ミスチル・桜井和寿さんの『声』について

今回は、Mr.Children・桜井和寿さんの「声」についてあれこれ話そうと思います。



■桜井和寿さんの声を聞くとなぜか落ち着く

身近な人以外で一番聞いている声って桜井和寿さんの声なのではないかと思ったりします。
歌声でも話している声でも、桜井さんの声を聞くと心が落ち着くところがあったり、なんなら頭が痛い時に聞くと痛みが和らぎます。
和らぐような気がします。
接触回数が多いほど親しみや親近感を感じやすく、高感度が高まるという「単純接触効果」というのがあるらしいですね。
そうだとすると、桜井さんの声はずっと聞いてきているものだから、声への親しみや安心感を感じてしまっているのですかね。
それともモーツァルトの音楽のように桜井さんの声自体にリスナーを癒す何か秘密があるんですかね。
桜井さんの歌声と話している声には何か独特の心地よいリズムがあると感じているのですが私だけかな。

例えば、この冒頭の言葉とか、キング牧師の「I have a dream」といった名スピーチと言われるものに通じる惹きつける魅力を感じるし、ボーカルも桜井節とも言える何か癖になるリズムというか揺らぎを持っているように思うんです。
桜井節は中毒性がある。今日は我慢できてもまたすぐ欲しくなる声。
歌声やMCだけでなく、テレビやラジオに出演してトークしている声もお気に入りです。

桜井さんが話しているちょうど良い動画がオフィシャルであるので貼っておきます。
桜井さんが十分に大人になって、話し方が落ち着いてきて、柔らかさと温かさと優しさを兼ね備えた、でも無邪気さは残っているそう言う声と話し方が好きですね。
JENさん、ナカケーさん、田原さんの声も結構好感持ってます。
田原さんはインタビューでよく喋るとこもコーラスの声も好きです。

桜井さんの声の親しみや安心感が“どういった理由かは分からない 実際 そうだったんだからそれでいい”とも思いますが、日本音響研究所さんに桜井さんの声の謎を解き明かして欲しいとも思います。
ま、何らかの効果を感じるのは、もちろん桜井さんの声だけでなくメンバーの演奏も含めたミスチルの音楽全体に起因するとは思いますけどね。


■桜井さんの声の変化

一口に「桜井さんの声」と言っても、楽曲や年代によって歌声はかわってますよね。
ラブソングを歌う時の甘い声、ロックを歌う時の鋭くしゃがれた声、ポップソングを歌う時の無邪気な声、リスナーに寄り添う暖かく優しい声。
年代で言うと、初期は甘めの声で、それから尖って、丸くなって、優しくなって、なんやかんやで、最近は渋く大人の色気がある歌声になっているように感じています。
一概に言えないとはいえ、私は桜井さんの年代の声の変化を超ざっくりとそう捉えていますが、桜井さん自身は経年の声の変化についてこう話していますね。

>自分の声質というか、声自体の変化を感じますか?経年というか…。
桜井 「声の変化なのか…あの~、なんだろうな、もっと若くて女の子に興味があるような年代だったら、そう言う声を出してたんだと思うんですよね。だけどもうもはや恋愛にもそんな興味がない、もっといえば、男としてどういう風に進んでいくか、どう言う風に枯れていくか、歳をとっていくかみたいなのを人生の中で考えているのに、若い頃のように可愛い声は出ないんだろうなっていう。だから、そこに対して、悔しさもあるけど、これはしょうがないと思っていて。ただ自分が作った過去の作品とそれを良いと言ってくれた皆さんに失礼がないように昔の歌を今も歌っていたいとは思うんんですね」(2021年)

恋愛に興味があるかどうかで、声って変わるものなのか。
桜井さんの感覚では、年齢を重ねることによってフィジカル的に声が変わっていってると言うより、自身の背景や心境の変化によってメンタル的に声が変わっているというのでしょうかね。
背景であったり、心境であったりと言うのが音楽制作に影響を与えているのは想像できますが、それらが声や歌い方にも影響を与えていると言うのでしょうか。
確かに私の思う桜井さんの声の経年変化は、桜井さんの背景の変化と一致するようにも思います。

20代、恋愛現役世代には、初期作品のようにラブソングを作り、甘い声で歌う。
20代中盤、苦悩していた時代には、「深海」のようにロックを作り、尖った声で歌う。
30代前半、大人になると、この醜くも素晴らしい世界にも目を向け、やわらかい声で歌う。
30代後半、家族を思えば、「HOME」のように身近な日常に目を向け、優しい声で歌う。
50代、十分に大人になれば、「SOUNDTRACKS」のように終わりを意識し日常を慈しむ歌を作り、渋く色気のある声で歌う。

あくまで個人的で感覚的なものですけど、私が「桜井さんの声って、年代で変わっている」と感じたのは、歳を重ねてただ喉が変化したというのではなく、背景と心境の変化からくるものだったのかもしれません。

