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コント台本『死刑執行前夜』

唐沢(男)
刑務所の刑務官。休日はその激務の体を休めるように高級レストラン巡りをしている。食べログに鼻に付くレビューを書きまくっているタイプ

芹沢(男)
死刑囚。生とか死に興味がない。鼻毛が出てる女子に皆の前で指摘しちゃうタイプ

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唐沢「おい、とうとう明日がお前の死刑執行の日だな。この世に思い残す事はあるか?」

芹沢「ふん、そんなものないよ。僕はこの世界が大嫌いだったんだ。だからあの事件を起こした。それで死刑?本望だよ。それで今日は最後の晩餐って訳だよね?」

唐沢「そうだ。死刑を執行する前日の夕食はその囚人が食べたい物を最後に食わせてやるのが決まりだからな。今日はお前が食いたい物全部用意したぞ。」

唐沢、出ていきお皿を持って入ってくる

芹沢「楽しみだね。」

唐沢「最初はこれ。(皿を出しながら)松茸だ。」

芹沢「へぇ~、これが松茸かぁ。僕の家は貧乏だったからこんな高級料理は見た事もなかったよ。さっそく、いただきま~す。」

芹沢、松茸を食べて「え?」の表情

唐沢「どうだ、うまいだろう!」

芹沢「え?これが…松茸…?」

唐沢「そうだ、芳醇な香りが口いっぱいに広がって最高だろう。」

芹沢「…エリンギで良いじゃん。」

唐沢「は?」

芹沢「いや、え?あ、こんな感じなの?松茸って。(笑) なんかすごい匂いするけど味普通じゃん。」

唐沢「なんて事言うんだ!!」

芹沢「なんかすっごい匂いするけど別に大金払ってこの匂いも嗅ぎたくないし、ぶっちゃけ椎茸の方がうまくない?(笑)」

唐沢「それはお前が貧乏舌だからだ!!じゃあ次の料理はどうだ!!」

唐沢、出ていきお皿を持って入ってくる

唐沢「次はこれだ。キャビアだ。」

芹沢「ほえぇ~、これがキャビア。これも初めてみたよ。いただきまぁす。」

唐沢「キャビアはなんてたって世界三大珍味の一つだからな!」

芹沢、食べて笑ってしまう

唐沢「どうだ!」

芹沢「え?マジで?もうこれにいたっては普通に不味くない?」

唐沢「なんて事言うんだよ!!」

芹沢「え?嘘でしょ?僕が今一番びっくりしてるよ?!(笑)ホントに皆これ美味しいって言って食べてるの?」

唐沢「当たり前だろ!」

芹沢「これあれでしょ?高いからうまいって言ってるだけでしょ?皆も内心『え?』ってなってるでしょ??」

唐沢「それ以上言うな!言うな!!ほら、これも飲め!最高級の日本酒だ!飲みたいと言っていただろう。」

芹沢、疑いながら日本酒を飲む

唐沢「うまいだろ…?」

芹沢「ま、まぁ、これは美味しいんだけどさ。これとワンカップ大関出されてさぁ同時に飲め!どっちが高い酒だか分かるか!って言われて分かる?」

唐沢「分かるに…決まってるだろ…」

芹沢「絶対わかんないよ!そこら辺の人に味の違いなんか分かんないんだから。」

唐沢「分かんなくても良いんだよ!なんか美味しい気がするなぁ。で!」

芹沢「ほら、やっぱりそうじゃん。(笑) なんで皆あんなに分かった顔して食ったり飲んだりしてんの?」

唐沢「飯食う時くらい、ぶらせてくれたって良いだろう!!」

芹沢「皆、味じゃなくて情報を食べてるんだね。」

唐沢「さぁ、ほら最後の晩餐終わりだ。もう未練はないな!」

芹沢「…最後に、卵かけご飯だけ食べさせてくんない?」

唐沢「結局あれが一番うまいからな。」


おしまい

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