桜井「僕、天才かと思った」 ~Mr.Children『ロードムービー』

今回は、Mr.Childrenの楽曲『ロードムービー』について書こうと思います。

『ロードムービー』は、9th Album 「Q」に収録されている、隠れた名曲とも言わずと知れた名曲とも言われる各局ですね。
この曲が好きなリスナーはとても多いと感じます。
メロディーや言葉が心地よくて、私も大好きな楽曲です。
この楽曲 の生みの親である桜井和寿さんもお気に入りのようです。


■桜井さんの一番好きな曲

『ロードムービー』は桜井さんが一番好きな曲だと言います。
Mr.Children Dome Tour 2019 Against All GRAVITYでのMCで桜井さんは『ロードムービー』の曲紹介をこのようにしていました。

桜井 「よくいろんな人にね、今まで作ってきた作品の中でどの曲が一番好きですかって聞かれることがたくさんあるんですけども。でも、いつもやはり全てどの作品も自分の子供のようなものなので、順番なんかつけれないですって答えるんです。なんですけど、僕の中ではあぁこの曲がやっぱり一番好きだなっていうのがあるんです。それを聴いていただきたいなと」

桜井さんにとって個人的に思い入れのある楽曲だそうですね。
年が明けた2000年元日の明け方、桜井さんは歌詞が頭の中に溢れて目覚め、それをノートにバーっと書き留めたと言います。
その時、涙が出るくらいの感じだったそうです。
なぜなら、「まだやっていいよ」と新しい世紀21世紀(*)に歓迎されたような気がしたからだと言います。
(* 21世紀は2001年からですが、桜井さんが2000年を新しい世紀と言うのでそのまま書いておきます。)
25周年のThanksgiving 25ツアーのMCで、桜井さんは『1999年に世界が滅びるというノストラダムスの大予言があったけど、やりたいことだけ思う存分やって、世界が滅亡してもそれはそれでラッキーだと思いながら続けてた』というような話をしてましたね。
『ロードムービー』が降りてきたことは、それとも繋がるのかなと思ったりします。
90年代に公開の内容に精一杯やり切ったというのがあるからこそ、2000年を迎えてもそれでもまだ、涙を流すほどの名曲ができたことは特別なものだったのでしょう。


■桜井さんのお気に入りの歌詞

桜井さんは、ラジオで「ミスチルファン以外にも聴いてほしい楽曲」を聞かれて、『ロードムービー』を紹介したことがありました(2017年)。

桜井 「『ロードムービー』という曲があって、自分が一番好きな歌詞ですね。よく書けたなーっていうフレーズがあるんですよ。でも、リスナーの人がこの歌詞いいですってあんまり聞いたことないんですね。だから、自分から言っていかないと、この歌詞の良さがわかんないんじゃないかなと思って。
オートバイに乗ってる男女の物語なんですが、問題が何かしらあるんですよ。それは具体的には歌詞で説明していないんですが、問題がいくつか。それは聞いてる人に想像してもらいたいんだけど」

桜井さんには、『ロードムービー』に一押し歌詞がある様ですが、その歌詞の良さをちゃんと理解しているリスナーは少ないと感じているようです。
そして、桜井さんは、楽曲の歌詞の良さを広めるべく、歌詞について解説してくれました。

カラスが飛び交う空に モノクロの輝く虹
誰も笑ってやしない動物園

作詞:KAZUTOSHI SAKURAI

桜井 「それは・・・悪い暗示の夢を見るっていうことは心の中に何か闇を抱えてるてことだから。『僕らは闇を抱えてる』とは書かないけど、うん」

悪い夢を描写することで、2人に問題があるというのを表現しているのだそう。
桜井さんは、「問題」について「聴いてる人に想像して欲しい」と言っていますけど、浮気や不倫の歌という説もありますね。
私は、そういうはっきりとした大問題ではなく、もっとぼんやりした問題・・・2人のなんとなく感じている不満、漠然とした不安みたいなものを想像してますね。
そして、桜井さんが一番気に入っている歌詞は以下のフレーズだそう。

街灯が2秒後の未来を照らし オートバイが走る
等間隔で置かれた 闇を超える快楽に
また少しスピードを上げて
もう一つ次の未来へ
街灯が2秒後の未来を照らし オートバイが走る
等間隔で置かれた 闇を超える快楽に

また少しスピードを上げて

もう一つ次の未来へ

作詞:KAZUTOSHI SAKURAI

桜井 「問題は何も解決しない。ただ2人は今日もオートバイに乗って夜の道を走って行くんだけども。等間隔で置かれた街頭っていうのはただの次の街灯ではなくて、2秒後の未来なんですよ。照らされてるものは2秒後の未来が照らされてる。ということは、闇があったら次の2秒後に未来がやってくる。それが快感なの。なぜなら、この2人には問題があるから。だから、自分の問題は解決しないんだけど、該当があることで・・・なんていうの・・・代理だよね」

問題を抱えている2人は闇の中にいるようなもので、その2人の歩みを夜の闇のなかを彼らを乗せて走るオートバイに重ねているんですね。
闇の中を走るオートバイの2秒後の未来は、街灯に明るく照らされていて、さらに走らせれば、その明るい場所へ辿り着けます。
それは、「2人が今は闇の中にいても、未来は明るく、このまま歩みを進めれば、その明るく照らされた未来へと辿り着ける」という暗示になっていて、これは問題を抱えている2人にとっては希望なんですね。
実際には問題がまだ解決していなくても、自分たちの代わりにオートバイが容易に闇を超えて明るい未来へ到達できることは爽快なんですね。
そんな感じでしょうかね。

この歌詞が書けた時、桜井さんはこう思ったそうです・・・。

桜井 「ぼんと僕もう天才かと思った、これを書いた時には。でもあんまり評価されてない(笑)」

ヒュー。
前述の歌詞ができた時のエピソードで、「『まだやっていいよ』と新しい世紀に歓迎されているような気がして涙が出るぐらいの感じだった」と書きましたけど、その時、「自分は天才か」とも思ってたのですね。

桜井さんは、「この歌詞良いですというのを聞いたことがない」「評価されてない」と言いますけど、桜井さんのこの話を聞く前から、“街灯が2秒後の未来を~”の歌詞は良いなと思ってましたよ。
もちろん、桜井さんが込めたニュアンスを完全に理解してたとは言わないですけど、感覚的に表現の素晴らしさには気づいていた様に思います。『ロードムービー』は人きで好きなリスナーが多く良い曲だと思われていますから、桜井さんがいうほど歌詞の良さがリスナーに伝わっていなくはないと思います。
桜井さんみたいに言語化できなくとも、歌詞のセンスの良さに気付いていたリスナーは絶対に多かったと思います。
ねぇそうでしょう?


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