コント『駄菓子屋1万円キャンペーン』

会社員「えーと…あとこれも下さい。これでどうですか？」

店員「(首を横に振りながら)いえ、まだダメです。」

会社員「じゃあこれと…これも！どうです？」

店員「(首を横に振りながら)まだまだです。」

会社員「いや流石に難しいですよ！駄菓子屋でそんなに買うの！」

店員「でもこの超合金セイジンガーフィギュア欲しいんでしょう？」

会社員「はい！もう喉から大ヘドロ将軍が出るくらい欲しいですよ！」

店員「なんですか？それ。」

会社員「知らないんですか？！セイジンガーに出てくる敵の幹部ですよ！ほら、僕のホーム画面の写真がそいつです。(店員にスマホ見せる)」

店員「うわ、きしょ。(笑) なんかもうこの世の気持ち悪いモノ全員集合！みたいな見た目してますね。よくこんなのホーム画面に設定出来ますね。こいつ口から出たらヤバイっすよ。(笑)」

会社員「そのくらい欲しいんですよ！ただね、この超合金セイジンガーを手に入れる条件が難し過ぎるんですよ。」

店員「え？1万円以上お買い上げのお客様にもれなくプレゼントって条件ですか？」

会社員「それですよ！！駄菓子屋で1万円も使えるかぁぁ！！イオンとかなのよそういうイベントやるの。1個数十円の駄菓子屋が1万円以上の価格設定はおかしいって！ほら！僕もうこんなに買ったんですよ？！(手に持った駄菓子でいっぱいのカゴを見せながら)これでいくらですか？！」

店員「82円です。」

会社員「いや、無理だってぇぇぇ…。安過ぎるんだもん商品がぁ…。」

店員「へへへっ、ありがっす！」

会社員「この場合誉めてないです。あ！そうだ！ちょっともう1万円払うんで、そのセイジンガーのフィギュア売ってくださいよ。ね？それで良いでしょ？」

店員「ちょっと。ここ駄菓子屋ですよ？」

会社員「？…ええ。」

店員「子供が集まる場所ですよ？そんな所でお金で解決させようとするとか大人としてないわぁ～。(軽蔑した様な顔)」

会社員「腹立つ顔。分かりましたよ、駄菓子買いますよ！じゃあ…もう！ここからここまで全部ください！」

店員「おお！凄い！！初めて生で聞いた！」

会社員「あとこれとこれとこれ！この3つを店の在庫全部買います！」

店員「業者みたい！業者が来たぞ～！」

会社員「あと、このレジの横に置いてある1回10円のガムのガチャガチャ。これに空にしますね！」

店員「どっかの金持ちYouTuberみたいな事やりだした！」

会社員「これでどうです？！結構いったでしょ？！」

店員「はい、今530円です！」

会社員「なんでよぉ～。(笑) だいぶ買ったよ？！内訳どうなってんの？」

店員「えーと、最初のこの棚の商品が全て2円。」

会社員「2円？！(笑)」

店員「で、在庫も全てお買い上げ頂いたこちらの3点が20銭ですね。」

会社員「銭？！？！銭ってあの円より下の？」

店員「はい。」

会社員「いつの時代から値上がりしてないのよ。というかこれだけ買う子供どうやって払うのよ銭なんて持ってないだろ。」

店員「はい、なのでこれだけをお買い上げ頂く際は千と千尋の神隠しに出てくるキャラの物真似をしたら買えるというシステムにしております。」

会社員「うわ、ダルいシステムぅ…。」

店員「…？(会社員に物真似します？の顔)」

会社員「やらねぇわ。じゃあこのガムのガチャガチャは？！」

店員「そちらは売れなさ過ぎてめちゃめちゃに余っちゃってますんで、1回引いて下さったお客さんには2回目以降永遠無料のキャンペーン中です！」

会社員「永遠？！」

店員「永遠。未来永劫でございます。」

会社員「こんな時にそんなキャンペーンやんなよぉ…。(泣) こんなの絶対1万円いかないじゃん…。」

店員「あ、ちなみに1万円は何回かのお買い物の累計でも大丈夫ですよ？」 

会社員「え？つまり明日とかそれ以降の買い物の金額も加算されていくって事ですか？！」

店員「ええ。」

会社員「なんだぁ、早く言って下さいよぉ～。じゃあ今日はこの辺にして、明日から1万円到達するまで毎日来ます！僕1日でも早くセイジンガー欲しいんで！じゃあまた明日！」

店員「はい！お待ちしております！」

暗転

ナレーション「そして、70年後。」

明転

会社員「(よぼよぼのお爺ちゃん姿で)今日はこれ下さい…。それで、累計いくらですか？」

店員「(よぼよぼのお爺ちゃん姿で)え？あーはい…累計ね…。えーと、今日ので合わせて…お、とうとう5000円だよ…。」

会社員「あと70年…。(膝から崩れ落ちる)」



おしまい。