桜井さんはかつて「声の太さや掠れ具合で怒りや悲しみの感情を表現する」と言っていました。
スキマスイッチの大橋卓弥さんはかつて、さくらいさんは頭に描いた演出を喉で表現できる人と評価していました。
まさに桜井さんのボーカルは背景や心境をそのままこえに乗せて表現できる人なのだと思います。
だからそれぞれの年代で桜井さんが抱えているもの、考えていることはそれぞれの年代の楽曲に歌声としても焼き付けられているのだろうと思います。
そして、今後、ミスチルの曲超や歌詞が変わったなと思うのとともに、桜井さんの声や歌い方が変わったなと思えたら、それは桜井さんの背景や心境が変わったと捉えることができるのかもしれませんね

兎にも角にも声が変わっていると言うことは、桜井さん自身も悔しいと思いながらも認めざるを得ないところがあるようですね。
しかしながら、上記桜井さんの発言のラストにあるように、桜井さんはプロとして、例え楽曲を制作した当時の背景や心境をもう失くして当時の声を自然と出せなくなったとしても、演出としてまるで当時の背景や心境を持っているかのような声で表現していきたいと言う意識はあるようですね。
だから、ライブでは、恋愛現役でなくなっても恋愛ソングを甘く歌えるし、十分に大人になってもポップソングで無邪気な声を出せるのでしょう。
実際には声が違うんだろうけど、「声が変わったな」と感じさせないほど、昔の曲を色あせさせることなく、なんならパワー割賦させて歌えるのが桜井さんの天才ボーカルなのです。
それに声が変わったからこそ味わい深くなる過去の楽曲もあると思うんです。
昔、“10年先も 20年先も”と若々しい声(喉の若さではなく、気持ちの若さ)で歌っていて、その20年先に立って、背景も心境も声も変わって、またその先を見据えて、“10年先も 20年先も”と歌う意味みたいな・・・。
さらに、アルバム「SOUNDTRACKS」や「miss you」の楽曲は今の声だからこそ歌える楽曲だと思うので、声の変化も悪くはないと思いますね。
本人も、声の変化について「昔の方がよかったなと思うことばっかりでは全然ない」と言ってますし。


■好きな桜井さんの声

私はアルバム「深海」の声にとても惹かれます。
「深海」「シーラカンス」「マシンガンをぶっ放せ」「虜」「So Let's Get Truth」「ありふれたLove Story~男女問題はいつも面倒だ~」…
これも20代半ばという年齢の喉が作り出す声というよりは、この時期の桜井さんの心情が織りなす声と言えるのでしょうね。
昔、井上陽水さんが桜井さんの声についてこのように評していたようなんです。

「魅力的な声。一生使える声。聞いている人の胸をキュンとさせる。カタギの声じゃないというか、社会に適応できる人の声じゃない。幼い頃から受ける愛情が欠落している人が出す声」

独特の評価ですが、桜井さんは「そう評価してもらえて嬉しい」と話しています。
井上陽水さんの発言は1994年のもので、innocent worldなどで爆発的に広まった頃のあの声のことを言っているのだと思いますが、むしろ1996年の「深海」の声の方が愛にうえた…愛が欲しいのに愛を信じられないカタギじゃない声になっているように感じます。
実際の桜井さんの幼い頃は恵まれた環境で育ったようですが、ロックをやる上で反骨精神がないといけないと思っていたから、その恵まれた環境をコンプレックスに感じていたそうなんですよね。
「深海」では、そんな恵まれた幼少期お感じさせないくらい、苦しみが声に滲み出ていてロックしてますね。
「深海」の頃の桜井さんはメンタルが弱っていたと聴くので、それが歌詞や詩だけでなく声や歌い方にも表現されているのでしょう。
しかしながら、その声、魂の叫びにはなんだか惹きつけられてしまいます。キュンとさせられます。
声が裏返るところとかキュンとするんですよ・・・「ありふれたLove Story」の“気付かぬふりでやり過ごしている”の語尾で声が「ヒュッ」ってなるのですが、あそこがたまらなく好きです。
「虜」のような歌い方も癖が強くてよいのですよね。
「深海」の“連れてってくれないか 連れ戻してくれないか 僕を 僕も”もゾクゾクします。

とはいえ、「エソラ」を本当に楽しそうに歌う声も、「彩り」を優しく暖かく包んでくれるように歌う声も、「タガタメ」で声が潰れるほどの熱量で訴えかけてくる声も、「終わりなき旅」を情熱的に歌う声も、「HERO」を愛しさと切なさと心強さで歌う声も好きだな。
「ケモノミチ」のMVのライブ音源のように渋く大人の色気たっぷりの声も好き。
すみません、結局全部好きでした。

今回の結論、桜井さんの声が好き。どんな種類の音楽でも魂がこもっている桜井さんのボーカルが好き。別に巧くなくていい声が枯れてたっていい桜井さんの声を待っています。



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