コント『ちょっと待った!後の式場』
教会での結婚式
新郎父、新婦父、少し離れた所に座っている
そこに一人の男が入ってくる
男「ちょっと待った!!めぐみ!俺と結婚しよう!」
新郎父、驚いている
新婦父、ワクワクしてしまっている
新婦(めぐみ)「…うん!」
新婦(めぐみ)、男、走り去っていく
新郎父、新婦父、それを目で追う
教会内が静まり返る
新婦父、新郎父の隣に座る
新婦父「いやぁ、こんな事あるんですねぇ。」
新郎父「あ…、めぐみさんのお父さん…。」
新婦父「さとる君のお父さん…ですよね?」
新郎父「はい…。」
新婦父「(少しニヤニヤしながら)僕ぅ、初めて生で見ましたこういうの!ホントにあるんですねぇこういう事。いや!大事な結婚式になにしてくれてんだ!って話ですよねぇ。」
新郎父「そう…です…ねぇ。」
新婦父「ウチの娘もねぇ、もっと身持ちの固い子だと思ってたんですけどねぇ。急に来た男になびいちゃって!同時に複数の男に求愛させるだなんて…、魅力がありすぎるってのも考え物ですな!まったく!(笑)」
新郎父「いや、なにずっとニヤニヤしてるんですか?この状況でよくそんなニヤニヤ出来ますね!」
新婦父「ニヤニヤなんてそんな!」
新郎父「なんですか?バカにしてるんですか?!」
新婦父「バカになんてそんな!僕らは同じ我が子の結婚式を台無しにされた同士じゃないですか!」
新郎父「それは違いますよ?」
新婦父「え?」
新郎父「いやね、あなたの娘さんは良いですよ?!ここで色々失った物はあるでしょうがまだ!自分を愛してくれる男性がいる!ほら!私の息子を見てみなさい!(息子を指差して)ひとりぼっちじゃないですか!」
新婦父「あらまぁ…。」
新郎父「あらまぁじゃないでしょうよ。」
新婦父「まさかねぇ、僕も自分の娘がこんなにモテるとはねぇ思ってなかったもんで…。
新郎父「…。」
新婦父「こんな『ちょっと待った!!』なんてホントにモテる女の子がされるやつですもんねぇ…。ドラマの女優さんとかがされるやつですもんねぇ…。これじゃまるでウチの娘が女優みたいじゃあないかぁ!はっはっはっ。」
新郎父「その若干『大変な時だけど自分の娘がモテてるみたいでなんか嬉しい感』出すのやめて貰って良いですか?私の息子の気持ち少しくらい考えて下さいよ!見てみなさい!(息子を指差して)ちょっと泣いてるじゃないですか!」
新婦父「あぁ、泣かないでぇ。あ!じゃあどうです?ウチにはめぐみによく似た妹がいますが?」
新郎父「あ、じゃあご結婚を…ってなるかぁ!」
新婦父「実はね、妹の方がしっかりしててねぇ身持ちもめぐみとは比べ物にならないくらい固いですよぉ?もう身持ちカッチカチ。(遠くにいる妻に向かって)なぁ!母さん!固いよなぁ!身持ち!」
新郎父「だとしてもだわ!どうせ、あんな急に来た男に着いてく様な人の妹さんでしょ?そんなに誠実な方には思えませんけどねぇ…。」
新婦父「ひどいっ…。」
新郎父「あんな女性に振り回されてウチの息子も可哀想ですよ。私の息子はホントに不幸ですよ…。」
新婦父「じゃあ言わせて貰いますけどね!不幸度で言ったら絶対に私の娘の方が上ですからね?!」
新郎父「は?」
新婦父「そりゃあね、正直さっきまではなんか娘がモテてるみたいで親として嬉しい感情もありましたよ?」
新郎父「あ、やっぱり。(笑)」
新婦父「でもね、冷静に考えたらあの二人もどうせ上手くいきませんよ!」
新郎父「お父さん…?!(笑)」
新婦父「こんな結婚式場に来て『ちょっと待った!』する男ですよ?どうせろくなもんじゃないですよ。きっと飲食店でご飯出てくるの遅くて文句言うタイプの男ですよ。」
新郎父「急に凄い偏見。(笑)」
新婦父「こんな風に式をめちゃくちゃにしてしかもその相手との恋愛も上手くいかず、ホントのひとりぼっちはめぐみの方ですよ!ですので不幸なのは私の娘の方です!!」
新郎父「なんで不幸で張り合ってきてるんですか。嫌じゃないんですか?自分の娘が不幸なの。(笑) じゃ、じゃあウチの息子が不幸じゃないって言うんですか?!」
新婦父「あんなの不幸じゃないですよ!今彼は誰がどう見ても超可哀想男!同情の余地しかない!」
新郎父「あんま人の息子にそんな事言わないで。うん、あと誰が言ってんだよ。」
新婦父「今彼がここにいる人に『飯奢ってくれ』なんて言ったら誰でも奢っちゃいますよ?同情で。今彼は高い飯食い放題タイム突入中ですよ?!」
新郎父「なにそのパチンコでありそうなタイム。でも最愛の人に逃げられたんですよ!」
新婦父「あんな他の男にホイホイ着いてく様な女と結婚せずに済んで逆にラッキーでしょうがぁ!」
新郎父「自分で言ってて悲しくならない?それ。」
新婦父「はい、自分で言ってて気付きました。アイツやべぇっすね。」
新郎父「あんま自分の娘の事やべぇとか言わない方が良い。(笑)」
新婦父「なんかそのぉ…色々と…すんませんっした!」
新郎父「うん、最初からその言葉なのよ正解は。長かったねぇここまで来るの。まぁでも分かって頂けたなら良かったです。」
新婦父「ホント、すんませんっ。」
めぐみ、帰って来る
新婦父「え?!めぐみ!どうしたんだ!え?『やっぱりさとるさんが良い…?』そうかぁ…。あの、お父さん…やっぱりウチの娘とご結婚を…。」
新郎父「いやするかぁ!」
おしまい。