携帯代大解剖①「オプション1ヶ月だけ加入」の闇に迫る
携帯電話のショップで「〇〇というオプションに1ヶ月だけ加入して欲しい」と言われたことはありませんか?このセリフには日本の携帯電話販売の複雑なシステムが隠されています。
(1)携帯電話代理店の収入の仕組み
まず知っておいてもらいたい点が「街中の携帯電話ショップのほとんどが代理店による運営」であることです。携帯電話キャリア直営のショップはauとソフトバンクに数店舗、ドコモには1店舗もありません。また家電量販店やショッピングセンターにある店舗もそこが運営しているとは限りません。
ちなみに、どこの代理店が運営しているかはソフトバンク(とサブブランドのワイモバイル)だけが公開しています。
ここで、代理店が利益を上げる手段として、①販売によるインセンティブ、②キャリアからの支援金、③継続インセンティブ、④他社製品の販売、の4つが主なものとして挙げられます。
①の販売によるインセンティブはその名の通り、携帯電話の販売台数によって支給されるお金です。これは端末代金が高いほど利益が高いというわけではなく、機種ごと、契約種別ごと(乗り換えが高く、機種変更は安い)に決められます。あとは購入時に入ってもらうプランやオプションの種類によっても変わってきます。オプション1ヶ月加入の謎の正体はこれなんです。あとしきりにタブレットを勧めてくるのも、新規契約の扱いでインセンティブを貰えるからですね。
②のキャリアからの支援金は、店舗運営にかかる経費などの一部を負担してくれるものです。また、一定期間内に〇〇を達成すれば〇〇円といったボーナス的な支援金、またショッピングセンターなどで行う外販イベントを支援するものもあります。
③の継続インセンティブは、自店で新規契約や機種変更をしてくれたお客さんが使った月額料金の一部を利益として分配してもらえるものです。多くのお客さんを抱えている店舗だとここが大きかったりします。なので地方のショップとかだとTVCMで集客したりするんですよね。
④の他社製品の販売に関しては、カバーやフィルムなどはもちろんクレジットカードやウォーターサーバーといった商品の販売取次によって収入を得るものです。付属品(フィルム以外にもバックアップを取る機械など)は24回の分割という形で利用料金に含んだ支払いにできますので、月々あたりの金額はそこまでかからないが合計で見ると高額だった、ということが起こりかねません。キャリアによっては自社のグループ会社以外の商品を店頭で販売することを禁止しているところもあります。
(2)携帯電話ショップの闘い
そもそも携帯電話を購入する際は併売店と呼ばれる、街中にある複数の携帯電話キャリアを取り扱う店舗で購入するのが主流でした。しかし、修理などの保守・サポート拠点として携帯電話キャリアが自社ショップをフランチャイズの形で全国展開するようになります。そこで目をつけたのが商社と携帯端末メーカー、そして地場の企業です。
これらの販売代理店は伊藤忠グループのコネクシオ、住友商事グループのティーガイア(実は傘下にQUOカードがあったりします)、丸紅グループのMXモバイリングの商社系、ノジマ傘下のITX、光通信とその仲間達(ベルパーク、テレコムサービスなど)、もといすゞディーラーのクロップスなどが大手として存在しています。これらの企業は「一次代理店」として各携帯電話キャリアと直接フランチャイズ契約を結んでいます。
しかし、携帯電話ショップの参入には多くの在庫を抱える必要があるなど、資金面で参入障壁が高いです。そこで地場の企業が「二次代理店」として在庫管理などを一次代理店に委託することで携帯電話ショップに参入しました。
しかし、キャッシュバック規制による乗り換えの減少、各ショップをランク付けするシステム(後述)などにより二次代理店を中心にショップが再編され、特にドミナントの出店が多くなりました。その結果、機種変更に行くとインセンティブ目当てに使いもしないプラン、オプション、付属品などを契約させられることが以前よりも多くなっていると思います。
(3)これが犯人?ランク付けについて
携帯電話の料金が高くなる理由、販売によるインセンティブもそうなんですが、店舗ランクというものも大きな原因です。店舗ランクは各店舗ごとの販売台数などを競うもので、このランクが低いと強制的に閉店させられてしまうというものです。
詳しくはこのあたりの記事をご覧ください。この店舗ランクの評価項目に「オプション加入率」や「付属品同時購入額」などが入っているんです。そりゃ店員は店を閉店させないためにもオプションや付属品をつけてもらうようお願いしますよね。(悪い店員だと「必須です」などと騙してしまうわけです...)そして、オプションを外し忘れたお客さんが「携帯代高い」と言う、と...。
(4)ちょっと変な日本の携帯電話事情
少し話は変わって携帯電話の本体代の話です。
現在、携帯代金は24回、36回、48回などの分割払いで購入するのが主流でしたが、昔は一括で購入するのが普通でした。そして一定期間の利用を条件に購入時に割り引いてもらえることが多かったです。いわゆる0円ケータイというものです。
しかしこの販売方法が問題となり、購入と同時の値引きというものが原則できなくなってしましました。そこでソフトバンクが編み出したのが今につながる24回分割のシステムです。
本体代金を24分割した額を毎月本体代金として支払い、その本体代金と同等額を利用料金から値引きする、というシステムです。(ちなみにこの販売方式で現金がなくなり倒産したのがウィルコムです)
しかし、このシステムも総務省による携帯本体値引き規制により利用料金値引きがなくなりました。
これまたソフトバンクが対応策として考えたのが「半額サポート」です。携帯電話本体代を48分割し、2年目以降に機種変更&下取り、代金を支払い続けるの2種類から選べるというものです。確かに月々の負担は低いですが、ややこしい。
本当に携帯電話料金を安くしたいのであれば、一括払いで買いましょう。
iPhoneはApple Storeで買うと一括で少し安くで買えますし、その方が1度きりの本体大部分と毎月のランニングコスト部分が明確に分けられます。
しかも一度一括で買っておけば乗り換えも簡単ですし、Appleで買えば携帯ショップでやってくれないデータ移行の手伝いもしてくれます。
海外では基本的にこの買い方が多めですが、これはまたの機会に。
(5)まとめ
4つに分けて複雑な携帯買い方システムを解説してみました。
少しは業界の問題点がわかっていただけたと思います。
・携帯電話ショップはインセンティブ収入に依存する代理店モデル
・代理店の闘いとドミナント化
・ランクづけがオプション加入につながる
・分割購入よりも一括購入
ポチッとな