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コント台本『リストランテ・シャバの空気』

アニキ(男)
41歳ヤクザ。銀次の先輩で後輩の面倒見が良い。行列の出来てるラーメン屋が一番美味しいと感じるタイプのミーハー舌

銀次(男)
28歳ヤクザ。最近まで刑務所で服役していた。アニキの事が大好きだがどこかドライ。大盛り上がりしている宴会で急に途中で帰るタイプ。

店員(男)
『リストランテ・シャバの空気』のウエイトレス。昔のバイト先で知り合った友達が自分の飲食店を出す際に誘われてこの店で働いている。 あまり自分の意見はない。BOOK・OFFで立ち読みだけで何時間も居られるタイプ。

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アニキ、銀次、レストランでテーブルに座り料理を待っている

アニキ「それにしても銀次。お勤めご苦労だったな。」

銀次「へぇ!で、アニキ。ここが俺がムショから出たらアニキが連れて行きたいつってたレストランですか?」

アニキ「あぁ、そうだ。」

銀次「へぇ!それにしても変な名前の店っすね。『リストランテ・シャバの空気』ですか…。」

アニキ「ここの料理はうめぇぞぉ?」

店員、何も入っていないお皿を持って入ってくる

店員「お待たせ致しました。こちらがシャバの空気のスープでございます。」

店員、出ていく

銀次「は?」

アニキ「来た来た。ん~良い香りだなぁ。」

銀次「え?いや、アニキ。これは?」

アニキ「あぁ、ここはうめぇシャバの空気の料理が食える店なんだ。」

銀次「は?何言ってんすか?」

アニキ「皆ムショから出てきたら言うだろ?『シャバの空気はうめぇなぁ。』って。皆ここの料理食って言ってんだよ。」

銀次「あれ比喩表現じゃなくてホントに食って言ってたんすか?!っていうかこの皿空なんすけど…。」

アニキ「馬鹿野郎!香りで分かんねぇのか!芳醇なシャバの空気が並々に入ってんじゃねぇか!」

銀次「芳醇なシャバの空気?(笑)」

店員、オリーブオイルだけ入ったお皿を持って入ってくる

店員「お待たせ致しました。こちらが北アルプスで取れた新鮮なシャバの空気をふんだんに使用した、シャバの空気のオリーブオイル和えでございます。」

店員、出ていく

銀次「いや、皿にオリーブオイルだけ入って来たんすけど。」

アニキ「かぁ!これこれ。(スプーンでオリーブオイルすくってそれを飲みながら)ん~、新鮮なシャバの空気とオリーブオイルの相性が抜群だねぇ。」

銀次「アニキ!それ普通にオリーブオイル飲んでますって。」

店員、空のお皿を持って入ってくる

店員「お待たせ致しました。こちらが本日のメイン。高級銘柄であるA5ランクのシャバの空気、『松阪シャバ』でございます。」

アニキ「おぉ!!」

銀次「いや、ずっと何言ってんの?松阪シャバの空気?(笑) …それ普通に三重県松阪市の空気じゃん。」

店員「そちらを100%使用し、当店自慢の一流シェフがひとつひとつ丁寧にこねて作ったハンバーグでございます。」

銀次「ハンバーグ?作ってる光景どんな感じなの?一流のシェフがずっと空気こねてんすよね。きもちわる。っていうかハンバーグって普通空気抜くんすよ。(笑) なに空気100%使用してんすか!バカなんすか!」

アニキ、キレて銀次を殴る

アニキ「馬鹿野郎!こんなに美味しいシャバの空気振る舞って貰っておいてなんて失礼な事言ってやがる!」

銀次「おいし…?」

アニキ「もういい!(店員に向かって)うちの若ぇもんが失礼な事言った。申し訳ない。今日はこの辺でおいとまさせて頂くとするよ。おい!行くぞ!」

銀次「(おかしいとは思いながらも反省した感じで)へぇ…。」

アニキ「お会計は?」

店員「あぁ、6万8千円でございます。」

銀次「(ボソッと)普通に良い値段する…。」

アニキ「(多めにお金を渡して)とっといてくれ。じゃあ。」

アニキ、カッコ良く帰ろうとする

店員「あぁ、お客様!(少し沈黙した後)お金ちょっと多いです。」

アニキ、ちょっと気まずそうにする

銀次「いや、空気読めや。」


おしまい。

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