといくらか簡単な気がします。
問題がシンプルになるように切り分けましょう。
これを言葉にできれば、トーンカーブを使って概ね再現できますね。
ハイライトにうっすらと黄色が乗っていますか?トーンカーブのBチャンネルを開き、右側を少し下げてあげましょう。
シャドーのシアンがお好き?Rチャンネルの左側を下げれば思い通りです。
こういう色の足し引きは、光の三原色を覚えれば簡単です。
さらに細かく色を見てみます。
肌の赤みが強いですか?空の色が違いますか?
HSLを使ってみましょう。
操作したい色相がわかれば、HSLで狙い撃ちができます。
彩度をあげたり、色相をずらしたりしてみましょう。
もちろん環境の光や被写体の色をよく考えましょう。
蛍光灯は太陽光にはなりません。
日本人とイギリス人ではそもそも肌の色が違いますね。
慎重になってください、無理をするとすぐに破綻します。
写真を言葉にしてみる
目指す写真の表面を分析して、そこにたどり着く道のりの考え方を話してきました。
目指す写真の要素を見極めましょう。
見極めた要素を言葉にしましょう。
言葉をパラメータに翻訳しましょう。
もし誰かのプリセットを手にしたのなら、ただ使うのではもったいないです。
パラメータを言葉に翻訳してみましょう。
トーンカーブがS字を描くのであればコントラストが高くなり、それは力強さに繋がります。
HSLでブルーの色相がグリーンに寄せてあるのは、きっとフィルムへのリスペクトです。
プリセットは、パラメータは、メッセージです。
小説を読むみたいにして受け取りましょう。
そうすれば、色はあなたの語彙になり、語彙が物語を作るでしょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?